データセンター(DC)での大規模なクラウド環境の構築や、ICT(情報通信技術)の活用による「ワークスタイルの変革」、ありとあらゆるモノがインターネットでつながる「Internet of Everything(IoE)」。シスコシステムズは、スイッチやルータなど、これまで強みとしてきたネットワーク機器の需要が縮小するなかで、新しい注力商材を取り揃えることによって、「新シスコ」をつくろうとしている。シスコの変貌をリードしているのは、米国本社のボードメンバーでもある日本法人の平井康文社長だ。日本の販社をどう巻き込むのか。平井社長に、販売戦略についてたずねた。
構築負担を減らし、UCS販売を活性化
──シスコシステムズの米国本社は、2014年以降に4000人ほどのリストラを行うことが報道されるなど、ビジネスモデル再編の大きな壁に直面している様子がうかがえます。日本でのビジネス状況はいかがでしょうか。 平井 市場を取り巻く環境の激変に対応するために、13年は、「パートナー」「コーポレート(社会貢献)」「シスコファミリー(社員)」の三つに関して、やるべきことをやり切りました。その成果で、円安による為替の影響を除けば、売上高・利益ともに堅調です。
──これまでなかなかビジネスが拡大しなかったクラウド基盤「Cisco Unified Computing System(UCS)」も、ここにきて案件が活発に動いているとうかがっています。 平井 4年ほど前に開始したUCS事業は、ようやく日本でも軌道に乗ったと捉えています。サーバーをはじめとするUCS製品の販売は、2013年、前年と比べて2.5倍の伸びをみせました。米国のブレードサーバー市場では、シスコは現在2位のシェアを獲得しています。日本でのシェアはまだ6位ですが、今年から、UCSの販売体制を強化することによって、国内市場でもシェアを上位に引き上げたいと思っています。
──UCSの製品群は、販社に対して、従来のスイッチやルータよりも高度な構築スキルが求められます。販売パートナーのUCSの提案力を高めるために、どのような支援策を講じますか。 平井 一つは、販社向けの技術トレーニングを徹底的に行うことです。もう一つは、UCSの重要な売り手であるシステムインテグレータ(SIer)に対して、構築の負担を減らすということ。具体的には、UCSのディストリビューションを手がけるネットワンパートナーズが、13年にUCSの「フルカスタム受注生産」を始めました。国内初となる取り組みです。同社は、メモリやHDDを組み込んだりして、ネットワンパートナーズ側でカスタマイズを行うことによって、システムの稼働開始までの時間を短縮し、SIerが収益の高いアプリケーション開発に集中できるようにしています。
──ネットワンパートナーズの齋藤(普吾)社長にUCSビジネスの話を聞いたら、13年度(14年3月期)は「2ケタの億円の受注を見込んでいる」と言っておられました。 平井 ネットワンパートナーズはUCS事業で伸びていますよ。
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