Google Cloud Platform パートナーに早くもサービス化の動き
吉積情報×KCCS
AWSとの「ガチンコ対決」に自信 狙うはクラウド市場の下克上
●すべての認定技術者資格を取得 
吉積情報
吉積礼敏
代表取締役 Googleは、今年4月、PaaSの「Google App Engine」やIaaSの「Google Compute Engine」、各種BIツールなどで構成されるプラットフォーム商材「Google Cloud Platform」を、ようやく日本国内でも正式にリリースした。これを活用したサービス「Cloud Ace」をいち早く世に出したのが、吉積情報と京セラコミュニケーションシステム(KCCS)だ。「Cloud Ace」は、「Google Cloud Platform」の導入設計からサポート、運用までをワンストップで支援するフルマネージドサービスで、定額課金での利用はもちろん、日本円による請求書での支払いに対応している。
もともと吉積情報は、「Google Apps」のSMB向けリセラーとして活動するとともに、「Google Cloud Platform」のサービスパートナーとして、「Google App Engine」や「Google Compute Engine」を活用したシステム開発サービスも手がけてきた。シングルサインオンやワークフローなどのアドオン機能などはパッケージ化し、ソフトバンクテレコムやNTTドコモなどのオプションソリューションにも採用されている。また、「Google Cloud Platform」には、五つの認定技術者資格があるが、同社の吉積礼敏代表取締役は、日本人で初めてすべての資格を取得しており、「Google Cloud Platform」ビジネスでは文字通りのトップランナーである。
「Cloud Ace」は、そうした同社のノウハウと、KCCSのデータセンター運用ノウハウを融合した成果だという。「Google Cloud Platform」は、Googleのインフラを使ったサービスだが、KCCSの佐藤孝治・プラットフォーム事業本部東日本データセンター事業部長は、「当社には大規模なウェブ系ユーザーのITインフラを長年運用してきた実績があり、『Google Cloud Platform』にも生かせる」と自信をみせる。
●キャパシティではAWSより優位 初年度は、売上1億円を目標としているが、その7割程度はIaaSの「Google Compute Engine」が占めると予測している。IDC Japanの調査によれば、パブリッククラウドの市場は、2018年には2013年の3倍の4000億円規模になり、なかでもIaaSの伸びが大きい(図参照)。この成長領域を重点的に攻めるわけだが、一方で、IaaS/PaaS領域では、AWSが日本でも圧倒的なシェアを誇り、彼らと真正面からぶつかったうえで、案件を獲得しなければならない。

KCCS
佐藤孝治
事業部長 吉積代表取締役は、「価格性能比ではそれほど変わらないが、Googleのインフラをそのまま使うことができる『Google Cloud Platform』は、ネットワーク周りが非常に強力。ロードバランサ機能などが充実し、キャパシティの部分ではAWSよりも格段にすぐれているので、十分に勝機がある」と話す。また、KCCSはAWSのパートナーでもあるが、「当社は後発で、AWSに関しては、すでにエコシステムができあがってしまっている。吉積情報と組んだことで、『Google Cloud Platform』では先頭を走ることができる。AWSより伸びしろは大きいと考えている」(佐藤事業部長)と、「Google Cloud Platform」もラインアップに加えることで、クラウドインフラビジネスで先行するベンダーに対して下克上を狙っていることを明かす。当面は、「Google Cloud Platform」のメリットを生かし、ゲーム業界などを中心にユーザーを開拓する方針だ。
「Google Cloud Platform」には、商用のDB製品にまだ対応していないなど、基幹システムの構築に耐えうる汎用的なインフラとしては課題もある。しかし、吉積代表取締役は、「当社に任せてもらえれば、基幹系も問題なく構築できる。『Google Cloud Platform』の普及も意識しながら、『Cloud Ace』を市場に浸透させていきたい」と意気込んでいる。
記者の眼
今回取材したすべてのパートナーが、Googleの商材の魅力として共通して口にしたのが、「革新性」だ。しかし、見解が分かれたのは、革新的なGoogleの商材が、将来、市場のリーダーになり得るのかどうかという点。クラウド、モバイルといったトレンドの拡大が、GoogleをB2B市場でもリーディングカンパニーに押し上げる市場環境をつくる、またはGoogleやパートナー企業がそうした変化を自ら引き起こすことができるという見方がある一方で、Googleの法人向け商材はイノベータやアーリーアダプタのためのものでいいという声もあった。
もちろん、Google自身は前者を指向しているわけだが、そのためにはパートナーエコシステムを今よりもずっと強化しなければならないのではないか。Googleからパートナーに発信される情報量は、決して多くはない。「それがGoogleのスタイル」と割り切りつつも、Googleが法人向けビジネスにどの程度の本気度をもって取り組んでいるのかについては、測りかねているベンダーが多い印象だ。また、HDEの永留副社長は、「マイクロソフトはパートナーをリードしつつ、協力してエンドユーザーに提案、クロージングするスキームをうまくつくっている。それが『Google Apps』と『Office 365』の直近の勢いの差につながっているのでは」と指摘する。
しかし、そこはGoogle。法人向けビジネスで市場のリーダーになるという目標を、既存のベンダーと似た手法で達成しようとするとは限らない。クラウドの商流でも、イノベーションを実現する可能性に期待したい。