Special Feature
IT市場で存在感増す「ServiceNow」ビジネス “つなぐ”基盤でDXを一歩先へ
2024/07/01 09:00
週刊BCN 2024年07月01日vol.2020掲載
米ServiceNow(サービスナウ)が提供するクラウドサービスの存在感がIT市場で高まっている。日本法人のServiceNow Japanはパートナーを重視した戦略を打ち出し、パートナー各社も販売体制の強化や連携ソリューションの開発に取り組む。さまざまなシステムを“つなぐ”統合基盤として、DXを一歩先に進める役割が期待されている「Now Platform」を中心とした市場の動きを紹介する。
(取材・文/大畑直悠)
また、ノーコード/ローコードによる開発環境も備えており、必要に応じて基盤上にアプリケーションを開発できる。Now Platformを通じて、ユーザーはすでに導入したシステムをリプレースしなくても、複数のシステムにまたがる業務プロセスやデータを統合してUXの向上を図れるほか、不足するアプリケーションを迅速に開発しながら最適なビジネスプロセスをアジャイル型で変革できるといった利点を得られる。
ServiceNow Japan 鈴木正敏 社長
ServiceNow Japanの鈴木正敏社長は「日本はERPをはじめとしたSoR(Systems of Record)への投資が進んできた一方で、生産性の課題がなかなかブレイクスルーできなかった。業務全体の中でSoRが使われるのはあくまで一部で、メールなどを用いた調整業務に時間がかかったり、必要なシステムが散在しているため非効率性が生まれたりしている。当社はこのSoR外の課題の解決を支援できる」と訴える。統一的なデジタルワークフロー基盤の導入によって、顧客や従業員とさまざまなシステムとの接点が集約でき、アナログ業務が残る領域への適用によって顧客体験や従業員体験を向上させられるとする。
ServiceNow Japanのビジネスの近況としては、2023年は大型案件が大幅に増加したことなどから、売上高が前年比で2桁成長となった。従来から強みであったITサービスマネジメント(ITSM)に加え、IT資産管理、IT運用管理といったソリューションの導入が増加した。また、人事やフィールドサービス管理など、非IT領域でデジタルワークフローを構築し、業務を効率化するビジネスが活発化したことも好調の要因となった。
鈴木社長は「これまでは、Now Platformが持つポテンシャルが必ずしもフルで使われていたわけではなかったが、23年から状況が変わっている。顧客が経営の施策として、大規模なDXを実施すべくエンドツーエンドでプラットフォームを活用するロードマップを引くケースも増えている」と強調。さまざまなワークフローの構築に対応できるNow Platformの柔軟性が国内でも認知され、ユースケースの幅が広がっているとする。
鈴木社長は「当社のプロダクトのポートフォリオは拡大している。国内の顧客からの引き合いが高まっている中、これからはパートナーとしっかりと連携していくことが重要だ」と強調する。その上で「パートナーの幹部と話す中でもサービスナウ製品に精通した人材の育成は常にテーマに入っている。グローバルのプログラムやアセットを活用しながら、パートナーのスキルの蓄積を支援する体制も(日本法人の中に)整っている」とアピールし、パートナーに対するトレーニングの提供や、グローバルでのベストプラクティスの共有などで関係強化を進める構えだ。
新規パートナーの獲得を進める上で、鈴木社長は「各パートナーの強みを生かしたGo To Market戦略を推進したい」と語り、パートナーが持つ商材をNow Platform上のデジタルワークフローと組み合わせてシステムの利便性を向上する、といったかたちの協業を推進する方針。また、非ITの部分での注目度の高まりを受け、顧客接点の改善や従業員体験の向上に加え、経理や法務などのバックオフィス業務の改善に積極的に取り組むパートナーの獲得を目指す考えも示す。
鈴木社長は「国内の顧客にしっかりとわれわれのプロダクトを使ってもらい、求めるビジネスアウトカムを獲得してもらうために、(パートナーと連携しながら)必要なリソースを蓄えていくことが重要だ」と力を込める。富士通
