2007年の「Force.com」リリース以降、PaaS(Platform as a Service)市場のグローバルリーダーとして君臨しているセールスフォース・ドットコム。マウス操作でシステムを構築できるスピード感は、変化の大きいビジネス環境で闘う企業を中心に受け入れられてきた。一方、国産勢として存在感を示しているのが、サイボウズが2011年にリリースした「kintone」だ。Force.com以上ともいわれる手軽さが受けて、PaaS市場を切り拓く二大サービスと位置づけられるようになった。両社のPaaSにはどのような違いがあるのか。進化を続けるPaaSの「現在地」を検証する。(取材・文/畔上文昭)
●2種類のPaaS PaaSは、セールスフォース・ドットコムが2007年に提唱した概念である。同社が提供してきたSaaS(Software as a Service)のプラットフォームを「Force.com」としてユーザー向けにリリースしたのがその始まりだ。Force.comにはユーザー管理機能や画面設計機能、各種APIなどのシステムに必要な基本的な機能が提供されているので、ノンプログラミングで独自システムを構築することができる。プログラミング環境も提供されており、柔軟性も兼ね備えている。
現状、さまざまなPaaSが提供されているが、多くが開発環境の提供だけで「システム開発者がプログラミングに専念できる」ことをアピールしている。そのため、Force.comとはレイヤの違うIaaS寄りのPaaSとなっている。その方針の違いから「Programming PaaS」と「Non-Programming PaaS」に分けたいところだが、いずれもプログラミング環境が提供されているので、「レイヤ1」と「レイヤ2」とするのが正しいのかもしれない。
●二大サービス時代 サイボウズが「kintone」をリリースしたのは2011年11月。当初はデータベースとしての基本機能が中心だったが、APIやアプリ間連携機能、プロセス管理機能などを次々に投入し、PaaS市場での存在感を高めてきた。
kintoneは、前述したPaaSの切り分けでいうと「レイヤ2のPaaS」に位置づけられる。つまり、Force.comの独壇場だった市場に競合となるサービスが登場し、PaaSの選択肢が増えた格好だ。
セールスフォース・ドットコムは、「kintoneとはレイヤが違う」(広報担当)としているが、はたしてそうなのか。両社とも多様なサービスを提供していることから、単純に比較することはできないものの、ユーザー企業からは非常に似通ったPaaSにみえる。セールスフォース・ドットコムとサイボウズの両社が意図しないとしても、「Force.com vs. kintone」はユーザーの視点では確立している。
開発者がアイデアの実現に専念できるオープンな“開発環境”がIBMのPaaS

米IBM
ソフトウェアグループ エコシステム デベロップメント IICストラテジック イニシアチブ プログラムディレクター カル・パテル氏 IBMがベータ版として提供を開始した「BlueMix」のプログラムディレクターを担当するカル・パテル氏は、「開発者がもっているイノベーションの才能を開花させたい」と語る。BlueMixは、IBMのIaaS「Soft Layer」を基盤とし、オープンソースのPaaSソフトウェア「Cloud Foundry」を実行環境として採用している。BlueMixでは開発に必要な環境を用意することにより、開発者がロジックに専念できるようにするという方向性のPaaSである。その使いやすさゆえに、「5分程度で本番環境を構築できる」とパテル氏は語る。ただし、コーディングは不可欠であることから、Force.comやkintoneとはレイヤが異なる。
IBMが目指すのは、同社のクラウド戦略全般にいえることだが、“オープン”であるというところにある。それはCloud Foundryを採用していることからもうかがうことができる。BlueMix上で構築したシステムは、Cloud Foundryを採用する他社PaaSへの移行が可能である。既存のコードも有効活用できる。つまり、“オープン”であることが、Force.comやkintoneとの差異化ポイントになっている。
「PaaSのマーケットリーダーであるForce.comをどうみているか」との質問に対し、パテル氏は「競合することもあるが、協業できることもある」と答えた。何ともあいまいな回答だが、対Force.comというわけでなく、「IBMはIaaSからPaaS、SaaSまですべてをカバーしている。そこで利用できるミドルウェアやソフトウェアも充実している」と同社の強みを強調したパテル氏。出遅れ気味のPaaS市場でどのように巻き返すのか。BlueMixの本番リリースが待たれるところだ。
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