──2024年には「kintone」に関してエンタープライズや大規模導入向け施策、新たなパートナー制度を開始した。状況はどうか。
予想以上の手応えだ。企業の情報システム部門の戦略に正面から組み込まれていると実感している。システム部門がIT人材の不足に悩む中で、DXのためにノーコードツールの導入を検討した結果、機能面、信頼性、拡張性が十分だとして、候補として残っているのではないだろうか。作成したアプリケーションやアクセス権の管理、パフォーマンスモニターといったガバナンス系の機能が充実している点も、入り込めている理由だと受け止めている。
青野慶久
代表取締役社長
一方で、(kintoneは)現場で使うものというイメージがあり、僕らもそれをうたってきたところがあるので、イメージを変えたい。ブランディングや販売体制を整える必要があるだろう。新たなパートナー制度の反応も上々だが、層が薄い面がある。大規模にデリバリーできるパートナーを開拓しなければならない。
大規模導入の促進に向けた新たな取り組みの一つに「セミオーダー」がある。ある程度パッケージ化されたものを、顧客に合わせてカスタマイズできる仕組みだ。メール共有オプションや掲示板といったグループウェア的な使い方も訴求し、「みんなでkintone」のような流れを促したい。
日本を「デジタル先進国」に戻す
──24年末にはkintoneで生成AI関連の新機能を発表した。
kintoneにデータを蓄えておけば、設定するだけで生成AIが質問に答えてくれるようになる。社内でもITヘルプデスクなど複数のシステムが立ち上がっている。会社の中で、ノーコードで簡単に生成AI機能がつくれるのは、衝撃的なユーザー体験になり、生成AIがより身近になるだろう。パートナーもkintone上で(生成AIを使った)新たなビジネスができるようになる。kintoneは皆さんのビジネスプラットフォームであり、サイボウズはコアに集中し、周辺はパートナーやお客様に任せる姿勢は変わらない。
──将来の事業拡大を見据えた方針として掲げる、3カ年の全社スローガン「25BT」(2025 and go Beyond with Trust)は、25年が最終年となる。進捗と25年の抱負を聞く。
取り組みたかったテーマは大体進み、ゴールも見えてきた。一つはインフラの入れ替え。既にデータベースまで置き換えが済み、ストレージなどが残るが、ラストスパートの段階だ。課題のエンタープライズ市場も手応えがよく、期待ができる。一番大きなテーマはグローバルだ。26年以降も時間はかかると思うが、着実に取り組んでいく。反応が良い国や都市に絞って一気に立ち上げても良いと考えている。グローバルで成功事例をつくりたい。
やはり日本のDXを進めたいとの思いがある。IT投資をしてこなかったからこそ、ノーコードがこの国にとって大きな武器になる。この国をもう一度、デジタル先進国に戻したい。