富士通は、オファリング型サービスの提供で社会課題の解決を目指す事業モデル「Fujitsu Uvance」で、「Business Applications」領域の中核を担う商材としてサービスナウ製品を位置づけている。国内では、製造や金融、公共などの業界への導入が広がっており、ビジネスは好調に推移している。
富士通 山口 肇 事業部長
グローバルソリューションBG(Business Group)グローバルビジネスアプリケーション事業本部ServiceNow事業部の山口肇・事業部長は「富士通が持つノウハウや知見を組み合わせ、単にITSMなどのソリューションを提供するだけではなく、業種別のオファリングを提供する際の基盤として活用されるケースも多い」と説明。その上で「Now Platformが備える豊富なAPIに加え、ノーコード/ローコードツールを活用しながらスピード感を持って開発し、だめなところを継続的に改善するアジャイル型のDXができることが魅力だ」と話す。
富士通は2024年5月、サービスナウとの戦略的パートナーシップを発表。Fujitsu Uvanceで、業種ごとの具体的な課題解決を目指す「Vertical」の領域で提供するオファリングを共同で開発する。両社はまず、製造業向けにエンジニアリングチェーンマネジメントとサプライチェーンマネジメントの業務全体を管理し、業務データの連携や業務プロセスを統合するプラットフォームを提供する。
24年後半には、「Fujitsu Uvance Kawasaki Tower」(川崎市)に「Fujitsu ServiceNow Innovation Center」を開設。両社による投資と人材派遣を進め、チームとしてオファリングの開発などを実施する。
山口事業部長は「各業界の顧客に課題を持ち寄ってもらい、サービスナウと富士通の技術を掛け合わせて解決に向けたアイデアをかたちにしていきたい。最初は小さくサービスを開発し、うまくいきそうであれば大きく展開していく」と説明する。
このほか、サービスナウ製品の有効活用を支援するソリューション「ServiceNow Impact」と、富士通のアドバイザリーサービス「Fujitsu Customer Advisory and Support Excellence」を組み合わせた新しいオファリングの提供も24年後半に予定し、顧客がサービスナウ製品の活用で適切に投資対効果を得られるように後押しする。
富士通は今後5年間で、ビジネス規模をグローバルで5倍にすることを目標に掲げる。ビジネスの拡大に伴い、コンサルティングやデリバリーのリソースの不足が課題になっているとし、今後はデリバリーのテンプレート化などに取り組む方針だ。NEC
NECは、自社をゼロ番目の顧客として外販につなげる「クライアントゼロ」の考え方の下、サービスナウ製品を社内DXで活用する中で得たノウハウを蓄積し、これを基にコンサルからデリバリー、運用支援を一貫して提供している。
NEC 嶋村 寿 統括部長
サービスナウ製品の外販は20年に開始した。サービスビジネス統括部の嶋村寿・統括部長は「当初はライセンスを仕入れてNECブランドで外販していたが、2年ほど前から明確にサービスナウ製品が求められるようになり、サービスナウの名前を前面に出している」と話し、国内のサービスナウビジネスの市場は拡大しているとみる。
同社は、ServiceNow Japan、米Tanium(タニウム)日本法人と連携し、自社のIT環境のセキュリティーリスクを最小限にする「サイバーハイジーン」を強化する仕組みを構築。24年4月から稼働を開始し、約2カ月で導入を完了した。「Tanium Comply」で検出したぜい弱性を、デジタルワークフロー「ServiceNow SecOps-VR」で自動的に管理し、対応の進展状況を可視化する。この仕組みでぜい弱性の検知から管理者への通知までの時間を従来の7分の1以下に短縮するという。また、サーバーのOSのぜい弱性情報と併せて、システム構成や管理者情報を把握することで、初動対応の即時化や対処後のフォローが可能になる。24年10月からソリューション化し、外販する予定だ。
