デジタルトランスフォーメーションやデジタル革命など、“デジタル”をキーワードに世の中が変わろうとしている。IT業界もデジタルの恩恵を受けるかたちで、ビジネス領域が広がりつつある。IT業界は、いずれ“デジタル業界”に変わるのではないだろうか。そんなことが思い浮かぶ、2016年であった。時代はデジタルだというのに紙で勝負するのが、“紙ってる”週刊BCN。では、本紙の記事から今年を振り返ってみよう。(取材・文/畔上文昭)
IoTとAI、クラウド、そして地方創生
2016年のIT業界の話題の中心は、IoTとAI(人工知能)。バズワードとの指摘がある一方で、活用事例も増えてきた。そこに定番キーワードのクラウドが加わり、それぞれの依存関係が明確になりつつある。とくにIoTを起点にすることで、企業向けITの現在地がみえてくる。
●IoTとAI AIは、どんなにすぐれたエンジンをもっていても、データがなければ役に立たない。そのデータを集めるための手段の一つが、IoTという関係が成り立つ。逆に、IoTで集めたデータの活用には、AIが不可欠になりつつある。
このIoTとAIの関係を「AIoT」とし、とくに企業向けを意識して「Enterprise AIoT」という造語を世に出したのが、週刊BCN Vol.1651の特集だった。ここで紹介したのが、Enterprise AIoTの事例だ。三井化学は、同社の化学プラントにおけるガス製品製造の過程において、Enterprise AIoTを導入。センサから集めたデータをAIで分析し、ガス製品の品質について、20分先まで正確に予測できるようにした。トラブルを事前に回避できるため、品質向上とコスト削減に貢献することができる。
画像認識は、現在のAIが得意とする分野の一つだ。そのため、カメラをIoTデバイスとして、取得した画像をAIで分析するという活用は、今後増えそうだ。その事例として、自動車の種類を認識し、最適な広告を道路わきのサイネージに表示するというものがある。自動車は富裕層かどうかなどの判別が容易なため、さまざまな活用方法が考えられる。
●IoTとクラウド IoTといえばクラウドである。もちろん、オンプレミスのIoTソリューションもたくさんあるが、IoTはクラウド環境で利用したいとする理由がある。
まず、IoTでは大量のデータを取得することになるということ。そのデータ量を把握し、事前にストレージなどを用意するのは困難であることから、スケールしやすいクラウドが向いている。
IoTは、工場で活用されることが多い。多くの製造業者は、さまざまな国と地域に工場を抱えているため、IoTソリューションを展開しようと思ったら、世界中のどこからでも利用でき、調達も容易なクラウドが向いている。
そして重要なのは、IoTソリューションがチャレンジ領域だということ。期待した効果が出るとは限らない。効果が見込めなければ撤退したいところだが、オンプレミス環境なら簡単にはやめられない。であれば、利用に応じて課金されるクラウドが向いているということである。
各クラウドベンダーはIoT対応のサービスを提供していて、それもIoTといえばクラウドという構図につながっている。
●IoTとAIとクラウド 店舗の接客は人型ロボットに任せる。そんな時代が、もうすぐやってくる。重要なのは、その人型ロボットもIoTデバイスの一つだということ。ロボットから得たデータは、クラウドに格納され、クラウドサービスとして提供されるAIによって活用される。これにより、IoTとAIとクラウドの三角関係が成り立つ。今年の重要なキーワードは、密接に結びついているのである。
●IoTと地方創生 最後に紹介したいのが、IoTと地方創生の関係。地方創生では、地域の工場の活性化を目的として、IoTソリューションの導入が推奨されている。ドイツ発のインダストリ4.0ではIoTが深くかかわるため、これまでのIT投資とは異なり、工場側の関心も強くなっているという。IoTは前述のとおり、クラウドと密接な関係にある。そのため、クラウドへの関心が薄いとされる地域でも、IoTがクラウドの普及を後押しすると期待されている。
2017年は、IoTを中心にAIやクラウドが動くという流れが本格化することになりそうだ
2016年 IT業界 企業トップ動静
1月
27日 シマンテック日本法人の代表取締役社長に日隈寛和氏が就任
2月
1日 日本ネクサウェブのCEOに崔彰桓(チェ・チャンファン)氏が就任
