【三井情報】
部分的導入でハードルを下げる
「Cisco UCS」事業との連携も

市場開発部
松岡建マーケティング
マネージャー 「UCを資料で説明してもわかりにくい」。三井情報でプラットフォームソリューション事業本部市場開発部のマーケティングマネージャーを務める松岡建氏も、エス・アンド・アイと同様に「見せて体感させる」ことを提案の軸としている。
三井情報は、日本アバイアや日本マイクロソフトなど数社のUCツールを取り扱っているが、とくにウェブ会議システム「Cisco WebEx」をはじめとするシスコシステムズ製品の販売を強みとする。この1月、三井情報の営業スタッフたちは新年の挨拶で客先を訪問した際、手持ちのiPadを使ってUC製品の提案を行った。
「iPadは画質がきれいなので、インパクトが大きい。お客様にiPadでUCのデモを見せたら、すぐに関心をもっていただける」(松岡マーケティングマネージャー)と、デモを交える営業スタイルに手応えを感じている。
三井情報は、営業スタッフが提案の現場ですぐに客先に合った活用シーンを紹介することができるよう、業種別の活用事例集を事前に用意し、営業スタッフに提供している。例えば、損害保険会社に提案する場合は、iPadのカメラを使って交通事故現場から負傷の具合といった情報をリアルタイムに会社へ伝えて、その場でフィードバックを受けるシーンを紹介するという。
●自社でデモ設備を用意 同社がUC製品の提案の切り口とするのは、部分的な導入だ。ビデオ会議のみなど、まずは一部の機能だけを導入し、必要に応じて他の機能を追加することを提案し、導入のハードルを下げる。松岡マーケティングマネージャーは、「UCを部分的に導入しているお客様から、追加で○○を入れたいとの注文をいただいている。UCを使ってみて利便性を実感し、もっと使いたいというお客様が多い」とユーザーの反響を語る。
三井情報は2013年の方針として、仮想環境の構築に最適なサーバーなどで構成する「Cisco UCS」の販売拡大に力を注いでいる。今後、UC製品を「Cisco UCS」と連携し、Cisco UCS上でUCのシステムをクラウド型で構築することを提案していく。「UCの提案をツールとして、『Cisco UCS』事業に刺激を与える」(松岡マーケティングマネージャー)という戦略だ。
ただし、課題もある。シスコシステムズが用意しているUC製品のデモセンターは、ユーザー企業からの問い合わせが殺到し、予約が取りにくい状況にある。そこで三井情報は、客先に迅速にUCを体感してもらうよう、東京・東中野オフィスに自らショールームを設け、自社単独でデモ活動の強化に取り組んでいる。
記者の眼
衣類や小物のセレクトショップを運営するユナイテッドアローズは、「ワークスタイルの変革」に取り組んでいる企業の一社だ。同社は、従業員が個人で所有する情報端末の業務利用を許可し、スマートフォンやタブレット端末を販売・営業現場で活用。シスコシステムズの製品で安全にデータ通信ができるモバイル環境をつくり、マネジャーが店舗間を移動する際や、バイヤーが海外に出ている際に、モバイル端末を用いて情報交換をしている。
リーマン・ショックによる景気低迷をきっかけとして、ユーザー企業は業務の効率化、社員の生産性の向上を喫緊の課題としてきた。しかし、従来のIT環境では、ワークスタイルの変革は実現しにくい。そんななか、UCを提案するチャンスが高まっている。販社は、UCをクラウド型でSMBに展開したり、他の製品・サービスと組み合わせて複合的に提供したりと、メーカーの製品に付加価値をつけて提案するのがポイントとなる。
ユナイテッドアローズは、2012年3月期の売上高を前年度比で12.7%拡大することができた。業績が順調に伸びていることを、業務の効率化がビジネスの活性化につながっていることの裏づけと捉えることができる。導入事例を増やし、UC活用の効果を実数によって示すことが、成功への近道となりそうだ。