●電算システムの売り方 岐阜県岐阜市に本社を置く電算システムは、2008年から「Google Apps」を取り扱っている。「大中規模企業向け」販売パートナーのなかでも、特に優秀な企業として「プレミアム販売パートナー」に認定されている。その一方で、複数の製品を扱うよりは、軸を固めて周辺のソリューションを提供できるようにしたほうが得策と捉えて、「Office 365」は扱っていない。
電算システムは、「Google Apps」の導入支援サービスのほか、他社と差異化を図るための付加価値サービスを提供している。その一つが、アップデート情報の通知サービスだ。「Google Apps」のアップデート情報が更新されると、その日のうちに正常に動作するかどうかの検証を行い、ユーザーに通知する。システムエンジニアリング事業部の渡辺裕介事業部長は、「『Google Apps』は毎週のようにアップデートされる。ユーザー企業が、いちいち検証するのは面倒で現実的なことではない。この手間を省いて安全な運用を支援する」とアピールする。
また、電算システムは、グーグルが提供するシステム検索ツール「Google 検索アプライアンス(GSA)」を販売しており、GSAと「Google Apps」を組み合わせて、社内とクラウドの両方のシステムを一元的に検索できるように提案している。「GSAを扱うためには、『Google Apps』の販売プログラムとは別のパートナー契約をグーグルと結ぶ必要がある。このことが、他社には真似できない強みとなっている」(渡辺事業部長)。
さらに、電算システムは、グーグルのPaaS(Platform as a Service)である「Google App Engine」を扱っている。「Google App Engine」上で「Google Apps」にはないアプリケーションを個別に開発し、業務に必要なすべてのアプリケーションをグーグルのクラウド上で提供できる体制を敷いている。こうした付加価値サービスによって、「営業現場で『Office 365』と競合したときにも、約80%の高い割合で案件を獲得できている」(渡辺事業部長)と豪語する。実際に、これまで約500社に「Google Apps」を提供しており、「Google Enterprise Partner Awards」を5年連続で受賞している。
<電算システムが提供する付加価値>
▼「Google Search Appliance」との連携
▼アップデート情報通知サービス
▼「Google App Engine」との連携
●グルージェントの売り方 サイオステクノロジーの子会社のグルージェントは、電算システムと同じ「Google Apps」のプレミアム販売パートナーだ。2012年は、約2500社に「Google Apps」を導入している。栗原傑享CEOは、「国内のグループウェア製品にあって、『Google Apps』にはまだない機能を提案することで、優位性を打ち出している」という。例えば、Gmailでの宛先選択をサポートする共通アドレス帳機能「Gluegent Apps 共有アドレス帳」や、グループの予定を的確に把握できる「Gluegent Apps グループスケジューラ」、ワークフロー機能を提供する「Gluegent Flow」によって、製品を補っている。また、「ユーザー企業の情報システム部門からのクラウドサービスの利用を制限したいというニーズが多い」(栗原CEO)ことから、会社が認めたデバイスだけ「Google Apps」へのアクセスを認めるアクセスコントロールなどのセキュリティ機能を提供する「Gluegent Gate」を提供している。
栗原CEOは、「こうした機能を付加することで、『Google Apps』は、『Office 365』よりもすぐれた製品になる。しかし、こうした付加価値サービスを提供するパートナー企業が多いので、『Google Apps』のパートナー間で競合が発生している。そのなかで、当社の強みは補助的なサービスをすべて提供できること。他社は部分的にしか提供できない」と有利なポジションにあることを語る。
また、グルージェントでは、最近は「Google Apps」と他のクラウドサービスを連携したいというニーズが増えているという。そこで、「Google Apps」とSalesforce.comを連携して、カレンダーを同期するサービス「Gluegent Connect」を提供している。
さらに、グルージェントは、13年3月、同じく「Google Apps」のプレミアム販売パートナーであるソフトバンクテレコムと提携して、両社のもつ付加価値サービスを相互に提供する体制を敷いている。要するに、「『Google Apps』の競合で争うことよりも、競合が協力し合うほうが、ユーザーへの提案力が増す」(栗原CEO)とみているのだ。
<グルージェントが提供する付加価値>
▼Salesforce.comとの連携
▼「Gluegent Apps」( 共有アドレス帳など)
▼「Gluegent Gate」(セキュリティパッケージ)