24年2月には、サービスナウのリーガルテック製品「Legal Service Delivery」の稼働を国内で初めて開始。これまでメールなどで行われていたさまざまな部門からの法務関連の問い合わせを一元的に管理できるようにした。また、仮想エージェントとナレッジベース記事で一般的な法的質問に対する回答を自動化したり、リーガルレポートとダッシュボードでインサイトをリアルタイムで提供する。同製品に関してはすでに外販の体制を整えている。
今後は導入後の活用支援に力を入れる考えで、顧客が投資対効果を得られるようにサポートを充実させるとともに、必要に応じて適用範囲の拡大やロードマップの再策定など支援。部門を横断した導入範囲の拡大にも取り組む。
嶋村統括部長は「Now Platformの強みは、システムとシステムの間のホワイトスペースにワークフローを構築してデジタル化できること」とし、「ITSMのようなもともとデジタル化されている領域の運用を効率化するだけではないため、IT部門だけではなく、全社的な戦略策定に関わるCDOへのアプローチが重要になる」と話す。NTTデータ
NTTデータは、21年に外販を担う組織「ServiceNowビジネス推進室」を立ち上げ、その後「ServiceNowビジネス統括部」に格上げした。上流のコンサルから実装、サポートまでを一貫して提供している。取締役常務執行役員の冨安寛・テクノロジーコンサルティング&ソリューション分野長は「現在、協力会社も含めれば300人ほどの専門人材がおり、協力会社もサービスナウビジネスの立ち上げ当初からスキルを磨いているため、熟練したスキルを持つ組織だ」とアピールする。
NTTデータ 冨安 寛 取締役常務執行役員
冨安取締役常務執行役員は、ITSMだけではなく、従業員や顧客向けのワークフローなどバランス良く導入実績があると説明する。導入にあたっては上流のコンサルティングを重視しているといい、「国内の顧客は、コア業務のワークフローをテンプレートに当てはめようとしても歓迎しない傾向があり、顧客の要望を聞きつつ、新しく構築するワークフローの価値を丁寧に説明することが重要だ」と語る。
導入後の活用支援にも力を入れている。構築したワークフローの改善や導入範囲の拡大につながっており、息の長いビジネスになっている。顧客の内製化を支援するサービスも数社に提供しているという。冨安取締役常務執行役員は「ノーコード/ローコード開発などで簡単に必要なアプリケーションやワークフローの構築や改善が可能で、顧客がDXに取り組む勇気を持てるプラットフォームだ」と強調する。
今後の展望としては、経営層へのアプローチを強化し、コンサルティングから入って経営課題を解決する手段としてサービスナウ製品を活用する。また、NTTデータの社内DXプロジェクト「Project GAIA」で、サービスナウのローコード開発プラットフォーム「App Engine」を活用して社内業務システムを統合した一元的なフロントエンドを構築しており、世界的にも最大規模の導入事例となっている。自社内で導入したノウハウを基に、大規模なプロジェクトを推進する構えだ。
グローバルでビジネスを展開するNTTデータグループへのノウハウの共有も進める。冨安取締役常務執行役員は「日本は(サービスナウビジネスが)先行しており、われわれの持つ知見をグローバルにも広げ、SAPと同じ規模のビジネスまで拡大したい」と意気込む。アクセンチュア
アクセンチュアは、ITSMの導入などの既存ビジネスに加え、デジタルワークフローを活用した顧客や従業員の接点変革、BPOサービスなどにビジネスを拡大している。テクノロジーコンサルティング本部の永田満・常務執行役員は「企業の個別システムに対する投資が進んできた中で、それを使う従業員や顧客の使い勝手の観点では、必ずしも最適化されてこなかった。この領域を変革したいという顧客は多い」と話す。
アクセンチュア 永田 満 常務執行役員
顧客や従業員接点の変革では、戦略コンサルを担う組織「Strategy&Consulting」や製品サービスの開発、顧客体験の高度化などを提供する「Song」などの部隊が最初に入ってロードマップの構築を推進し、さらにITサービスのデリバリ-を担う「Technology」が連携しているという。
BPOサービスを担う「Operations」がITの保守・運用などの業務を引き受ける場合も、サービスナウ製品を活用して業務効率化を図っている。永田常務執行役員は「複数のサービスグループを横断したチームをつくってサービスナウ製品の導入や活用を進めている」と話す。
