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<ビジネスプリンタ・スキャナ特集> 新規市場の開拓で市場のすそ野を広げるメーカーの戦略とは 後編

2007/09/24 19:56

週刊BCN 2007年09月24日vol.1204掲載

大容量スキャナで培ったノウハウを投入し
高スペックで信頼性の高い小容量スキャナを提供

■さまざまな要因により市場全体の中・小容量へのシフトが加速

 現在のドキュメントスキャナ市場を見ると、大容量(ハイボリューム)スキャナが成熟し、中容量(ミッドボリューム)スキャナや小容量(ローボリューム)スキャナ市場が活性化している。この要因のひとつとして、これまで高価で購入できなかったスキャナが、比較的安価で流通するようになったことが考えられる。コダックは、もともとは大容量スキャナのリーディングカンパニーとして知られ、高い支持を獲得している。しかし、「大容量スキャナは、これから限定した分野になっていく。今後は、中・小容量スキャナのニーズが高くなる」(ドキュメントイメージング アンド ビジネスプロセスサービス事業部 企画部・下嶋秀樹部長)という見方から、中容量スキャナに進出する体制を整えた。

 同社は、現状のスキャナ市場が中容量や小容量市場に移行している原因について、次のように分析している。「これまで多くの企業は、ビジネスをすすめる上で紙(帳票)を動かしてビジネスを行ってきた。地方から郵送された紙は中央に集められ、そこでスキャンして電子データ化されていた。しかし昨今、ネットワークの普及というインフラの改善に加え、輸送コストや時間の削減、さらに個人情報保護という観点から、紙を動かすのではなく、その場で電子データ化するというシステムをとる企業が増えてきている」(下嶋部長)。

 また、従来FAXを送っていたケースでも、スキャンした電子データを電子メールに添付し送付するという使い方も一般化している。これは、スキャンしたデータをカラーのままで送れば「白黒のFAXよりもわかりやすくなる」というメリットがあるためだ。

■小型化しても基本性能は落とさず、作業効率を第一に考えた製品を投入

 こうした背景から、ドキュメントスキャナ市場全体を通じて「小容量シフト」が加速化しているという。今後、さらに小容量スキャナ市場のニーズは増加していくことが予想されている。「中小規模企業の場合、複合機でスキャンするというケースが多い。しかし1日100枚をスキャンするようになれば、専用機を使ったほうが効率的。ある程度のボリュームの紙をスキャンする場合にはドキュメントスキャナが最適」と、下嶋部長は語る。

 下嶋部長は、「お客様から求められる小型スキャナの要件は、“サイズ”“価格”“使いやすさ”の3点。この部分については、他社も非常に努力している。当社の場合、さらに大容量スキャナで培ったノウハウを小容量スキャナにつぎ込み、基本性能を落とさないという取り組みに注力し、差別化を行っていく」と、同社の施策について語った。小型化してもスキャン速度を落とさないということと、スキャンした際の画質を落とさないこと、また、さまざまな厚さの紙をスキャンする時でも紙詰まりなどが起きないこと。この同社の「こだわり」に、長年培ってきたノウハウが生かされている。

 「こういったことはなかなか表に出にくいが、効率よく仕事をする上でとても重要なポイントになる。たとえば、紙詰まりは非常に効率を落としてしまうことになるが、当社の製品はカーボン紙や薄い紙が混ざっていてもスムーズにスキャンできる」と、下嶋部長。このこだわりがユーザー満足度の向上に寄与し、高い信頼の獲得につながっていくのだろう。「内部統制の強化などで電子化に対するニーズは必ず高まる。ソリューションと組み合わせることで、より流通しやすくなる」との下嶋部長の言葉通り、一般的にドキュメントスキャナ市場は、今年15-20%伸長する市場といわれている。同社は、その中で「それ以上に伸ばしていく」ために、製品の品質を向上させることはもちろん、販売代理店を増やし、小容量スキャナが流通しやすい販売体制を整えていくとのことだ。中容量および小容量スキャナ市場における、今後の同社の活躍に期待したい。

コダック=http://www.kodak.co.jp/go/business/

(週刊BCN 2007年9月24日号掲載)

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