『Office 365』の売り方
──独自ソフトを組み合わせて販売
既存システムとの融合を実現する「Office 365」。「Google Apps」がサービスの性能を向上する付加価値サービスが多いのに対して、「Office 365」のパートナー企業は、独自ソフトを組み合わせて収益を向上しようとする姿勢が目立つ。
●内田洋行の売り方 内田洋行は、「Open Lisence」が加わるまで、「Office 365」を一般企業に対して手数料販売しかできなかった。そこで、導入支援サービスだけでなく、自社ソリューションと「Office 365」を組み合わせて提供することで収益を上げてきた。
その一つが、会議室の運用システムである「SmartRooms」だ。Exchange Onlineと会議室に設置したスマートデバイスが連動して、予約状況や利用状況をリアルタイムに表示する。予約してあるはずの会議室に一定時間入室がなければ、予約を自動でキャンセルできる。早めに会議が終了したときには、会議室の端末から終了して、空室に切り替えるなど、会議室の運用効率を向上する。情報事業本部情報エンジニアリング事業部の村田義篤部長は、「『SmartRooms』では、操作ログを取得して、予約に対してどれだけ使っているのか、使用する人数は適正かといったことを簡単に分析して、適切な会議室の利用を実現する」とアピールする。「SmartRooms」は単品でも提供しているが、ユーザーのオフィスの移転時などに「Office 365」と組み合わせて売るケースが約6割を占めている。
このほか、SharePoint Online上でマイクロブログのやり取りをすることができるSNSソリューション「SmartAmigo」を提供している。村田部長は、今後は、『Open Lisence』というプラス要素を活用して、販売数を伸ばしていく」と意欲をみせる。
<内田洋行が提供する付加価値>
▼「SmartAmigo」(SNS機能)との連携
▼「SmartRooms」(会議室運用システム)との連携
▼導入支援サービス
●富士ソフトの売り方 「Google Apps」ではプレミアム販売パートナー、「Office 365」では大規模な販売が可能なラージ アカウント リセラー(LAR)となっている富士ソフト。ユーザー層を限定してサービスを売り分けるのではなく、ユーザーに選択してもらう方式をとっている。「Google Apps」と「Office 365」の違いを徹底的に比較する少人数セミナーを開催して、「実機を人数分用意して、実際のサービスに触れてもらいながら、自社に合ったサービスを選択してもらう」(ソリューション事業本部MS部の高野祐一課長)。サービスを導入した後には、秋葉原にある研修センターを利用して、ユーザーを教育している。
比較セミナーのほかに、「Google Apps」では、Salesforce.comなどのほかパブリッククラウドとの連携や、シングルサインオン、ID管理機能などを提供している。
「Office 365」では、設計から導入、保守サービスまでを含めてワンストップで提供するほか、「Office 365」上のドキュメントや動画、画像をWindows 8タブレットやiPhone/iPadから簡単に閲覧できるサービス「moreNOTE」と組み合わせて販売している。高野課長は、「『Google Apps』だけが競合というわけではなく、『Open Lisence』の追加や、通信とセットで販売できるマイクロソフトパートナーが増えていることで、『Office 365』のなかでの競合が発生することを危惧している。当社は、約6000人の技術者を抱えるソフト開発会社なので、自社ソリューションをうまく組み合わせていくことが他社との差異化につながる」と語る。
<富士ソフトが提供する付加価値>
▼比較セミナー
▼「moreNOTE」(ドキュメントサービス)との連携(Office 365)
▼Salesforce.comとの連携(Google Apps)
記者の眼
グーグルは、「Google Apps」の「大中規模企業向け」の募集を停止する一方で、「中小企業向け」パートナーを引き続き拡充してSMB市場の獲得に力を注いでいる。一方、日本マイクロソフトも「Open Lisence」を追加し、6月末までに4000社の仕入れ販売パートナーを獲得することを目標としている。また、NTTコミュニケーションズ、大塚商会、リコー、ソフトバンクBBなど、通信回線をセットにして「Office 365」を販売することができる特別パートナーも存在する。SMBの市場は広いといえども、今後は競合が激しくなる様相が容易に想像できる。
今回取材した販売パートナーも、製品間での競合というよりは、むしろパートナー企業間での競合を意識している。もはや、単にサービスの優位性を伝えて、再販しているだけでは生き残ることができない。競合に勝つための、他社にはない自社の強みを生かした付加価値サービスによる差異化を進めることが、ビジネスを成功に導いてくれるはずだ。