4日 ヴァイオリン・メモリーの代表取締役社長に遠井雅和氏が就任
19日 週刊BCNが大阪でITトレンドセミナーを開催
26日 週刊BCNが愛媛・松山でITトレンドセミナーを開催
3月
1日 ジャストシステムの代表取締役社長に関灘恭太郎氏が就任
25日 週刊BCNが宮城・仙台でITトレンドセミナーを開催
4月
1日 理経の代表取締役社長に猪坂哲氏が就任
1日 IDCフロンティアの代表取締役社長に石田誠司氏が就任
1日 日本CAの代表取締役社長に反町浩一郎氏が就任
1日 富士通マーケティングの代表取締役社長に藤田正美氏が就任
1日 ヤマダ電機の代表取締役社長兼代表執行役員COOに桑野光正氏が就任
1日 日立製作所の取締役 代表執行役 執行役社長兼CEOに東原敏昭氏が就任
1日 日立ソリューションズの代表取締役 取締役社長に柴原節男氏が就任
1日 日立システムズの代表取締役 取締役社長に北野昌宏氏が就任
1日 日本ユニシスの代表取締役社長執行役員に平岡昭良氏が就任
1日 ユニアデックスの代表取締役社長執行役員に東常夫氏が就任
1日 沖電気工業の代表取締役社長執行役員に鎌上信也氏が就任
1日 SCSKの代表取締役社長執行役員に谷原徹氏が就任
1日 セゾン情報システムズの代表取締役社長に内田和弘氏が就任
1日 イクシアコミニュケーションズの代表取締役社長に伊吹仁志氏が就任
1日 GRANDITの代表取締役社長に石川研一氏が就任
1日 日本アバイアの代表取締役社長に和智英樹氏が就任
1日 日本オフィス・システムの代表取締役社長に戸田克則氏が就任
21日 ソフトウェア・エー・ジーの社長にブルース・ベドー氏が就任
25日 キングソフトの取締役社長に馮達(ふぇん だ)氏が就任
27日 ブラック・ダック・ソフトウェア日本法人の代表取締役社長にジェリー・フォズニック氏が就任
28日 オートデスクの代表取締役にマイケル・キング氏が就任
5月
30日 マカフィーの代表取締役社長に山野修氏が就任
6月
1日 日本ラドウェアのカントリーマネージャーに公家尊裕氏が就任
2日 エフコムマーケティングの代表取締役社長に古川章氏が就任
8日 Big Switch Networks日本法人のカントリーマネージャーに田島弘介氏が就任
15日 リコージャパンの代表取締役社長執行役員CEOに松石秀隆氏が就任
15日 NECネクサソリューションズの代表取締役 執行役員社長に団博己氏が就任
15日 リコージャパンの代表取締役 社長執行役員に松石秀隆氏が就任
17日 クリックテック・ジャパンのカントリージェネラルマネージャーに藤堂正憲氏が就任
21日 NECソリューションイノベータの代表取締役 執行役員社長に杉山清氏が就任
23日 Pivotalジャパンのアジア太平洋および日本の責任者にライオネル・リム氏が就任
24日 週刊BCNが愛知・名古屋でITトレンドセミナーを開催
25日 東芝の代表執行役社長に綱川智氏が就任
27日 Commvault日本法人の代表取締役社長兼エリアバイスプレジデントに俵雄一氏が就任
7月
4日 IARシステムズの日本オフィス社長に石川博氏が就任
8月
1日 ディメンションデータジャパンの代表取締役社長に橋本晃秀氏が就任
5日 マウザーエレクトロニクスの日本法人代表に勝田治氏が就任
5日 週刊BCNが北海道・札幌でITトレンドセミナーを開催
24日 週刊BCNが東京でBCNカンファレンスを開催
9月
9日 週刊BCNが大阪でITトレンドセミナーを開催
16日 週刊BCNが福岡でITトレンドセミナーを開催
29日 PTCジャパンの執行役員社長に宍戸武士氏が就任
10月
3日 パフォーマンスホライズン日本法人の取締役社長にフレッド・マカレイグ氏が就任
14日 週刊BCNが広島でITトレンドセミナーを開催
21日 サイバーリーズン・ジャパンの社長に茂木正之氏が就任
11月
11日 週刊BCNが石川・金沢でITトレンドセミナーを開催
16日 NHNテコラスの代表取締役社長に加藤雅樹氏が就任
30日 ミドクラジャパンの代表取締役社長に廣川裕司氏が就任
12月
1日 シネックスインフォテックの代表取締役&CEOにティージェイ・トロージャン氏が就任
2日 週刊BCNが東京でBCNフォーラムを開催
9日 週刊BCNが福岡でITトレンドセミナーを開催
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