Now Platformの優位性については「ワークフロー上で、複数のシステムと情報の受け渡しをする場合、豊富なAPIの活用や、ノーコード/ローコードによる簡易な開発ができる。例えばデータウェアハウスでデータを集約し、それを参照するためのシステムを新たにつくるような多大な投資をしなくても、大きな変革ができる。導入後にワークフローを柔軟にカスタマイズできることも魅力だ」と説明する。
ただ「個別の業務に適用したいという要望を聞くこともあるが、これをそのまま聞き入れると投資対効果が合わないことがあり、経営全体の最適化を進められない」と指摘。Now Platformを部門横断やグループ会社を横断して情報を一元管理したり、ワークフローを構築してDXを進めたりするためのエンジンと位置付け、「『ワンアクセンチュア』として、顧客接点のデザインからシステムの導入までを担う複数のサービスグループの連携をより強力にする必要がある」。Technologyに属するIT技術者だけでなく、コンサルタントも含めてサービスナウ製品の知見を蓄えていくことが重要になるとみている。
(取材・文/大畑直悠)

非IT領域でも活用が進む
サービスナウは、業務や業界別のワークフローなどを展開できる統合基盤のNow Platformを提供している。Now Platformは「単一データモデル」「単一アーキテクチャー」を特徴としており、グローバルでデファクトスタンダードとされる多くのシステムと連携するための豊富なAPIを備える。システムを横断したデジタルワークフローの構築が可能なことから、この基盤を「Platform of Platforms」として訴求しており、分散するシステムに対し、統合したユーザー体験(UX)などを提供することで、SoE(Systems of Engagement)の領域で企業がDXを加速できるとしている。また、ノーコード/ローコードによる開発環境も備えており、必要に応じて基盤上にアプリケーションを開発できる。Now Platformを通じて、ユーザーはすでに導入したシステムをリプレースしなくても、複数のシステムにまたがる業務プロセスやデータを統合してUXの向上を図れるほか、不足するアプリケーションを迅速に開発しながら最適なビジネスプロセスをアジャイル型で変革できるといった利点を得られる。
ServiceNow Japanの鈴木正敏社長は「日本はERPをはじめとしたSoR(Systems of Record)への投資が進んできた一方で、生産性の課題がなかなかブレイクスルーできなかった。業務全体の中でSoRが使われるのはあくまで一部で、メールなどを用いた調整業務に時間がかかったり、必要なシステムが散在しているため非効率性が生まれたりしている。当社はこのSoR外の課題の解決を支援できる」と訴える。統一的なデジタルワークフロー基盤の導入によって、顧客や従業員とさまざまなシステムとの接点が集約でき、アナログ業務が残る領域への適用によって顧客体験や従業員体験を向上させられるとする。
ServiceNow Japanのビジネスの近況としては、2023年は大型案件が大幅に増加したことなどから、売上高が前年比で2桁成長となった。従来から強みであったITサービスマネジメント(ITSM)に加え、IT資産管理、IT運用管理といったソリューションの導入が増加した。また、人事やフィールドサービス管理など、非IT領域でデジタルワークフローを構築し、業務を効率化するビジネスが活発化したことも好調の要因となった。
鈴木社長は「これまでは、Now Platformが持つポテンシャルが必ずしもフルで使われていたわけではなかったが、23年から状況が変わっている。顧客が経営の施策として、大規模なDXを実施すべくエンドツーエンドでプラットフォームを活用するロードマップを引くケースも増えている」と強調。さまざまなワークフローの構築に対応できるNow Platformの柔軟性が国内でも認知され、ユースケースの幅が広がっているとする。
パートナーの強みを基盤に取り入れる
