【課題1】知らない・わからない・必要ない
――ベンダーは早急に啓発を始めよう
●セミナー実施やホームページ立ち上げは必須 
大塚商会
下條洋永 課長 現時点でもっとも憂慮しなければならないのが、「Server 2003」のサポート切れを「知らない」、知っていたとしても移行のやり方が「わからない」、また「必要ない」と感じているユーザーがいることだ。
「知らない」に関しては、啓発が必要なことはいうまでもない。セミナーなど、ユーザーにサポート終了を広く認知させることが不可欠だ。例えば、リコージャパンでは、「Server 2003」移行に関するセミナーを今後150回ほど開催していくことを計画している。リコージャパンICT事業本部IT事業センターの八條隆浩センター長は、「『XP』の移行支援でも、当社ではサポートが切れるおよそ1年半前の2012年秋からセミナーを開催した。すでに約500回開催し、述べ1万人のユーザーを集客している。『XP』乗り換え需要でOS移行サービスの売り上げが、昨年度比で150~160%と伸長しているIT企業が多いようだが、当社では先取りして啓発した甲斐があって、前年比200%超えのペースで伸びている。『Server 2003』の移行に関しても、同様の効果を狙う」という。

リコージャパン
八條隆浩 センター長 「わからない」については、ユーザーが気軽に相談できる窓口が必要だ。大塚商会は、ITベンダーのなかでもいち早く「Server 2003」移行に関する専用ホームページ「よろず相談所」を立ち上げた。同社は、調査から計画、設計、構築、導入、検証、運用と、トータルで移行支援サービスを提供できることを強みとしており、「ユーザーの抱える移行に関する悩みを一括で請け負う窓口として13年11月に設けた。移行支援サービス自体は従来から展開しているが、今回はユーザーにとってわかりやすい『Server 2003』移行を前面に押し出すことで、入口を広げた」(大塚商会マーケティング本部MSソリューショングループの下條洋永課長)。
リコージャパンでも、ユーザーの「わからない」を解決するために、「4月をめどに、『Server 2003』の移行に関する料金体系をわかりやすくパッケージ化したサービスを提供する」(八條センター長)としている。実は、OSの移行サービスは、ユーザー企業によって対応する幅が大きく異なるので、個別見積もりとしている企業が多い。しかし、個別見積もりでは、ユーザーも基本価格を把握しにくいうえに、余分な時間がとられてしまうので、それを避けようというわけだ。
●付加価値の訴求で“攻め”のIT投資へ 
CSK Winテクノロジ
古宮浩行 社長 「2003」からの移行を「必要ない」と感じているユーザーは、「OSを移行するだけなら、コストばかりがかかって、メリットはほとんどない」と考えていることが多い。CSK Winテクノロジの古宮浩行社長は、「最新OSに移行するメリットを強く訴求することが有効だ。実は、サーバーOSを最新版にアップグレードするだけで、ユーザーは多くのメリットを享受することができる」とアピールする。例えば、「Server 2012/R2」は、仮想化機能の「Hyper-V」を標準搭載しているので、ユーザーは物理サーバーを集約してハードウェアにかかるコストを低減できる。このほかにも、BCP/DR対策としてクラウド上へファイルサーバーのデータをバックアップできるほか、今まで高価なストレージやアプライアンスにしかなかった重複排除の機能も搭載されているのだ。さらに、こうした機能に独自ソリューションを組み合わせて提供すれば、ITベンダー側も他社とサービス面で差異化を図りやすい。例えば、CSK Winテクノロジでは、ユーザー権限管理のActive Directory(AD)をうまく利用できていない企業が多いことに目をつけて、ADの変更作業を効率化し、運用負荷を低減するツール「PerfectWatch for Active Directory」を拡販しようとしている。大塚商会でも、「ユーザーの権限管理が十分にできていない中堅・中小企業(SMB)向けにADを利用したサービスを提供する予定」(下條課長)としている。
また、「Server 2003」上で稼働している既存システムの移行先として、「Windows Azure」や「Amazon Web Services」などのクラウド基盤を活用し、月額課金制でシステムを利用するという方法や、OSをLinuxなどのOSSに乗り換えて、システムをオープン化するなど、2010年に「Server 2000」のサポートが切れた時と比べて選択肢が増えている。単にOSを移行する“守り”のIT投資ではなく、付加価値を享受できる“攻め”のIT投資としての提案が、ユーザーの意識改革に効果をもたらすだろう。
【課題2】資金がない
――調査・予算化を訴求しよう
●工数削減でコスト低減 ただし、移行する意欲はあっても、予算が足りなくて実現できない企業が出てくることが予想される。ITベンダーには、ユーザー企業のコスト面での負担をなるべく低減できる提案が求められる。例えば、CSK Winテクノロジでは、仮想化を前提としたOS移行を支援するサービスとして、「Hyper-V ベーシック インストール サービス」を提供している。余分な工程をそぎ落とし、スピーディに「Hyper-V」を構築できるので、低価格で提供できるという。古宮社長は、「必要な部分だけ当社のSEが担当して、そのほかの簡単な移行作業をユーザー側で実施すれば、さらにコストを低減できる」と説明する。ユーザー側で非常事態となったときには、サポートサービスを利用すればいいので、情報システム担当者がいる企業には有効だ。
