クラウドやAIといった最新のテクノロジーの活用は、ユーザー企業だけでなく、ITベンダー自身の変革も促している。さらにその変化は、女性トップの起用といった企業文化の部分にまで広がりつつある。企業への影響に加え、テクノロジーが社会生活を大きく支えている現状を再認識する出来事もあった。週刊BCN編集部が注目したニュースを通じて、1年の動きを振り返る。
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大手3社の生成AI活用 開発支援やグローバル展開を加速
生成AIをめぐる動きが各社で活発になっている。アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン(AWSジャパン)は、国内企業を対象に大規模言語モデル(LLM)の開発支援プログラムをスタート。NTTデータは、生成AI活用をグローバルに広げる取り組みを発表。パナソニックコネクトは、社内で生成AIの活用を推進している。
AWSジャパン 長崎忠雄 社長
AWSジャパンはLLMの開発を支援する「AWS LLM 開発支援プログラム」を開始。参加企業のLLM開発を支援し、国内企業に最適なLLMの開発をサポートする。
NTTデータは「Global Generative AI LAB」を設立。生成AIのソフトウェア開発分野への適用や関連ソリューションの展開、ガイドラインの策定などをグローバルで取り組む。
パナソニックコネクトではAIアシスタントサービス「ConnectAI」を活用し、3時間かかっていたプログラミング業務を5分に短縮した事例などが生まれている。
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7月10日・1976号掲載)
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ピー・シー・エー 24年3月でパッケージ版の新規販売を終了
ピー・シー・エー(PCA)は、2024年3月でパッケージ版の新規販売を終了する。パッケージ版の既存ユーザーや新規顧客に対しては、オンプレミスやIaaSの環境で製品を定額料金で利用できる「PCAサブスク」の提案に切り替える方針だ。
8月に開催された「PCAフェス2023」の東京会場。
パートナーに対して、パッケージ版の新規販売を終了する方針が説明された
PCAは、主力事業の収益基盤の確立を目指し、ストック型ビジネスモデルへの転換を進めており、パッケージ版の終了で、この流れを加速させる。パッケージ版を購入済みの顧客や商談中の案件があるため、29年3月までサポートを続け、保守については28年3月まで継続する。
PCAのストック型ビジネスの割合は年々高まっており、23年3月期の通期連結決算では、ストック収入が売上高の71.5%を占めた。最近の商談ではPCAクラウドやPCAサブスクが中心になっていることから、将来的に開発や営業のリソースをストック型ビジネスの方向に集約する可能性があるという。
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8月28日・1982号掲載)
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野村総合研究所 初の女性社長が就任へ
野村総合研究所(NRI)の社長に、2024年4月1日付で柳澤花芽・常務執行役員が昇格する。女性社長の就任はNRI初。此本臣吾・代表取締役会長兼社長は、24年6月下旬の株主総会・取締役会の決議を経て代表権のない取締役会長に退く。
NRI 柳澤花芽 次期社長
柳澤氏は、「社長1人で何かをするというよりは、担当役員をはじめとする経営チームが力を合わせて経営目標を成し遂げていきたい」と抱負を述べた。
柳澤氏の選任について此本会長兼社長は「コミュニケーション力に優れ、関係役員の協力を取り付け、現場の社員とも積極的に会話するオープンマインドさで、迷わず前へ進んでいく」と評価した上で、「次期社長にはトップダウンではなく、チームの力を引き出せるリーダーが最適だと判断した」と話した。
柳澤氏は1967年神奈川県生まれの56才。
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12月4日・1994号掲載)
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全銀ネットとNTTデータ システム障害の原因を発表
国内の金融機関の間におけるデータ処理を行う「全国銀行データ通信システム」(全銀システム)で10月10~11日、障害が発生し、10の金融機関で一部業務が停止した。システム運営元の全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)と、システム開発を担当したNTTデータは12月1日、都内で説明会を開き、原因と再発防止策を発表した。
全銀ネットの辻松雄理事長(左)とNTTデータの佐々木裕社長
送金や手数料などを算出する中継コンピューター(RC)を更改する際のプログラムに誤りがあり、メモリ領域を確保できなかったことが主原因で、事前のテストでは不具合を発見できなかった。加えて、問題発生に前バーションに戻すなどの対応策も機能しなかった。本格的な復旧は23年末から2024年1月までに順次行われる予定。
今回の教訓を踏まえ、今後は実取引相当のデータを用いた試験を実施するほか、東京、大阪のRCを片方ずつ更改する方策なども検討する。
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12月11日・1995号掲載)