●UC追加でシスコ色を出す 
ユニアデックス
山口政博
マネージャー CTCとともに、草分けとして2010年からUCSの販売を行っているユニアデックスは、企画や技術支援に携わる「UCS推進センター」を立ち上げている。およそ30人のメンバーで、UCSの事業展開に専念するチームだ。このチームを尖兵として、UCSの提案活動に力を入れている。
UCSを担当する戦略マーケティング部マーケティング二室の山口政博マーケティンググループマネージャーは、「オンラインゲーム事業者など、最先端の技術に敏感なお客様に重点的に提案する」と、UCSのターゲット戦略を説明する。提案の切り口とするのは、他社の仮想化ツールやストレージなども取り入れて仮想デスクトップ環境を構築するなど、コスト削減やワークスタイルの改善を実現するソリューションだ。
ユニアデックスは、デルやHPなど、ほかのサーバーメーカーと比べて、シスコはUCSのサポートが弱いことを逆手に取って、自社による保守サービスなどを武器にして、UCS案件を受注することが多いという。さらに、「他社が構築を行った案件で、当社が保守の部分を担当させていただくというケースもある」(山口マネージャー)そうだ。
3月1日付で、シスコのユニファイドコミュニケーション(UC)の構築を強みとするネットマークスがユニアデックスに統合される。ユニアデックスは、シスコの全ポートフォリオを提案することが可能になるのだ。山口マネージャーは、「これから、UCS基盤にUCのツールを載せて、“シスコカラー”を前面に出した提案ができるようになる」とみて、シスコ事業に大きな期待をかけている。
販社の営業現場の本音――UCSの販売は楽しくない!?
「UCSの販売は、正直、めんどくさい」。ディストリビュータとしてSIerにUCSを提案するネットワンパートナーズ第2営業部の若手セールス、遠藤康一郎氏は本音をこう漏らす。
UCSのサーバーは、従来のネットワーク機器に対して、メモリやHDDなど追加で提案するオプション品が多いので、見積作成には倍以上の時間がかかるそうだ。技術部隊だけではなく、営業サイドにも、UCS案件はこれまでの仕事の枠を越えて負担の増加をもたらしているのだ。
遠藤氏の愚痴に、上司が口を挟む。第2営業部の若月孝昭部長は、「うちが成長するためには、UCSの取り扱いは不可欠」と、力説する。ネットワーク機器とサーバーのワンストップ提案によって、案件の売上規模が拡大し、ビジネスの幅がぐんと広がるからだ。ネットワンパートナーズでは、見積書を作成するにあたって、営業を支援する専門部隊を設けるなどして、サーバーの提案を後押しする環境づくりに取り組んでいる。
事業の拡大を目指して、会社の方針は「UCSに注力」としている。遠藤氏は、UCSビジネスの重要性を頭に叩き込んで、営業活動に励んでいく覚悟を決めている。ネットワンパートナーズとしてディストリビュータ側できめ細かくサポートし、「SIerに手間をかけさせない」ことで、リピート案件の獲得に結びつける考えだ。

(写真左から)第2営業部 遠藤康一郎氏、第2営業部 若月孝昭部長
●「営業」ではなく「体感」してもらう 
ネットワンシステムズ
岩本智浩 参事 「『シスコのUCSは』ということは一切アピールしない。訴求するのは、あくまで当社として考えているワークスタイルのあり方だ」──。旧東京中央郵便局の敷地に建設され、2013年にオープンしたJPタワーの24階で、ネットワンシステムズはお客様を迎える。同社は昨年に本社を移転したことをきっかけとして、シスコ製品を用いた仮想デスクトップ環境やビデオ会議などを自社導入し、新しいワークスタイルを体感できるスペースを設けた。
これまで200社以上の企業の経営者などに見学に来てもらい、シスコ製品の機能などについての説明を一切することなく、実際に何ができるかを体感してもらった。ビジネス推進グループの岩本智浩参事は、「お客様にデモを見てもらうのは、こちらから提案に行くよりも案件化しやすく、商談をクロージングできる確率が高い」と喜ぶ。先方を訪問し、技術や製品の説明をするなど足で稼ぐのではなく、お客様を自社に招き、「ビジネス」を切り口として、UCSを基盤とする案件を獲得するわけだ。
岩本参事は「お客様の幹部の方に、トップダウンで決めていただくのが一番手っ取り早い」とみている。ネットワンシステムズのトップ営業を活躍させ、デモを見せる活動を加速することによって、導入の決裁権を握るキーパーソンを味方につけてUCSの販売を拡大しようとしている。
●UCSを活用してゲノム解析 
三井情報
伊藤章
マネージャー UCSの販社は、UCSをユーザー企業に提供するだけでなく、自社が展開するサービスの基盤に採用することもある。
三井情報は、UCSのサーバーやデータ解析ツール「SAP HANA」を活用し、ガン細胞のゲノム解析を行うサービスの基盤をつくっている。さらに、M2M(マシン・トゥ・マシン)サービス事業者に対してクラウド型のM2Mプラットフォームを提供するサービス「絆・ONE」にも、UCSを採用。このように「UCSをツールにして、ビッグデータ関連のサービス事業を進めていく」(ビジネスアライアンス部企画室の伊藤章マーケティングマネージャー)という戦略だ。
シスコ(日本)の平井康文社長は、UCS事業の本格的な拡大を目指して、販社に向けた支援を手厚くしようとしている。シスコと力を合わせて、ユーザー企業にいかにUCSの利点を理解してもらうか。販社の動きに注目したい。
日本列島に普及するUCS――全国で進む導入
セガ(東京・品川)が展開するオンラインゲーム「ファンタシースターオンライン2(PSO2)」の裏で、UCSのサーバーが動いている。ユニアデックスが、2012年にUCSを活用した「PSO2」のプラットフォームをセガに納入した。
UCSは、独自ツールによって設定が簡単で、短時間でセットアップできることを特徴としている。「サーバーが成田空港に着いたら、その日のうちにセットアップを終わらせたい」。セガのシステム担当は、ユニアデックスに厳しく要求した。都内までの搬送に必要な時間も考えれば、サーバー設定には半日しかない。ユニアデックスのエンジニアたちは、懸命に作業に集中し、設定を数時間で完了。セガの要求に見事に応えた。「UCSだからできた」と担当者は振り返る。
UCSの有望市場となるのは、オンラインゲーム事業者のほかに、デスクトップの仮想化が進んでいる教育機関や地方自治体だ。ネットワンシステムズは、この1月、震災対応を急ぐ愛知県に、プライベートクラウド基盤と遠隔バックアップのシステムを入れたと発表した。愛知県は、UCSサーバー、ヴイエムウェアの仮想化ソフト、EMCのストレージやバックアップ装置などを使って構築した基盤を生かし、大型の汎用機で稼働している12個の業務システムと個別のサーバーで動いている業務システムを同基盤に移行する。データは県外のDCにバックアップすることで、東南海地震に備えた事業継続の対策を図る。
「日本のお客様は先行事例が大好きだから、たとえ競合が手がけた導入案件でも、提案の追い風になる」。販社各社は、口を揃えて語る。従来は、UCSを提案しても、商談相手に「認知度が低いので、導入するのが怖い」と言われ、受注につながらないケースが多かったと聞く。2014年は、UCSの本格展開の元年。認知度をさらに高めて、実ビジネスに結びつける動きが活発になるだろう。