販路はどうする?
●azmarche「サポーター」の仲介で販路拡大 
富士通マーケティング
浅香直也 執行役員 基本はウェブ直販のビジネスモデルだが、「サポーター」という新たなチャネルを増強し、拡販につなげる。サポーターは、ユーザーにazmarcheを紹介し、契約に至れば継続的に手数料収入を得ることができる。FJMが、サポーターとして期待しているのは、ITコーディネータや、SMBのIT化推進を目指す日本情報サービスイノベーションパートナー協会(JASIPA)の会員だ。浅香執行役員は、「エンドユーザーがサービスを使い続ける限りはFJMがコミッションを支払うので、手離れよくストック化できる。新しいクラウドビジネスのかたちをつくろうとするFJMの考えに賛同してくれるサポーターをいかに増やすかが、事業の成否のカギを握る」と強調する。
●N-town 都道府県ごとに基幹パートナーを置く 
NEC
及川典子 シニアエキスパート N-townの販売パートナーは、現在50社弱。及川シニアエキスパートは、「地域密着型でユーザーを支援する、『顔がみえるクラウド』を目指すN-townにとっては、各地域に基幹パートナーを配置することが最重要課題だった。ようやく全国の主要都道府県をカバーする中核パートナー網ができた」と話す。ただ、当初の計画よりは半年ほど遅れているという。理由は、Windows XPのマイグレーション需要などで、昨年度の各販売パートナーの既存ビジネスが好調すぎたことにある。それでも及川シニアエキスパートは「再販モデルはパートナーにしっかりビジネスプランをつくってもらうことが前提。それを考える時間は必要だった」と前向きに捉えている。
●オープンクラウドマーケットプレース 直販を基本とするが間販も可能 
日立システムズ
杉本潔彦 主管 直販が基本のオープンクラウドマーケットプレースだが、「販路の選択は永遠の課題だ」という杉本主管。ウェブ直販だけではユーザーに浸透しない商材もあると考えている。例えば、日立システムズの既存ビジネスは、商品事業部ごとに販売パートナーを整備している。そうしたラインで取り扱ってきた商材は、SaaS化してCMPに乗せる場合でも、間接販売するケースがあるという。杉本主管は「間接販売は、パートナーに付加価値をつけて売ってもらうことになる。それがマーケットプレイスの仕組みになじむのかという議論はある。また、定価販売のため、仕切り価格の問題も出てくるので、現時点では商品ごとの対応になる」と語っている。
エンドユーザーにどう浸透させる?
●azmarche SIerが介在しない成功事例を積極的に紹介 まずは、エンドユーザーが、自社にマッチしたサービスを簡単に探すことができるなど、利便性に配慮したサイト、システムのブラッシュアップを継続的に進めている。オンラインでのマーケティング活動も進めるが、ユーザーへのリーチは、サポーターが中心になることを想定している。「SMBの経営者や『一人情シス』には、導入の支援者が必要」(浅香執行役員)だと考えるからだ。一方で、ITリテラシーの高いベンチャー企業向けに、「起業家パック」のような商材も用意して、イノベータ層の流入も狙う。また、azmarcheと直接関連しない案件でも、SIerが介在しないIT導入の成功事例を積極的に紹介して、クラウド導入のハードルを下げる取り組みを展開する考えだ。
●N-town 地域密着のセミナーなど地上戦重視 見方によっては従来のSIビジネスの延長のような間接販売モデルを採るN-townだが、商材の価格を低く抑えなければ売れないことは自覚している。しかし、パートナーが商材開発に自ら投資する場合は、回収できるのだろうか。及川シニアエキスパートは、「パートナーの商材開発にあたっては、NECがマーケティングを支援し、特定の地域や業種などの『コミュニティ』のニーズを吸い上げてもらうことを前提としている」と、成算があることを強調する。ウェブプロモーションも展開しているが、地方のメディアと組んでセミナーを開くなど、地上戦も重視していく。現時点で、会員数は約3000社。有料サービスのユーザー数は、今年度中に数百社にしたいという。
●オープンクラウドマーケットプレース トライアル機能の充実を図る まずは、トライアル機能の充実を図る。自社商材はほぼすべてトライアル機能を備えていて、他社商材でも取り組みを加速してもらうべく、クラウドベンダーへの働きかけを強めている。加えて、リスティング広告を打ったり、SEO対策もしたりしているが、「旧態依然としたプロモーションのやり方にもポテンシャルを感じている」と、杉本主管は話す。例えば、約1000通のダイレクトメールを送ったところ、数件の契約につながったという。テレマーケティングも合わせて展開したことで、効果が出たとみている。こうした取り組みを複合的に進めるとともに、親会社である日立製作所のSaaS「TWX-21」と連携したプロモーションも模索していきたいとしている。
国産CMPの先駆け J-SaaSは負のベンチマークなのか?
国産のクラウドマーケットプレイス(CMP)は、経済産業省が国費を投じて2009年にSMB向けのSaaS基盤として運用を開始した「J-SaaS」が先駆けだ。しかし、利用者を十分に集めることができないまま富士通が事業を引き取り、現在はazmarcheに移管している。FJMのライバルたちは、J-SaaSを反面教師として、「まずは事業を継続することに重点を置いている」と話す。
一方で、FJMの浅香執行役員は、「いろいろな人が補助金に群がったが、結局統率する人がいなかったし、営利事業としてやっていなかったことが失敗の原因。国の補助金事業の失敗例としてのイメージが固定化してしまい、誰もビジネスモデルそのものの評価をしようとしなかった。でも、私はJ-SaaSのモデルは悪くなかったと思っている。SMB向けクラウドは、SIが介在するビジネスでは伸びない。サポーター制度はそれに対する解の一つだし、ポテンシャルのあるビジネスモデルとして、azmarcheでも基本的な考え方を継承している」と反論する。J-SaaSの流れを汲むazmarcheが、その真価を発揮できるのか。今後の展開に注目だ。
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