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<ネットワークソリューション特集> エンタープライズは横ばいの状況が続くが 中堅・中小企業向けのネットワーク市場が急速に拡大 後編

2007/12/17 19:56

週刊BCN 2007年12月17日vol.1216掲載

ディーリンクジャパン
セキュリティや低消費電力など、ニーズを先取り
「D-Link Unified Endpoint Security」をキーワードとして展開

■ユーザーの課題を解決するソリューションとして提供

 現在、ネットワークには機能性・価格・ユーザビリティなどはもちろん、「セキュリティ」が求められている。確かにネットワークは企業の生産性を向上させているが、ウイルスやワームの大量感染や個人情報・機密情報などの情報漏えいに悪用されるケースも増えているからだ。

 ディーリンクジャパンでは『D-Link Unified Endpoint Security』をキーワードとして、ネットワークのエンドポイントでセキュリティを実施し、より高度なセキュリティ対策を可能にしている。内部ネットワークへログインする際のデバイスやユーザー認証、セキュリティ検疫、アクセス制御、不正通信の検知、制御などのほか、UTM/ファイアウォール「DFL」シリーズと連携することで、LANユーザーからの不正なトラフィックを検知し、送信元PCの通信を遮断するネットワーク自己防御機能「D-Link Zone Defense」や複数のスイッチを単一のスイッチとして利用できるxStackテクノロジーなど、ユーザーの課題を解決するソリューションを提供している。

■利用シーンを想定し、製品の企画・開発を行う

 「日本では、島ハブ環境での利用が進んでいます。そのため、デスクトップで使えるセキュリティスイッチが必要だと思いました。そこで企画したのが『DGS-3200-10』です」と、技術本部の鎌苅康敬マネージャーは語る。

 『DGS-3200-10』は「Interop Tokyo 2007」の「Best of Show Award」インフラ構築製品(Edge)分野でグランプリを獲得し、市場からも注目されている製品である。

 『DGS-3200-10』は、5万円程度で販売されるコンパクトスイッチだが、多くの検疫や認証方式に対応している。「非常に多くのファンクションを搭載する必要があるため、同サイズのスイッチよりもCPUやメモリなどを必要とします。備品で購入いただける価格帯ですが、ファンクション的には“DGS-3400”が持っていたものをエンハンスしているので、筐体と中身がアンバランスな製品とも言えるでしょう」(鎌苅マネージャー)。

 『DGS-3200-10』は、デスクトップでの利用を想定しているため、サイズやファンレス、排熱といったハードウェアの設計で頭を悩ませたという。

 「ファンクションは作り込めばいいですが、サイズや周りへの影響は無視できませんからね。非常に苦労しました。しかし、それがあったからこそ、付加価値の高い製品ができたのだと思います」(鎌苅マネージャー)とのことだ。

■対象を広げ、多くの市場で導入が進む

 『DGS-3200-10』は非常に多機能だが、導入しやすい価格帯であるため、ギガビットスイッチが欲しいといったユーザーのほか、VLAN(Virtual Local Area Network)を構築したいユーザーの選択肢にも入る。また、ファンレスなので静かな事務所でもストレスなく利用できる。

 「一貫してお客様の視点に立った製品開発をしています。そのような意味で『DGS-3200-10』は、非常に対象の広い製品となっています。官公庁や文教市場、企業など、多くの市場で導入されています」(鎌苅マネージャー)とのことだ。

 ディーリンクジャパンは、セキュリティや設置環境などユーザーのニーズを先取りし、製品を投入し続けている。ブランド認知も進んでおり、より販売しやすい環境も整いつつある。同社は、ユーザーの立場に立脚した製品で、今後も市場を拡大していくことだろう。

ディーリンクジャパン=http://www.dlink-jp.com/
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バラクーダネットワークスジャパン
30万円台からという、業界を覆す驚異の価格を実現
セキュリティの実績を生かして開発された負荷分散アプライアンス

■セキュリティにも配慮 IPSという付加価値

 バラクーダネットワークスジャパンは、これまでセキュリティに軸足を置き、電子メール、ウェブブラウジング、インスタントメッセージの3カテゴリを柱としてきた。特に、スパムファイアウォールソリューションの大手プロバイダとして知られ、ブランド認知も進んでいる。

 現在は、新しい市場の開拓を目指し、同社ではロードバランサー市場に製品を投入している。ロードバランサー市場は、導入・運用コストが高い製品が市場シェアを占めており、大規模企業を中心に市場を拡大している。しかし、中堅・中小規模企業でもIT化が進み、多くのサーバーが導入されている今、企業システムの安定性・信頼性・パフォーマンスを向上させるためにロードバランサーを導入したいという中堅・中小規模企業からのニーズが顕著になりつつある。現在、このニーズを満足させる製品は、まだ市場に登場していない。そこでバラクーダネットワークスジャパンは、ロードバランサーを必要とする中規模組織に最適な『Barracuda Load Balancer(バラクーダロードバランサー)』をリリースした。