ServiceNow Japanは、導入拡大に向けてパートナー戦略を重視している。現在、直接パートナー契約を結ぶ企業は120社ほど。パートナービジネスにおいても非IT領域の導入が入り口となることが増加しているほか、単機能での引き合いから、Now Platformを中核とした部門横断のプロジェクトへの拡大が進んでいるとして、パートナーを通じたソリューション展開の広がりにも期待する。鈴木社長は「当社のプロダクトのポートフォリオは拡大している。国内の顧客からの引き合いが高まっている中、これからはパートナーとしっかりと連携していくことが重要だ」と強調する。その上で「パートナーの幹部と話す中でもサービスナウ製品に精通した人材の育成は常にテーマに入っている。グローバルのプログラムやアセットを活用しながら、パートナーのスキルの蓄積を支援する体制も(日本法人の中に)整っている」とアピールし、パートナーに対するトレーニングの提供や、グローバルでのベストプラクティスの共有などで関係強化を進める構えだ。
新規パートナーの獲得を進める上で、鈴木社長は「各パートナーの強みを生かしたGo To Market戦略を推進したい」と語り、パートナーが持つ商材をNow Platform上のデジタルワークフローと組み合わせてシステムの利便性を向上する、といったかたちの協業を推進する方針。また、非ITの部分での注目度の高まりを受け、顧客接点の改善や従業員体験の向上に加え、経理や法務などのバックオフィス業務の改善に積極的に取り組むパートナーの獲得を目指す考えも示す。
鈴木社長は「国内の顧客にしっかりとわれわれのプロダクトを使ってもらい、求めるビジネスアウトカムを獲得してもらうために、(パートナーと連携しながら)必要なリソースを蓄えていくことが重要だ」と力を込める。
富士通
業種別オファリングの基盤として活用
富士通は、オファリング型サービスの提供で社会課題の解決を目指す事業モデル「Fujitsu Uvance」で、「Business Applications」領域の中核を担う商材としてサービスナウ製品を位置づけている。国内では、製造や金融、公共などの業界への導入が広がっており、ビジネスは好調に推移している。
グローバルソリューションBG(Business Group)グローバルビジネスアプリケーション事業本部ServiceNow事業部の山口肇・事業部長は「富士通が持つノウハウや知見を組み合わせ、単にITSMなどのソリューションを提供するだけではなく、業種別のオファリングを提供する際の基盤として活用されるケースも多い」と説明。その上で「Now Platformが備える豊富なAPIに加え、ノーコード/ローコードツールを活用しながらスピード感を持って開発し、だめなところを継続的に改善するアジャイル型のDXができることが魅力だ」と話す。
富士通は2024年5月、サービスナウとの戦略的パートナーシップを発表。Fujitsu Uvanceで、業種ごとの具体的な課題解決を目指す「Vertical」の領域で提供するオファリングを共同で開発する。両社はまず、製造業向けにエンジニアリングチェーンマネジメントとサプライチェーンマネジメントの業務全体を管理し、業務データの連携や業務プロセスを統合するプラットフォームを提供する。
24年後半には、「Fujitsu Uvance Kawasaki Tower」(川崎市)に「Fujitsu ServiceNow Innovation Center」を開設。両社による投資と人材派遣を進め、チームとしてオファリングの開発などを実施する。
山口事業部長は「各業界の顧客に課題を持ち寄ってもらい、サービスナウと富士通の技術を掛け合わせて解決に向けたアイデアをかたちにしていきたい。最初は小さくサービスを開発し、うまくいきそうであれば大きく展開していく」と説明する。
このほか、サービスナウ製品の有効活用を支援するソリューション「ServiceNow Impact」と、富士通のアドバイザリーサービス「Fujitsu Customer Advisory and Support Excellence」を組み合わせた新しいオファリングの提供も24年後半に予定し、顧客がサービスナウ製品の活用で適切に投資対効果を得られるように後押しする。
富士通は今後5年間で、ビジネス規模をグローバルで5倍にすることを目標に掲げる。ビジネスの拡大に伴い、コンサルティングやデリバリーのリソースの不足が課題になっているとし、今後はデリバリーのテンプレート化などに取り組む方針だ。
NEC
自社内で活用したノウハウを基に外販
