Special Feature

「デジタル・アダプション」でDXを支援 新たなビジネスとして広がりに期待

2022/11/03 09:05

週刊BCN 2022年10月31日vol.1944掲載

 多くの企業が目指すDXを実現する上で、ITをしっかりと使いこなすことが必須の状況になっている。しかし、企業の間では、導入した製品やサービスを思うように扱えず、成果につなげられないケースが発生している。製品やサービスの定着化が課題として浮上する中、それを支援する「デジタル・アダプション」の考え方が注目されている。デジタル・アダプション・プラットフォームを提供する主要ベンダーは着実にニーズの取り込みを進めており、新たなビジネスとして広がっていくことが期待されている。
(取材・文/齋藤秀平)
 

関連の市場は拡大傾向

 この約2年半で、企業のデジタル化は大きく進展したといっても過言ではないだろう。コロナ禍に対応するため、多くの企業がテレワークを導入したり、ITを活用してこれまでの業務の進め方を変えたりしてきたからだ。

 特に柔軟な働き方を後押しするWeb会議ツールやチャットツールなどのSaaSは急速に普及した。ITビジネスでは、商談を進める際、DXが非常に有効なキーワードになり、クラウドサービスを中心に他の製品やサービスの導入も広がっている。

 実際、企業のIT投資はおおむね堅調に推移している。調査会社富士キメラ総研の調査結果「業種別IT投資/デジタルソリューション市場 2022年版」によると、22年度の国内企業のIT投資額は、前年度比4.6%増の20兆1972億円となる見込み。DXの浸透とともに、新規事業開発に向けたバリューアップ投資が活発化し、26年度は同比21.7%増の23兆5131億円になる見通しだ。

 ただ、製品やサービスを導入したからといって、一足飛びにDXは実現できない状況がある。情報処理推進機構が20年5月に発表した「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」では、DXに積極的な従業員1001人以上の企業(290社が調査対象)のうち、「業務効率化による生産性向上」について38.3%の企業が「成果あり」と回答した。一方、「既存製品・サービスの高付加価値化」で成果ありとした企業は17.6%、「新規製品・サービスの創出」では14.5%となった。

 このような状況を踏まえ、企業は、DXを実現するための対応策の一つとして、新たに導入した製品やサービスの定着化に着目し、デジタル・アダプション・プラットフォームを採用する動きが増えているとみていいだろう。

 調査会社アイ・ティ・アール(ITR)は、デジタル・アダプション・プラットフォームについて「新たに活用を開始したビジネスアプリケーションや、Webシステムなどの利用の定着を支援する製品・サービス」と定義し、「ユーザー視点では生産性の向上やヘルプデスク業務の削減などを、ベンダー視点では利用ユーザーやシステムの拡大、利用定着率の向上などを期待できる製品・サービスとしてデジタル・アダプションプラットフォームが注目されている」と説明する。

 さらにITRの水野慎也・シニア・アナリストは「デジタル・アダプション・プラットフォームは、導入済みアプリケーションの既存機能に影響を与えることなくアドオンが可能であり、ユーザーの利便性を高め、定着化を促進するツールとして注目されている」と付け加える。

 ITRの「ITR Market View:デジタル・アダプション市場2021」では、19年の市場規模は1億円だったが、20年は4億円になった。21年度は12億円、22年度は20億円と引き続き拡大し、25年度は20年度の10倍となる40億円に達すると予測している(下図参照)。
 

 盛り上がりつつある市場の中で、各ベンダーは、他社との違いをどのように出し、ビジネスを進めているのか。ここからはWalkMeの日本法人とPendo.io Japan(ペンド・ジャパン)、テックタッチの3社について見ていこう。
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  • WalkMe日本法人 大企業を中心に導入を拡大
  • ペンド・ジャパン パートナー開拓は領域特化で
  • テックタッチ 製品外のサービスにも注力

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