●今年1~3月が勝負 また、ユーザーに移行に関する予算取りをするよう、早急に啓発していく必要がある。実は、「XP」乗り換えでは、「資金はあるが、年度の予算が決まっていて対応できない」という企業が頻出していたのだ。日本マイクロソフトとパートナー企業が、移行支援をユーザーに強く訴え始めたのは、サポートが切れるちょうど1年前の13年4月9日。これによって、サポート切れの必要性を認知したユーザーは増えたが、多くの企業の決算期は3月末で、すでに予算取りが終わっていた。この反省を生かして、まだ14年度(15年3月期)の予算を確定していないこの1~3月の間に、ITベンダーは予算化を強く訴求していくべきだろう。
ただし、どうしても予算を確保できないという企業も出てくるはずだ。そうした企業に対しては、OSの移行費用を月額料金制で提供するキャンペーンを実施するなど、少ない予算でも実施できるような措置が求められるだろう。

2013年4月9日に日本マイクロソフトが行った記者会見では、樋口泰行社長とパートナー企業の幹部が「XP」移行の必要性を強く訴えた
【課題3】アプリケーションが対応していない
――延命策による段階的移行を推進しよう
このほか、「Server 2003」の移行を進めるうえで問題となりそうなのが、アプリケーションサーバーの対応だ。ファイルサーバーの移行と比べて時間がかかるので、「サポート終了までにアプリケーションの改修が間に合わない」というような企業が頻出するに違いない。とくに「Server 2003」上で稼働している基幹系システムをスクラッチ開発している企業では、改修作業の負担が大きい。また、パッケージソフトを動かしていて、最新版OSの「Server 2012 R2」への移行を前向きに検討しているユーザーであっても、パッケージソフト自体がまだ「Server R2」に対応していないがゆえに、移行を躊躇しているケースがある。
●仮想化とセキュリティ対策ソフトを複合提案 残念ながら、サポート終了までに移行が終えることができなければ、ぜい弱性リスクからは逃れられないというのが実際のところだ。最悪の事態を避けるためには、延命策を講じる必要がある。例えば、セキュリティソフトベンダーが提供しているサポート終了後の対策ソフトを活用する手がある。マイクロソフトがサポートを終了した後であっても、「Server 2003」のぜい弱性攻撃をある程度防ぐことができる。
また、サーバー仮想化も有効策だ。最新のハードウェアを導入し、仮想化基盤ソフトの「Hyper-V」や「VMware」などを活用してサーバー仮想化を行い、そこに従来物理サーバー上にあった「Server 2003」とアプリケーションを移せば、老朽化したハードウェアの故障リスクを低減して、処理性能を向上させたかたちで延命することができる。延命するユーザーに対しては、この二つの延命策を同時提案して、最低限の安全性を確保してもらうことが望ましい。ただし、その場合でも、しょせんは延命策にすぎないということを忘れてはならない。できるところから移行を進めていく必要がある。
ITベンダーの潜在的課題と解決策 避けられないSE不足
「XP」乗り換え需要が巻き起こるなか、駆け込み案件で膨大な台数のPCを移行しなければならないITベンダーは対応に追われ、SE不足の状況に陥っている。
クライアントと単純に比較すれば、確かに移行しなければならないサーバーの台数は約45万台と少ないが、クライアントよりも移行に時間がかかることを考慮すれば、「Server 2003」についてもSE不足の状況となることは想像に難くない。
さらに、SE不足を引き起こす別の要因もある。例えば、15年10月1日には、「社会保障・税番号制度」の通知が開始される。これに先駆けて、全国の自治体では、システムの改修が必要となる。大手ITベンダーでは、すでに自治体担当の人員不足が問題視され始めている状況にある。
それだけではない。15年10月1日には消費税率が10%になることが見込まれる。これによって、民間企業でも、基幹系システムの改修案件が急増することが予測できる。すでに5%→8%への消費税率引き上げを見越したシステム改修の駆け込み需要が盛り上がっているが、10%への消費税改正では、軽減税率が導入される可能性があるので、システムの改修がさらに大規模なものになることが予想される。
2015年には、こうしたSE不足を引き起こす諸要因が重なるので、ITベンダーはユーザーに対して早期の対策を啓発するとともに、自社でも体制を整備しておかなければならない。ただ、大規模な人員の増強をしてしまうと、需要が落ち着いた時には余剰人員となってしまうので、移行支援に関しては、協力会社を募るなどの工夫が求められる。また、移行支援ではできるだけ工数をかけないで済むように、技術力向上やサービスメニューの見直しを図っておくことが望ましいだろう。