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<ネットワークソリューション特集> エンタープライズは横ばいの状況が続くが 中堅・中小企業向けのネットワーク市場が急速に拡大 前編

2007/12/20 19:56

週刊BCN 2007年12月17日vol.1216掲載

 ネットワークは、すでにインフラとなり、企業や家庭において必要不可欠なものとして認知されるようになった。この流れの中で、ネットワークの安定性・信頼性がさらに重視されている。ネットワークに障害があれば、ビジネスの停止を余儀なくされるケースが想定できるためだ。そういった市場に対して、新たなソリューションを提供し続けているベンダーもある。それらベンダーの最新の動きを追った。

■安定性・信頼性が求められる法人市場

 生産性の向上を目的として、基幹システムや業務アプリケーションとクライアントPCを接続し、企業システムを構築している企業が多い。企業内だけではなく、取引先企業ともネットワークを経由して接続し、受発注を行う例も少なくない。すでにネットワークはインフラとして認知されており、ビジネスには欠かせない必要不可欠なものとなっている。2007年5月に総務省から公表された『平成18年「通信利用動向調査」の結果』の『06年企業内通信網の構築状況』をみると、企業内通信網を構築している企業は全体で89.2%となっている。これは、ほぼ前年と変わらないという推移だが、(1)全社的に構築している=73.5%、(2)一部の事務所または部門で構築している=15.7%となっており、全社的に構築している割合が対前年比で2.9ポイント増となっている。この底上げを支えているのが中堅・中小企業である。これらの企業の「全社的に構築している割合」が4ポイント超を示しており、IT投資を進めている様子がうかがえる。

 ビジネスのインフラ部分を担うネットワーク機器で求められるのは、多機能ではない。安定性・信頼性の高さが何よりも求められる。特に「法人」市場においては、その傾向が顕著だ。

 企業に多く導入されているネットワークスイッチにおいても同様だ。この部分の信頼性が低ければ、企業システム自体の信頼性を低減させることになる。何かの障害が起きれば、企業の生産性は著しく低下し、ビジネスの停止を余儀なくされるケースもある。そのため、ネットワーク製品は、高品質なものが選ばれる。もちろん、実績も重視されるが、ブランド認知も重要なファクターとなる。

 スイッチは、活用する場所や用途に応じてさまざまな種類がある。そのため、ラインアップを十分に揃え、多岐にわたる販売チャネルを持つことを重要視しているベンダーもある。多くの販売パートナーを有し、売りやすい環境作りを進めていくことによって、シェアを獲得しているのだ。

 ネットワーク製品に求められている機能の1つに「セキュリティ」がある。エッジやフロアスイッチにおいても、その傾向は顕著に現れている。ウイルスやワームの大量感染、個人情報・機密情報などの情報漏えい対策として、エンドポイントによるセキュリティ対策が求められている。

 スイッチで認証、検疫などを行うようになれば、ネットワーク全体のセキュリティレベルが大幅に向上する。実際、市場においてセキュリティスイッチも投入されており、業務業態、企業規模を問わず導入が進んでいる。最近では、数万円程度で購入できるセキュリティスイッチも登場し、市場のすそ野を広げている。セキュリティ機能をすべて使わなくても導入できる価格帯にしているため、ユーザーの対象を広げることにも成功しており、今後の伸長も期待されている。

 企業システムの安定性・信頼性を向上させ、セキュリティを向上させるという意味では、ロードバランサーも注目されている。ロードバランサーとは負荷分散装置のことで、従来はウェブサイトやウェブアプリケーションの信頼性・可用性を飛躍的に向上させるソリューションとしてエンタープライズを中心に拡充されてきた。中堅・中小規模企業においても、利用したいというニーズはあったものの、導入・運用工数やコストが高く、導入に二の足を踏む企業が多かった。

 最近では、価格・機能・ユーザービリティの面で中堅・中小企業に適したロードバランサーが登場し、導入が進んでいる。ロードバランサーを利用することでサーバーの有効利用が可能となり、運用コストの大幅な低減まで実現する。さらに、仮想化を組み合わせることで、物理的なサーバーの台数をさらに低減できるため、地球環境への配慮という点からも注目されている。また、中堅・中小企業向けのロードバランサーもラインアップの拡充が進んでおり、従業員数が100人から1000人までの、いわゆるSmall and Medium-sized Enterprise(SME)市場のデータセンタークラスで活用できるものから、よりローコストで導入できるソリューションまで登場している。また、IPS機能が付加され、セキュリティも考慮したソリューションもあるなど、選択の幅を広げている。

■コンシューマ市場においてネットワークストレージが伸長

 ネットワークを求めているのは「法人」市場だけではない。デジタル家電や家庭用ゲーム機がネットワークに接続されることを想定した設計になり始めていることからもわかるように、コンシューマ市場においてもネットワークの利用が進んでいる。

 現在はコンシューマ市場で映像、写真、音楽系のデバイスのIT化が進んでいるが、このデータを一元管理したいというニーズが高くなり、それらのデータの蓄積場所としてNASが注目されている。家庭においてもNASが必要とされるようになったのだ。

 家庭用NASの場合、信頼性・安定性はもちろん、デジタル機器との連携が重視される。デジタルカメラで撮影した画像の保存・閲覧はもちろん、映像・音楽などもそこに蓄積し、必要に応じて必要なデバイスで取り出し、利用したいというユーザーが多いためだ。こういった「デジタルホーム」市場も急速に立ち上がりつつある。

 ネットワークは、法人、コンシューマ市場ともに急速にニーズが高まっている。この声に応えて、適切なソリューションを提供することで、市場はさらに広がっていくだろう。

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