【ソフトバンクBBの戦略】
販社のクラウドモデルを確立
──セミナーや構築支援で販売促進
ソフトバンクBBは、子会社のBBソフトサービスが提供する法人向けクラウド/モバイル関連の情報サイト「スマビズ!」を通じて販社がモバイルアプリを拡販できる環境を整える。年内をめどに、「スマビズ!」の取次代理店制度を構築する。来年3月にはSaaS/ASPサービス「TEKI-PAKI」との統合も視野に入れて、ソフトバンクBBグループ全体で販社のクラウドモデル構築を支援していく。

販社はBBソフトサービス経由でSaaSを販売すれば手数料を手にできる仕組み

北澤英之
部長 販社は、「スマビズ!」経由でモバイルアプリを販売する取次手数料を手にすることができるようになる。北澤英之・C&C本部MD第1統括部モバイルビジネスマーケティング部長は、「モバイルアプリの販売はパートナーにとって、手がかかる割には収益が低いというジレンマが生じている。単価が安いうえに、月ごとに請求書を発行するなどオペレーションコストがかかるからだ」と、一般的なアプリ販売モデルの現状を説明する。
だが、情勢は変わってきている。「ユーザー企業にクラウドという言葉が浸透し、サービスを導入する意識が高まっている」。販社は、ハードやソフトだけではなく、サービスも販売できる体制を構築することが求められているので、「手間のかかるオペレーションを省くことで、パートナーが販売だけに専念できる仕組みが必要と判断した」という。
実際、サービスを導入するユーザー企業は増えている。PC用のSaaSサービス「TEKI-PAKI」を例に挙げれば、契約者数は前年と比べて4~5倍に膨れ上がっている。加えて、タブレット端末の導入を意識するユーザー企業が多くなってきた。だからこそ、販社がクラウドも販売の武器として、拡販を視野に入れていかなければならない状況になっているというわけだ。
また、今後はユーザー企業が複数のデバイスで一つのサービスを利用する環境になってくることから、「『TEKI-PAKI』という1ブランドで提供していく意味がなくなる」とみている。そのため、アプリやSaaSを統合的に提供することを模索しているのだ。このような取り組みで、「当面は、契約者数4~5倍の増加を維持する」としている。
【ダイワボウ情報システムの戦略】
端末・サービスの収益モデルを構築
──SaaS販社として500社の獲得を目指す

青井正則
部長 ダイワボウ情報システムは、販社がSaaS・PaaSの取り次ぎができるサービスとして「iDATEN(韋駄天)SaaS plats」を提供している。現在、このサービスの販社として100社を獲得。これを近い将来に500社まで引き上げることを計画している。
「iDATEN(韋駄天)SaaS plats」は、販社がSaaS/クラウドを取り次ぎビジネスというかたちで提供しているサービスで、取次手数料をストック型のビジネスとして確保できることを売りに、ビープラッツとの協業で2010年1月に提供を開始した。青井正則・販売推進本部サービス営業部長は、「ユーザー企業がSaaSの利用を意識し始めており、最近になって販売パートナーからの問い合わせが多くなっている」と、パートナーの販社を順調に増やすことができるとみている。500社の販社を確保する期限を今年度(13年3月期)中と定めているが、「数より質を求めていく」と、あくまで土台を築く意味だとしている。ユーザー企業に対して、的確にSaaSを販売できる販社を集めていく。
また、ダイワボウ情報システムは販社とのパートナーシップ深耕に向けて、セールスフォース・ドットコムの代理店制度の強化も進めている。販社がSaaSプラットフォームである「Salesforce」のアプリケーションを売ることができるほか、中小SIerが「Salesforce」をダイワボウ情報システムから仕入れて自社で開発したアプリケーションを載せて提供することができる。「将来的には、『Salesforce』と『iDATEN(韋駄天)SaaS plats』を組み合わせたビジネスモデルを構築したい」との考え。具体的には、メーカーや販社が開発したアプリケーションを、『iDATEN(韋駄天)SaaS plats』を通じてさまざまな販社が売るという仕組みだ。青井部長は、「この仕組みによって、端末とサービスによる新しい収益モデルを販売パートナーに提供していく」とアピールしている。
記者の眼
ディストリビュータがハードやソフトなど製品を卸すだけでなく、サービス化した販社支援やクラウドサービスの提供に力を入れているのは、販社のビジネス拡大につながると判断しているからだ。仮想化環境のメリットが注目を集めているなか、ユーザー企業が仮想化システムを導入することは一般的になりつつある。したがって、ベンダーは仮想化環境を構築するノウハウをもっていなければならない。
また、ユーザー企業がクラウドサービスへの関心を高めていることもあって、取引きのあるベンダーにクラウドサービスの利点や注意点を問い合わせる光景は、今やごく普通になってきている。にもかかわらず、SIerやリセラーが利益につながらないからといってクラウドサービスを提供しないというのは勝手な論理だろう。世の動きをみて、ディストリビュータは、販社がビジネスとして手がけられないシステム案件をサポートするようになっただけでなく、クラウドサービスの収益モデルを構築して、販社を成長させようとしている。
ディストリビュータは、ハードやソフトなどモノを提供するだけの存在ではなくなってきており、販社を通じて市場環境やユーザー企業のニーズに応えていかなければならないということを、各社の動きが物語っている。