 『Barracuda Load Balancer』は、L4/L7に対応したロードバランサーで、高可用性とセキュリティ要件を実現すべく設計されている。サーバー負荷分散機能に加え、ネットワーク不正侵入防止(IPS)機能を一体化させている。

 ロードバランサーは、サーバーの負荷分散をするため、サーバーの前に設置される。ロードバランサーにIPSを搭載することで、サーバートラフィックを負荷分散するだけでなく、セキュリティレベルを高めることができる。長年にわたってセキュリティ事業を続けている中で培ってきたノウハウが、ロードバランサーというネットワーク機器でも存分に投入されているということがわかる。

■中堅規模組織でも手が届く負荷分散装置

 『Barracuda Load Balancer』は、購入1年目の保守費用込みで36万5000円(税別)から提供され、『Barracuda Spam Firewall』『Barracuda Web Filter - featuring Spyware Protection』などの同社製品とバランスのとれた価格帯としている。これまでのローエンドのロードバランサーは、安くとも80万円超で販売されていた。今回の製品は、それを大きく下回る30万円台での提供となり、冗長化構成でもローエンド製品と同価格帯となる。実は『Barracuda Load Balancer』は「コスト面・運用面で手軽に導入できるロードバランサーがない」という中堅・中小規模企業の声に応えて企画された製品。そのため、機能・価格・ユーザビリティなど、ユーザーニーズを満足させる製品となっている。バラクーダネットワークスジャパンは、この『Barracuda Load Balancer』を活用し、競合のいない領域を新しく開拓する戦略だ。米バラクーダネットワークスは米国内にて『Barracuda Load Balancer』を日本に先駆け発売したが、約半年で960台を超える出荷実績を記録している。 バラクーダネットワークスジャパンは、これまでのロードバランサー市場とは異なる市場の開拓を狙っている。『Barracuda Load Balancer』は、性能・ユーザビリティといった付加価値を提供しながら、圧倒的なコストメリットを有する。専門の技術者を抱えていないサービスベンダーにとっても扱いやすく、提案しやすい商材となる。ネットワークの領域に踏み出したバラクーダネットワークスジャパンの挑戦に、多くの企業が期待を寄せている。

バラクーダネットワークスジャパン=http://www.barracuda.co.jp/

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アイ・オー・データ機器
LANDISK Homeのコンセプトを引き継ぎ さらに小型化し、使い勝手も向上させた「HDL-GS」

■従来機と比べ約27%小型化

 多くの企業で、生産性の向上を目指しIT投資が進んでいる。今や、あらゆる業務システムがネットワークで接続され、情報が蓄積・活用されている。また、それらの情報の信頼性を向上させるため、バックアップやディザスタリカバリ、アーカイブといったニーズも顕著で、ストレージに対する要求も増加の一途をたどっている。

 一方、コンシューマ市場においても、ストレージへの要求が高まっている。コンシューマ市場の場合、業務システムのデータではなく、映像、写真、音楽系デバイスのIT化が進んでおり、それらのデータの蓄積場所としてストレージが注目されているのである。

 もちろん、このニーズにあった大容量の外付けハードディスクなどはすでに市場に登場し、認知を獲得している。しかし、複数台のPCやネットワーク機器を利用している家庭も増えていることから、今、特にネットワークハードディスクが注目されている。

 「LANDISK」シリーズを提供するアイ・オー・データ機器は、法人向けから家庭まで幅広い市場で、確固たる信頼を獲得している。同社では、2007年11月、家庭向けに特化した「LANDISK Home HDL-GS」シリーズをリリースした。「LANDISK Home HDL-GS」は、本体に電源やハードディスク、ファンを内蔵しており、従来提供してきた「LANDISK HDL-F」シリーズと比べ、約27%の小型化を実現。置き場所を選ばないスタイリッシュなネットワークハードディスクとなった。

■デジタルカメラとの親和性が向上

 特に、デジタルカメラとの親和性が向上している。「LANDISK Home HDL-GS」本体背面にあるUSBポートにデジタルカメラやUSBフラッシュメモリーを挿入するだけで、そこに保存されている写真が自動で取り込まれるのだ。携帯電話で撮影した写真も、カードリーダー/ライター経由で取り込むことができる。取り込み時には新しい写真のみを取り込み保存できるため、重複することなくデータを転送する。取り込んだ写真は、フォトアルバム機能を使って簡単に整理することができる。アルバムはDLNA対応のテレビのほか、PC、ブラウザ機能を持った家庭用ゲーム機などでも利用でき、ユーザビリティも高い。

 さらに、大切な写真を保管しておきたいというニーズにも応える。デジタルカメラで撮影したパーソナルな写真は、失うことができない大切なデータであることから、バックアップしたいというニーズが高い。「LANDISK Home HDL-GS」にUSB接続の外付けハードディスクドライブを接続することで、「LANDISK Home HDL-GS」内に保存されているデータをバックアップすることができる。