NECは、自社をゼロ番目の顧客として外販につなげる「クライアントゼロ」の考え方の下、サービスナウ製品を社内DXで活用する中で得たノウハウを蓄積し、これを基にコンサルからデリバリー、運用支援を一貫して提供している。
サービスナウ製品の外販は20年に開始した。サービスビジネス統括部の嶋村寿・統括部長は「当初はライセンスを仕入れてNECブランドで外販していたが、2年ほど前から明確にサービスナウ製品が求められるようになり、サービスナウの名前を前面に出している」と話し、国内のサービスナウビジネスの市場は拡大しているとみる。
同社は、ServiceNow Japan、米Tanium(タニウム)日本法人と連携し、自社のIT環境のセキュリティーリスクを最小限にする「サイバーハイジーン」を強化する仕組みを構築。24年4月から稼働を開始し、約2カ月で導入を完了した。「Tanium Comply」で検出したぜい弱性を、デジタルワークフロー「ServiceNow SecOps-VR」で自動的に管理し、対応の進展状況を可視化する。この仕組みでぜい弱性の検知から管理者への通知までの時間を従来の7分の1以下に短縮するという。また、サーバーのOSのぜい弱性情報と併せて、システム構成や管理者情報を把握することで、初動対応の即時化や対処後のフォローが可能になる。24年10月からソリューション化し、外販する予定だ。
24年2月には、サービスナウのリーガルテック製品「Legal Service Delivery」の稼働を国内で初めて開始。これまでメールなどで行われていたさまざまな部門からの法務関連の問い合わせを一元的に管理できるようにした。また、仮想エージェントとナレッジベース記事で一般的な法的質問に対する回答を自動化したり、リーガルレポートとダッシュボードでインサイトをリアルタイムで提供する。同製品に関してはすでに外販の体制を整えている。
今後は導入後の活用支援に力を入れる考えで、顧客が投資対効果を得られるようにサポートを充実させるとともに、必要に応じて適用範囲の拡大やロードマップの再策定など支援。部門を横断した導入範囲の拡大にも取り組む。
嶋村統括部長は「Now Platformの強みは、システムとシステムの間のホワイトスペースにワークフローを構築してデジタル化できること」とし、「ITSMのようなもともとデジタル化されている領域の運用を効率化するだけではないため、IT部門だけではなく、全社的な戦略策定に関わるCDOへのアプローチが重要になる」と話す。
NTTデータ
国内の知見をグローバルに広げる
NTTデータは、21年に外販を担う組織「ServiceNowビジネス推進室」を立ち上げ、その後「ServiceNowビジネス統括部」に格上げした。上流のコンサルから実装、サポートまでを一貫して提供している。取締役常務執行役員の冨安寛・テクノロジーコンサルティング&ソリューション分野長は「現在、協力会社も含めれば300人ほどの専門人材がおり、協力会社もサービスナウビジネスの立ち上げ当初からスキルを磨いているため、熟練したスキルを持つ組織だ」とアピールする。
冨安取締役常務執行役員は、ITSMだけではなく、従業員や顧客向けのワークフローなどバランス良く導入実績があると説明する。導入にあたっては上流のコンサルティングを重視しているといい、「国内の顧客は、コア業務のワークフローをテンプレートに当てはめようとしても歓迎しない傾向があり、顧客の要望を聞きつつ、新しく構築するワークフローの価値を丁寧に説明することが重要だ」と語る。
導入後の活用支援にも力を入れている。構築したワークフローの改善や導入範囲の拡大につながっており、息の長いビジネスになっている。顧客の内製化を支援するサービスも数社に提供しているという。冨安取締役常務執行役員は「ノーコード/ローコード開発などで簡単に必要なアプリケーションやワークフローの構築や改善が可能で、顧客がDXに取り組む勇気を持てるプラットフォームだ」と強調する。
今後の展望としては、経営層へのアプローチを強化し、コンサルティングから入って経営課題を解決する手段としてサービスナウ製品を活用する。また、NTTデータの社内DXプロジェクト「Project GAIA」で、サービスナウのローコード開発プラットフォーム「App Engine」を活用して社内業務システムを統合した一元的なフロントエンドを構築しており、世界的にも最大規模の導入事例となっている。自社内で導入したノウハウを基に、大規模なプロジェクトを推進する構えだ。
