資料中心の提案ではよさが伝わらない
現場にiPadをもってデモを
売り手は、「UCを何に使うか」というユーザー企業の疑問に応え、提案の際にデモを交えて、各業種に合った活用シーンを紹介することに力を入れている。日本アバイアの有力販社であるエス・アンド・アイと、シスコシステムズのUC製品に強い三井情報の営業担当に取材して、有効な提案の方法を探った。
【エス・アンド・アイ】
UC製品に自社アプリを追加
地方市場の開拓に力を入れる

営業本部第三営業部
飯島哲也部長 エス・アンド・アイは、ユーザーインターフェース(UI)が使いやすいと評価されている日本アバイアのUCツール「Avaya Flare」を2011年から扱っている。2012年2月のiPad対応をきっかけとして、「Avaya Flare」の案件が活発に動くようになっているという。
営業本部第三営業部の飯島哲也部長は、「直感的に操作することができるUIは発売当初から受けがよかった。しかし、『Avaya Flare』を取り扱い始めた1年目は、製品の性能がまだ十分ではなかったので、UIを評価していただいても、なかなか受注につながらなかった」と、最初は苦戦していた事実を語る。現在は、日本アバイアが性能の強化を果たしており、iPad対応も追い風となって、注文を受けるケースが増えている。
エス・アンド・アイが「Avaya Flare」を提案する業種は、公共施設でのコミュニケーション改善を図る官公庁から海外オフィスとの遠隔会議に用いる製造業者まで、幅広い。営業スタッフは、会社支給のiPadを持って客先を訪問し、デモを行ってUCを体感してもらう。
ポイントは、ユーザー企業のビジネス内容に適合した活用シーンを紹介することだ。「例えば、空港を運営するお客様だと、外国人観光客にモバイル端末を渡して、直接ネイティブの人と話すことができる施設案内が実現することを訴求する」と飯島部長。UCを活用して、社内の業務改善にとどまらず、ビジネス拡大につながる新サービス開発もできるということを訴えているわけだ。
●全国でセミナーを開催 これまでシステム構築を主な事業としてきたエス・アンド・アイは、飯島部長言うところの「勉強しながら」UC製品の提案スキルを磨いてきた。同社の営業スタッフが客先にUCの活用シーンを紹介する逆パターンとして、UC製品をテスト利用している企業からユニークな使い方を伝授してもらい、提案に反映させることもあるという。
エス・アンド・アイは、UC事業の収益を上げるために、「Avaya Flare」に自社開発の業務アプリケーションを組み合わせた提案に力を入れている。UCの導入にあたって、モバイル端末を紛失した際のセキュリティを懸念する企業が多いことから、遠隔操作で端末内のデータを消去するリモートワイプや、データをクラウドで保存するオンラインストレージ(開発中)を「Avaya Flare」に追加して、パッケージとして展開している。
UCは、場所を問わずにコミュニケーションを行うことができることから、交通の便がよくない地方でも需要が高い。エス・アンド・アイは、地方市場の開拓を目指して、2012年、全国10都市でUC体験の場を設けるセミナーを開いた。「セミナーの効果が現れてきているので、今年も開催したい」として、地方のマーケットでエス・アンド・アイの存在感を高める活動に取り組んでいくという。
【メーカーの動きにスポットを当てる】
日本アバイア クラウドでSMB市場開拓を加速
ロバート・
スチーブンソン社長 UCでは後発のアバイア。2012年6月に、ビデオ会議技術を強みとするイスラエル・Radvisionを買収し、同社のノウハウを活用することによって、ビデオ会議製品を強化している。日本アバイアのロバート・スチーブンソン社長は、「日本では、中国やASEANに進出する製造業の企業が増えている。高画質と高速なデータ通信で海外のオフィスや工場とビデオ会議ができることを訴求し、製造業のお客様を増やしたい」と意気込む。
そのために、販社がUC製品を提案しやすいよう、ソリューションメニューや価格表の整理に取り組んでいる。
スチーブンソン社長は、「UC市場の開拓にあたって無視できないのは、中堅・中小企業(SMB)のマーケットだ。当社のクラウドパートナーであるオリックス・レンテックとの関係を強化する」と方針を語る。iPadをレンタル方式でSMBに提供するオリックス・レンテックを通じてUC製品をクラウド型で提案し、SMB顧客を増やすことを狙う。
UCのニーズが高まっているのは、医療業界だ。政府は、患者個人が情報端末を使って自らの医療・健康情報を管理・活用する「どこでもMY病院」を推進しており、病院・個人間のやり取りを支えるシステムとして、UCが注目を浴びている。都内でも、「どこでもMY病院」に取り組んでいる自治体やNPO法人が増え、日本アバイアは、彼らに「Avaya Flare」を活用してもらうことを目指して話を進めているところだ。
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