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闊利達(上海)有限公司(クオリティグループ) 黒字化を達成、次の目標は1000社 中国現地企業への拡販に強い意欲

2011/07/28 19:55

週刊BCN 2011年07月25日vol.1392掲載

 IT資産管理市場をけん引し続けるクオリティグループは、国内市場のみをターゲットとしてはいない。日本だけでなく海外にも進出し、米国、韓国、そして中国に現地法人を設置している。中国には、今からおよそ10年前の2002年10月に進出。闊利達(上海)有限公司を上海市に設けた。国内パッケージソフトメーカーのなかでも参入時期は早く、すでに黒字化を達成。中国IT市場で成功した数少ない日本のISVだ。この10年、どんな戦略のもとに巨大マーケットを攻略してきたのか──。闊利達(上海)有限公司の陣頭指揮を執る飯島邦夫総経理に聞いた。

10年ほど前に中国進出
日本と異なるPRが奏功

 クオリティグループは、中核事業会社でソフト販売のクオリティソフト、ソフト開発のエスアールアイ、一次産業をITで支援するクオリティライフ、クオリティグループ全体のマーケティングを行なうクオリティのほか、米国シアトルと韓国ソウル、中国上海市に設置する海外法人3社でグループを形成する。

クオリティグループの中国事業会社である闊利達(上海)有限公司の総経理であり、クオリティの常務取締役を務める飯島邦夫氏
 クオリティの創業者で代表取締役社長である浦聖治氏は、「Think Global Act Local」を標榜し、国内市場だけのビジネス展開ではなく、創業当時から海外進出を視野に入れていた。国内市場での飽和に危機感を感じて、中国を中心とした海外に進出するISVはここ数年増えているが、クオリティはそのなかでも極めて早い時期に海外市場攻略に挑んだ。1996年に米国、02年に中国、そして03年には韓国に現地法人を設立している。

 中国では、02年10月に闊利達(上海)有限公司を設立した後、3年間はオフショア開発拠点として活用。その後、06年からは中国をマーケットとして捉えて販売活動を開始した。08年8月には、国内市場でIT資産管理ソフトのデファクトスタンダードといえる「QAW/QND Plus」で、英語/中国語に対応した国際対応版を発表し、中国での事業基盤を強固にした。クオリティの常務取締役で、闊利達(上海)有限公司の総経理を務める飯島邦夫氏は、08年から中国事業の陣頭指揮を執っている。クオリティの常務を務めながら、2か月に1回、約2週間の頻度で訪中し、中国事業を統括している。

 飯島総経理は、「日本では『セキュリティ統制』をキーワードに、『QAW/QND Plus』の販売本数を伸ばしてきた。中国でも同様にセキュリティ対策ツールとしてマーケティング活動を展開したが、中国企業はセキュリティに対する意識が薄く、日本とは異なるPRが必要だと判断した」と、08年当時を振り返る。飯島総経理は、現地の事情を観察し続けて、中国では業務中にチャットやゲームなどのアプリケーションで遊んだり、動画ファイルをダウンロードしている従業員が70%以上を占めることに着眼。業務外でのパソコン利用を抑制するためのツールとしてPRする戦略に転換した。同時に進めていた日本のIT企業との協業による代理店網も整備して、順調にユーザ数を伸ばした。約100社のユーザを獲得して、2009年度(09年12月期)に黒字化を果たしている。従業員数も約25人にまで増員した。

中国企業の獲得に向けて
現地スタッフに任せる体制を

 黒字化を果たした闊利達(上海)有限公司は、次の成長に向けて新たな策を打っている。それが、中国現地の企業に向けた販売強化だ。

 これまで獲得したユーザ企業は、そのほとんどが日本企業の中国現地法人で、今後ユーザ企業数を増やするためには、「中国企業への拡販が必要」と飯島総経理は考えている。加えて、「中国現地の企業に対して、販売本数を積み上げなければ、たとえ黒字化していても、本当に成功しているとはいえない」ともみており、中国のローカル企業への販売に強い意気込みを示している。

 中国のローカル企業への販売のために、製品開発・販売の両面で抜本的に戦略を見直した。これまで中国市場で販売してきた製品は、クオリティが日本向けに開発した製品を、中国語にローカライズ化したもの。だが、「中国企業に適した製品は、中国人が中国で開発するのが最適」(飯島総経理)という考えで、闊利達(上海)有限公司が中国人開発者の手で独自に開発する体制を敷いた。

 2010年7月に、日本の中国法人向け製品を販売する部門「国際事業部」と、中国企業を対象とした製品を開発・販売する部隊「国内事業部」に組織を分けている。飯島総経理は、「国内事業部には、基本的に私を含めて日本人は一切口を出さない。製品開発からマーケティング、営業まで、すべての業務を中国人に任せている」と割り切っている。今年に入って、中国オリジナルのツールをリリースしており、すでに中国企業からの受注を獲得しており、出足は好調という。

 飯島総経理は、今後の目標について、「早期に1000社のユーザ獲得を達成する。また、合計ユーザ数のうち、中国のユーザ企業が占める割合についても重視する。今年度には、中国企業のユーザ数が、日本の中国法人のユーザ数を上回るようにしたい」と話している。

 他社に先駆けて巨大マーケットに進出し、すでに黒字化も達成している闊利達(上海)有限公司。中国企業の獲得という新たな成長に向けて舵を切り、その存在感は際立つ。中国のスタッフ主導で開発からマーケティング、販売までを行うというスタイルで活躍する日本のISVとして、今後も目が離せない。
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外部リンク

闊利達軟件(上海)有限公司=http://www.qualitysoft.com.cn