Special Feature

デジタル化著しいフィジカルセキュリティ市場 IT商材としてのビジネスチャンス広がる

2023/07/24 09:00

週刊BCN 2023年07月24日vol.1978掲載

 防犯カメラや入退室管理といったフィジカル(物理)セキュリティ製品は、施工業者が導入し、閉ざされた社内ネットワーク上で運用されるケースがこれまで大半で、サイバーセキュリティ製品と比較すると、IT商材としての性格は薄かった。しかし、近年はこのフィジカルセキュリティ領域でもデジタル化が進み、クラウドを活用した防犯カメラの普及、認証技術の高度化、デバイスを一元管理できるツールの登場などにより、ITの観点からのビジネスチャンスも拡大している。特徴的なフィジカルセキュリティソリューションを提供する3社の取り組みを紹介する。
(取材・文/岩田晃久)
 

ネットワンパートナーズ
統合基盤で多種多様な機器を一元管理

 ネットワンパートナーズは、カナダGenetec(ジェネテック)の統合セキュリティプラットフォーム「Genetec Security Center」を軸に、フィジカルセキュリティ事業を強化している。背景には、防犯カメラなどのデバイスがインターネットにつながるようになり、場所を問わず監視・運用できる環境の構築が求められるようになっていることがあり、このニーズをつかんで顧客の拡大を目指す。
 
ネットワンパートナーズ 篠田圭太郎氏

 ビジネス開発部第1チームの篠田圭太郎氏は、国内のフィジカルセキュリティ市場について、「防犯カメラなどは、閉ざされたネットワークで運用される“レガシーシステム”が活躍してきたが、最近は、遠隔やクラウドで運用・管理できるオープンなシステムへの移行が始まっており、市場も拡大傾向にある。ただ、インターネットにつながることで、フィジカルセキュリティシステムが攻撃されるケースもあることから、それらのシステムでも従来対策していなかったサイバーセキュリティの強化など、求められるポイントが増えている」と解説する。

 フィジカルセキュリティがオープンなシステムに移行することで、どのような対策が必要となるのだろうか。ビジネス開発部第3チームの村野由季氏は「▽PCやカメラの脆弱性を検知する▽デバイスを可視化しアクセス権限などをコントロールする▽ネットワークの境界防御や、マルウェアに感染した際に内部拡散を防止する──といった対策を施す必要がある」とアドバイスする。
 
ネットワンパートナーズ 村野由季氏

 そのためにカギとなるのが、前出のGenetec Security Centerだ。防犯カメラの映像データを保存して運用・管理する「VMS(Video Management Software)」と呼ばれる製品で、カメラの映像以外にもドアリーダーや物体感知など、さまざまなデバイスのデータに対応できる点を特徴とする。入退室管理、ナンバープレート認識といった機能も搭載する。最近は、映像解析アプリケーションと連携して使用するケースも増えているという。従来、防犯カメラなどのフィジカルセキュリティ製品は複数の機器がそれぞれ個別のシステムとして導入されており、管理が複雑化していたが、Genetec Security Centerに集約することで、運用負荷の軽減や対応の迅速化が図れるとしている。

 データ保護機能も充実しており、カメラとサーバーの間といった各種通信と、保存するデータは暗号化される。不特定多数の人が映る映像にはモザイクをかけるといったプライバシーマスキングも可能。ほかの認証システムとの連携や特権機能により、データの閲覧制限といった設定も行える。

 現在は、製造業や社会インフラ領域での利用が拡大傾向にあるとした。多拠点を有する製造業では、1拠点からスタートし、徐々に導入を広げていく傾向が強いという。

 パートナーがGenetec Security Centerを販売するには、ジェネテックが提案するトレーニングを受け、認定資格を所得する必要がある。「防犯カメラの単価が下がってきているため、『提案商材を増やしたい』『フィジカルセキュリティ市場の拡大を見込み、新たなビジネスとして開始したい』といったパートナーが増えている」(篠田氏)ことから、資格の取得が増加しているとした。ネットワンパートナーズでは、勉強会の開催や、パートナーと共同で提案先の業界や内容に応じた戦略を策定するなどの支援を行っている。篠田氏は「これまで防犯カメラを導入してきたのは主に工事事業者だったが、最近は、画像解析や設備連携といったソリューションとしての提案を求めるお客様が増えているため、SIerがメインプレイヤーになっていくのではないか」と展望する。
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