――2022年は日本法人設立30年の節目だった。どう振り返るか。
22年は「『クラウドカンパニー』への大転換」を掲げて活動し、それを実行できた1年だったと実感する。かつては売り切り型のソフトウェアを提供するビジネスが非常に大きかったが、今ではクラウドでの採用がほとんどと言っていい状況となった。そういう意味では、日本企業がクラウドに寄せる信頼や期待が大きくなったと感じている。グローバルでは22年度第3四半期(1~9月)におけるクラウドの売上高が前年同期比およそ25%増だった。日本はそれを上回る勢いで、非常に伸びている。デリバリーのリソースは需要に対してひっ迫しているものの、新たなパートナーも増えている状況だ。
SAPジャパン
代表取締役社長
鈴木洋史
――「クラウドカンパニー」への歩みを登山に例えると、今は何合目ぐらいか。
7合目ぐらいまでは来ていると思う。最後のひと山はあるが、中腹は確実に越えている。今後は導入後の部分を強化したい。22年にクラウドサクセスサービスという部門をつくった。導入から本稼働、その後の利活用、そして必要に応じた拡張までのサイクルを回せるチームだ。売り切りからサブスクリプションモデルに変わると、お客様に使い続けていただくために、(SAPが)価値を提供し続けられるかが一番重要なポイントになる。
リスキリングで「強い国」に
――「S/4HANA」に関し、中堅・中小企業へのアプローチを強めている。
日本において、この30年は大手への導入が非常に進んでいたが、中堅・中小企業にはまだまだ浸透していない面がある。そこに向けてさらに成長するため、販売の100%間接化やパッケージプログラムなどを打ち出した。結果として、まさに中堅・中小が非常に伸びている。人口減、少子高齢化で、優秀な人材の確保が難しくなっている。いかに効率化を図り、生産性を向上させるかという喫緊の課題に対し、比較的安価に使える仕組みである点も好評の要因だとみている。
――23年はどのような年にしたいか。
クラウドカンパニーへの大転換について、さらに実行を深め、進化させたい。特にS/4HANAのパブリッククラウド版に注力する。大企業、中堅・中小を問わず、企業の皆さんに効率化、生産性の向上を実現していただくことを目指す。
あわせて、リスキリングのプラットフォームをつくりたい。これは一企業としてではなく、IT業界全体や行政も巻き込んで推進する取り組みだ。DXが広がる世界の中で、本当の意味で国を強くしたい。