グローバルでビジネスを展開するNTTデータグループへのノウハウの共有も進める。冨安取締役常務執行役員は「日本は(サービスナウビジネスが)先行しており、われわれの持つ知見をグローバルにも広げ、SAPと同じ規模のビジネスまで拡大したい」と意気込む。
アクセンチュア
サービスグループ間で連携を強化
アクセンチュアは、ITSMの導入などの既存ビジネスに加え、デジタルワークフローを活用した顧客や従業員の接点変革、BPOサービスなどにビジネスを拡大している。テクノロジーコンサルティング本部の永田満・常務執行役員は「企業の個別システムに対する投資が進んできた中で、それを使う従業員や顧客の使い勝手の観点では、必ずしも最適化されてこなかった。この領域を変革したいという顧客は多い」と話す。
顧客や従業員接点の変革では、戦略コンサルを担う組織「Strategy&Consulting」や製品サービスの開発、顧客体験の高度化などを提供する「Song」などの部隊が最初に入ってロードマップの構築を推進し、さらにITサービスのデリバリ-を担う「Technology」が連携しているという。
BPOサービスを担う「Operations」がITの保守・運用などの業務を引き受ける場合も、サービスナウ製品を活用して業務効率化を図っている。永田常務執行役員は「複数のサービスグループを横断したチームをつくってサービスナウ製品の導入や活用を進めている」と話す。
Now Platformの優位性については「ワークフロー上で、複数のシステムと情報の受け渡しをする場合、豊富なAPIの活用や、ノーコード/ローコードによる簡易な開発ができる。例えばデータウェアハウスでデータを集約し、それを参照するためのシステムを新たにつくるような多大な投資をしなくても、大きな変革ができる。導入後にワークフローを柔軟にカスタマイズできることも魅力だ」と説明する。
ただ「個別の業務に適用したいという要望を聞くこともあるが、これをそのまま聞き入れると投資対効果が合わないことがあり、経営全体の最適化を進められない」と指摘。Now Platformを部門横断やグループ会社を横断して情報を一元管理したり、ワークフローを構築してDXを進めたりするためのエンジンと位置付け、「『ワンアクセンチュア』として、顧客接点のデザインからシステムの導入までを担う複数のサービスグループの連携をより強力にする必要がある」。Technologyに属するIT技術者だけでなく、コンサルタントも含めてサービスナウ製品の知見を蓄えていくことが重要になるとみている。
米ServiceNow(サービスナウ)が提供するクラウドサービスの存在感がIT市場で高まっている。日本法人のServiceNow Japanはパートナーを重視した戦略を打ち出し、パートナー各社も販売体制の強化や連携ソリューションの開発に取り組む。さまざまなシステムを“つなぐ”統合基盤として、DXを一歩先に進める役割が期待されている「Now Platform」を中心とした市場の動きを紹介する。
(取材・文/大畑直悠)
また、ノーコード/ローコードによる開発環境も備えており、必要に応じて基盤上にアプリケーションを開発できる。Now Platformを通じて、ユーザーはすでに導入したシステムをリプレースしなくても、複数のシステムにまたがる業務プロセスやデータを統合してUXの向上を図れるほか、不足するアプリケーションを迅速に開発しながら最適なビジネスプロセスをアジャイル型で変革できるといった利点を得られる。
ServiceNow Japan 鈴木正敏 社長
ServiceNow Japanの鈴木正敏社長は「日本はERPをはじめとしたSoR(Systems of Record)への投資が進んできた一方で、生産性の課題がなかなかブレイクスルーできなかった。業務全体の中でSoRが使われるのはあくまで一部で、メールなどを用いた調整業務に時間がかかったり、必要なシステムが散在しているため非効率性が生まれたりしている。当社はこのSoR外の課題の解決を支援できる」と訴える。統一的なデジタルワークフロー基盤の導入によって、顧客や従業員とさまざまなシステムとの接点が集約でき、アナログ業務が残る領域への適用によって顧客体験や従業員体験を向上させられるとする。