 また、フォトアルバム機能で作成したアルバム情報もバックアップされるので、「LANDISK Home HDL-GS」に障害が発生し、新しい「LANDISK Home HDL-GS」を購入した場合も、アルバム情報をそのまま復元することもできる。

 さらに、音楽ファイルや映像などを楽しめる機能も豊富だ。 「LANDISK Home HDL-GS」にはiTunesサーバー機能が搭載されており、iTunesでダウンロードした音楽やCDからリッピングした音楽を保存しておくことで、ネットワーク上にあるPCのiTunesで音楽ファイルが共有できる。また、東芝が提供しているハイビジョン液晶テレビ「REGZA Z3500」シリーズと接続すれば、手軽にハイビジョン録画・再生が可能になる。「REGZA」のリモコンで録画操作ができるのも特長的だ。

 今後、ストレージはデジタル家電との融合が進むことで、さらに市場を広げることになる。信頼性・稼働実績の多いアイ・オー・データ機器は、今後も市場を拡大していくだろう。今後の同社の活躍に注目したい。

アイ・オー・データ機器=http://www.iodata.jp/
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もはやネットワークは社会インフラに 「デジタルホーム」市場の立ち上がりも加速

家庭でもネットワークが浸透 デジタルホームの躍進

 ネットワークは、企業だけでなく家庭でも張り巡らされており、もはや社会インフラとなりつつある。これまでネットワークは、企業活動を支えるインフラとして、多くの業務アプリケーションをつないできた。しかし最近では、インターネットやブロードバンドの浸透によって家庭でもネットワークが敷設されるようになり、IP電話なども一般的に利用されるようになった。また、家庭用ゲーム機にも無線LANが標準で搭載され、ネットワーク接続を前提とした新しい提案が次々と登場している。ネットワークを介して対戦相手とゲームを楽しむことも、すでに現実に行なわれている。

 また、デジタル家電の浸透も早く、PCと家電の融合による「デジタルホーム」市場が形成されつつある。HDDレコーダーや携帯オーディオプレーヤーの躍進は、ここであらためて説明する必要もないだろう。

データの保存場所としてストレージに注目

 ハイビジョン放送などの大容量コンテンツをホームネットワークで視聴する時代は、すぐそこまできている。そこで注目されているのが、ネットワークハードディスクなどのストレージである。デジタル家電は、デジタルデータを活用し、映像や音楽を楽しむことができる。こういった機器が増えると、データを管理する場所が必要になる。

 また、高速な無線LANなども注目されている。大量のデータを効率よく高速に転送できなければ、ハイビジョン放送は快適に視聴できない。しかし、家庭内にケーブルを敷設するのは現実的ではない。無線LANなら、ケーブル配線の煩わしさからも解放され、自由度の高い設置が可能だ。実際、このニーズを狙った製品を投入しているベンダーは増えている。最近では、ゲーム機専用の無線LANのアクセスポイントなども提供され始めているようだ。

 このように、家庭でもネットワークが張り巡らされるようになると、当然のようにネットワークハードディスクを活用し、効率よくデータを活用したいというニーズが発生する。この市場の声に応える形で、現在も数多くの製品が市場に投入されている。また、コンシューマ市場のみならずSOHOや小規模企業などでもこのようなネットワークHDDを業務に利用するケースが増えており、ニーズは着々と拡大している。

簡単に扱えるようになり、ワンセグがトレンドに

 一方、「デジタルホーム」のトレンドとして扱われることが多いのが「ワンセグ」だ。ワンセグとは、地上デジタル放送で行なわれる移動体向けの放送のこと。最近では携帯電話などにワンセグ機能が搭載され、テレビ番組が簡単に視聴できるようになった。この市場の拡大を目指し、PC周辺機器ベンダーはしのぎを削っている。例えば、PCに接続するだけでテレビ放送が視聴できるワンセグチューナーは、USBフラッシュメモリほどの大きさでユーザーの利便性が高く、人気商品となり、屋外のみならず屋内で利用するユーザーが多い。ワンセグ製品の中には、受信感度を向上させるためブースタ回路を搭載したり、ロッドアンテナに加え、F型コネクタ変換ケーブルを提供しているものもある。また、最近では録画したファイルのムーブに対応したワンセグチューナーも登場し始め、録画したデータを携帯電話などで楽しむなど活用シーンを広げている。

 「デジタルホーム」は、今後、市場を広げていくキーワードとなるだろう。ネットワークの浸透はもちろん、PCと家電との融合が進むことで、新しい提案が可能になる。この市場に対して、家電メーカーはもちろん、PC周辺機器ベンダーが新しい提案を次々と行っている。今後の伸長が最も楽しみな市場である。

(週刊BCN 2007年12月17・24日号掲載)
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