Special Feature

ウラノス・エコシステムに商機あり SIerやソフト開発、通信キャリアが積極関与

2025/05/22 09:00

週刊BCN 2025年05月19日vol.2059掲載

 企業横断のデータ共有・システム連携を通じて脱炭素や循環経済の実現に役立てる日本版データスペース「ウラノス・エコシステム」に、SIerやソフトウェア開発会社、通信キャリアが積極的に関わってビジネスを伸ばそうとしている。ウラノスは経済産業省が推進し、欧州のデータスペースとの相互接続を念頭において設計。実用化の面では、欧州の規制に対応した自動車の蓄電池のトレーサビリティーの分野が先行しており、今後は社会インフラ管理など複数の企業が絡む領域や、化学や電気・電子といった業界ごとの規制対応などの用途で普及が期待されている。
(取材・文/安藤章司)
 

データスペースは「連邦型」

 データスペースとは、特定の基盤にデータを集約・管理するのではなく、複数の組織がそれぞれで利用しているシステムをつなぎ、データを共有する仕組みである。ウラノス・エコシステムは、サプライチェーン全体での二酸化炭素の排出履歴を共有するといった欧州のデータ共有のあり方を参考に、日本でも同様のデータスペースを構築する取り組みとなる。

 脱炭素を例に挙げると、企業単体で排出する二酸化炭素の量だけでなく、世界の自動車業界全体の排出量を取りまとめる際に、データスペースは各国のデータを共有する場としての役割を担う。
 
経済産業省
緒方 淳 室長

 どこから資材を調達してどこへ販売したかなど個別企業のデータは各企業で保持しつつ、データスペースで開示する範囲を各企業の判断で決め、双方合意した相手とだけデータを共有できるのが最大の特徴だ。経済産業省の緒方淳・商務情報政策局情報経済課アーキテクチャ戦略企画室長は「“データ主権”を保ちながらデータを流通できる」と表現する。

 特定の基盤上にデータを集約する「中央集権型」の共有の仕組みでは、一度出したデータは企業の手から離れてどこまでも共有されてしまう恐れがある。データスペースは「連邦型」で、各社がデータの管理権限を保持したままデータ交換が可能になる。従来のEDI(電子データ交換)などの仕組みにありがちだった特定の企業にデータが集まり、一度出したデータが際限なく共有されてしまう懸念を払拭する(図参照)。
 

 ウラノスでの運用事例においては、自社から見てサプライチェーンの直前、直後に当たる、直接取引する関係の相手にのみ「双方合意の上で開示し、それ以外の会社からはデータの中身が見えないように」(津田通隆・情報経済課アーキテクチャ戦略企画室室長補佐)した上でデータを共有することが多いという。もちろん、これだけではデータの全体像は見えないものの、この前後のつながりをより広げていくことで、大規模なデータエコシステムが完成するわけだ。
 
経済産業省
津田通隆 室長補佐
この記事の続き >>
  • NTTデータ 自動車の蓄電池 トレサビを運用
  • dotD 個別アプリ開発にチャンスあり
  • NTTコミュニケーションズ 海外との相互接続の需要をつかむ

続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。

(登録無料:所要時間1分程度)

新規会員登録はこちら(登録無料)

会員特典

詳しく見る
  1. 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
  2. メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
  3. イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
    SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
  4. 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!
  • 1

関連記事

NTTデータ、「SmartAgent」の第1弾 生成AIで業務効率化を推進

NTTコミュニケーションズ、生成AIの回答精度、安全性を向上 二つの要素技術を発表

NTTコミュニケーションズ、情報収集やアラート対応を効率化 LLM活用のセキュリティー運用支援ソリューション

外部リンク

NTTデータ=https://www.nttdata.com/jp/ja/

NTTコミュニケーションズ=https://www.ntt.com/