ServiceNow Japanのビジネスの近況としては、2023年は大型案件が大幅に増加したことなどから、売上高が前年比で2桁成長となった。従来から強みであったITサービスマネジメント(ITSM)に加え、IT資産管理、IT運用管理といったソリューションの導入が増加した。また、人事やフィールドサービス管理など、非IT領域でデジタルワークフローを構築し、業務を効率化するビジネスが活発化したことも好調の要因となった。
鈴木社長は「これまでは、Now Platformが持つポテンシャルが必ずしもフルで使われていたわけではなかったが、23年から状況が変わっている。顧客が経営の施策として、大規模なDXを実施すべくエンドツーエンドでプラットフォームを活用するロードマップを引くケースも増えている」と強調。さまざまなワークフローの構築に対応できるNow Platformの柔軟性が国内でも認知され、ユースケースの幅が広がっているとする。
(取材・文/大畑直悠)

非IT領域でも活用が進む
サービスナウは、業務や業界別のワークフローなどを展開できる統合基盤のNow Platformを提供している。Now Platformは「単一データモデル」「単一アーキテクチャー」を特徴としており、グローバルでデファクトスタンダードとされる多くのシステムと連携するための豊富なAPIを備える。システムを横断したデジタルワークフローの構築が可能なことから、この基盤を「Platform of Platforms」として訴求しており、分散するシステムに対し、統合したユーザー体験(UX)などを提供することで、SoE(Systems of Engagement)の領域で企業がDXを加速できるとしている。また、ノーコード/ローコードによる開発環境も備えており、必要に応じて基盤上にアプリケーションを開発できる。Now Platformを通じて、ユーザーはすでに導入したシステムをリプレースしなくても、複数のシステムにまたがる業務プロセスやデータを統合してUXの向上を図れるほか、不足するアプリケーションを迅速に開発しながら最適なビジネスプロセスをアジャイル型で変革できるといった利点を得られる。
ServiceNow Japanの鈴木正敏社長は「日本はERPをはじめとしたSoR(Systems of Record)への投資が進んできた一方で、生産性の課題がなかなかブレイクスルーできなかった。業務全体の中でSoRが使われるのはあくまで一部で、メールなどを用いた調整業務に時間がかかったり、必要なシステムが散在しているため非効率性が生まれたりしている。当社はこのSoR外の課題の解決を支援できる」と訴える。統一的なデジタルワークフロー基盤の導入によって、顧客や従業員とさまざまなシステムとの接点が集約でき、アナログ業務が残る領域への適用によって顧客体験や従業員体験を向上させられるとする。
ServiceNow Japanのビジネスの近況としては、2023年は大型案件が大幅に増加したことなどから、売上高が前年比で2桁成長となった。従来から強みであったITサービスマネジメント(ITSM)に加え、IT資産管理、IT運用管理といったソリューションの導入が増加した。また、人事やフィールドサービス管理など、非IT領域でデジタルワークフローを構築し、業務を効率化するビジネスが活発化したことも好調の要因となった。
鈴木社長は「これまでは、Now Platformが持つポテンシャルが必ずしもフルで使われていたわけではなかったが、23年から状況が変わっている。顧客が経営の施策として、大規模なDXを実施すべくエンドツーエンドでプラットフォームを活用するロードマップを引くケースも増えている」と強調。さまざまなワークフローの構築に対応できるNow Platformの柔軟性が国内でも認知され、ユースケースの幅が広がっているとする。
この記事の続き >>
- パートナーの強みを基盤に取り入れる
- 富士通 業種別オファリングの基盤として活用
- NEC 自社内で活用したノウハウを基に外販
- NTTデータ 国内の知見をグローバルに広げる
- アクセンチュア サービスグループ間で連携を強化
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