Special Feature
AI時代にSASが示す新たな価値は データ活用の老舗が描く国内戦略
2025/08/28 09:00
週刊BCN 2025年08月25日vol.2072掲載
(取材・文/藤岡 堯)

企業の意思決定を支える
SASは創業時から長年にわたり、統計解析やBIツールのベンダーとして信頼を得てきた。現代のビジネスでは「データアナリティクス」という言葉は広く浸透しているが、SASはアナリティクス分野のリーディングカンパニーとして、時代に先駆けて企業のデータ活用を支え続けている。一方、日本法人の手島主税社長は「アナリティクスの真の意味が伝わっていない」と語る。一般的にアナリティクスは「分析」と訳されるが、SASの定義では「人が意思決定にまでたどり着けた状態」(手島社長)であるという。

手島主税 社長
手元の辞書を引くと、分析とは“複雑な事柄を一つ一つの要素や成分に分け、その構成などを明らかにする”ことだと記されている。ただし、データの要素や性質を分類・整理する行為自体は価値を生まない。結果から人間が意味を読み取り、行動につながる意思決定に至らなければ、アナリティクスとは呼べないということだろう。
この考え方は、AI時代においても変わらない。むしろ、生成AIの登場により、その重要性は増しているはずだ。「データは価値を生み出さない。そこに意味合いを持たせることによって、ようやく意思決定のためのインテリジェンスが生まれる」(手島社長)のである。
データとAIを組み合わせたアナリティクスの支援に向けて、現在訴求に取り組んでいるのが、データ・AIプラットフォームと位置付ける「SAS Viya(ヴァイヤ)」だ。Viyaはデータのインポートや準備、統計解析処理、機械学習、AIモデルや分析用モデルの構築、これらを使った本番分析環境のデプロイメント、モデルや本番環境の運用管理・監視、さらには意思決定プロセスの自動化といった機能も備え、データアナリティクスのプロセスを単一基盤上で実行できる。接続するデータソースは多様な製品に対応しており、利用環境は大手パブリッククラウドや、SASによるフルマネージドクラウド、オンプレミスと場所を問わない。
SASが50年にわたって培ってきた知見も反映されており、分析処理のためのプロシージャー、収益管理や品質管理、金融領域の不正検知といった業務ごとに事前定義された分析モデルを活用できる。加えて、ISVをはじめとしたパートナーが構築したモデルや、外部企業が提供する多種多様なオルタナティブデータとの連携も可能だ。
基盤上で開発できる分析モデルは、顧客の課題やニーズに応じて、AIと統計を組み合わせられる。AIは大量のデータから相関関係を見出すことを得意とするが、その背後にある要因を説明することは苦手とされる。一方で統計は数式に基づき、相関関係が成り立つ要因を検証することが可能だ。双方の強みを生かし、意思決定により有用な精度を確保していると言えるだろう。
最近では多くの企業がデータレイクやデータウェアハウスを導入しているものの、集まり続ける大量のデータをうまく整理できず、有効利用ができないといった課題も聞こえてくる。SASは、ビジネスの目的から逆算してデータの整理・保存方法を設計し、最終的な分析モデル構築まで効率的に進められるパイプラインの設計支援も手掛けている。手島社長は「顧客が有するデータを、ビジネス価値を生み出すレイヤーにまで引き上げることがSASの仕事だ」と話す。
日本法人のビジネスは「過去最高の規模で伸びている」(手島社長)と好調だ。既存のSASユーザーの中では、これまで企業内の一部でしか使われていなかったデータセットをAIによって有効に利用する動きが広まっているという。他方で、新規ユーザーも着実に取り込んでいる。今後はデータ人材が不足している企業に向けて、標準化したデータカタログのようなものを、パートナーと協力して展開する考えを示す。
国内のパートナー戦略は、チャネルを整理している段階だとする。先述したISVやオルタナティブデータを扱う企業のほか、アナリティクス支援を得意とするコンサルティング会社、データレイヤーの構築やシステムの運用・保守に強みのあるSIerといった多様なパートナーが存在する中で、それぞれの得意領域や役割に応じたエコシステムを検討している。SIerに関しては、SIだけでなくコンサルティングスキルを養えるようSASとしてサポートしたいとする。手島社長は「市場に合わせたパートナー戦略を推進したい」と語る。
- パートナーとの連携強化に意欲 米国本社のチャネルセールス担当VP
- 全員が「勝利」し、成功する
- 共に日本市場に変化をもたらす
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