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<プリンティングソリューション特集>中堅・中小企業への提案が伸長のカギ(上)

2008/11/28 19:56

週刊BCN 2008年11月24日vol.1261掲載

 レーザープリンタ市場は、新たな市場の活性化が期待されている。各プリンタメーカーは、ソフトウェアベンダーや用紙ベンダーと協業を進めながら、個性豊かなプリンティングソリューションを提案し、他社との差別化を図っている。こうした動きがユーザー企業の選択肢を広げ、その結果、ビジネスチャンスが拡大している。

TCOの削減が重要な訴求ポイントに

レーザープリンタのカラー化が進む

 IDC Japanが2008年6月17日に発表した「2008年第1四半期国内企業向けプリンター市場動向」では、08年の1-3月期におけるレーザープリンタ全体の出荷台数は28万台で、前年同期比5.8%減という結果が出ている。一方、カラーレーザープリンタの出荷台数は8万5000台で前年同期比11.6%増となっており、カラー化が進んでいることが明らかになった。

 これまでカラーレーザープリンタは、カラー複合機と競合し、市場を奪い合ってきた。しかし、小型で10万円を切る低価格モデルを投入することで、モノクロレーザープリンタからのリプレース需要という新たな市場の開拓に成功した。カラー化が進めば、トナーなどのアフターマーケットも期待でき、市場の注目が集まっている。

 08年8月19日発表の「国内中堅中小企業におけるA4レーザープリンターの市場機会分析」によると、中堅・中小企業のコピーや印刷枚数が増えると回答した企業は60%にも上り、A4印刷比率が増えたとする企業は全体の50%を超えたという。つまり中堅・中小企業では、特にA4での印刷枚数が増加していることが明らかになった。これらの企業は、A4レーザープリンタ/複合機の購入意欲も高く、TCOの削減に敏感であるというという結果も出ている。

 国内市場をみると、A3レーザープリンタ/複合機が全体の出荷台数のなかで70%を占めているが、A4ニーズの高まりによって、今後、構成比が変化することが予想できる。

 また、導入・運用コストを抑えつつ、レーザープリンタ同様の生産性を有するビジネスインクジェットプリンタも台頭し始めている。ビジネスインクジェットプリンタは、インクを直接用紙に吹き付けるため、レーザープリンタなどの電子写真方式では必須とされている加熱定着処理が不要となり、幅広い用紙に容易に印刷できるようになった。

 ビジネスインクジェットプリンタは、一般オフィスだけではなく、各種業種にも導入が進むと期待されている。設置スペースを削減する省スペースモデルや、プリンタ機能に加えてファクス、コピー機能などを搭載し、A3にも対応する付加価値の高いモデルも投入されている。店舗のバックヤードや窓口業務などでの活用を視野に入れた提案も行われており、実際の導入事例も出始めているようだ。

「セキュリティ」などソリューション提案を重視

 現在のプリンタ市場を見ると、「環境」や「セキュリティ」を前面に押し出した製品が多い。こうした製品でも、TCOの削減は重要なキーワードとなる。例えば、「環境」であれば「TEC値」が注目されている。これは、実際に製品を運用した際にどれくらいの電力を消費するのかという目安になるもので、低い値であればエネルギーコストもそれだけ削減できる。また、「セキュリティ」では、不要な印刷物を削減することができるため、結果として無駄を省き、「TCOの削減」に寄与する。

 さらに、これまで外注に出していたチラシやDMなどを内製化することで、コストが抑えられるという点を訴求するケースもある。ターゲットにする市場や業態によって製品の印刷速度や機能などに差異はあるものの、TCOの削減というキーワードははずせない。

 もう1つのキーワードが、「ソリューション」だ。プリンタは、基幹業務やアプリケーションで扱われている情報の出力装置として活用されている。情報が正しく出力されれば機器自体にはこだわらない、という顧客企業は多い。しかし、「ソリューション」で提案されれば、どの機種でもいいということにはならない。基幹システムやアプリケーションと連携し、単なる出力装置以上の付加価値を提供することで、顧客企業にとってのメリットが高まり、販売パートナーにとっては提案しやすい商材となる。そのため、アプリケーションベンダーなど、コラボレーションパートナーと連携するベンダーも増えている。

 また、スキャナと組み合わせて、入出力を受け持たせたソリューションも多い。図面や文書など保存が必要な情報の場合、紙に出力すると保存場所が必要となり、管理が難しい。しかし、それを電子化しておけば、情報共有もしやすく、管理・運用が容易となり、保存スペースも必要ない。情報を一元的に管理しておけば、運用工数を削減することも可能だ。

 顧客の課題を解決するソリューションは、今後も伸長していくだろう。プリンティングソリューションは、確固たる市場を創出し始めているのだ。

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