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<BCNランキング 2011年上半期No.1>エレコム PC周辺機器は「機能」から「デザイン」へ

2011/07/28 19:55

週刊BCN 2011年07月25日vol.1392掲載

 BCNランキングの2011年上半期(1~6月)集計で、入力機器やパソコン周辺機器などの9部門で販売数量シェア1位を獲得したエレコム。福良卓二・商品開発部新規ビジネス開発室室長は、「現行の分野で話題に乏しかった」と上半期を振り返る。しかし、5月にはデザインオフィスとのコラボレーション企画製品を発表し、下半期にはデザインで魅力的な製品が話題を呼びそうだ。

マウス部門
キーボード部門

USB部門
10キーボード部門
ゲームコントローラ部門
PCカメラ部門
KVM切替器
カードリーダ部門
携帯オーディオアクセサリ部門


デザインオフィスとのコラボ製品を投入

商品開発部
新規ビジネス開発室
室長
福良 卓二 氏
低価格化やノンPCへの流れ
市場動向を冷静にみる


エレコムは、BCNランキングの2011年上半期集計で、キーボード、マウス、ゲームコントローラー、10キーボード、USB、PCカメラ、KVM切替器、カードリーダー、携帯オーディオアクセサリの9部門で販売数量シェア1位を獲得した。多くの部門でトップを走りながらも、福良室長は同社が主力とするPC周辺機器市場を「厳しい局面に差しかかっている」とみて、気を引き締めている。製品の低価格化の流れや、ユーザーの関心がタブレット端末やスマートフォンなど、PC以外のデバイスに流れている状況があるからだ。また、上半期には同社が得意とする入力機器分野で「新しいものが出せなかった」と、福良室長は反省も口にした。KVM切替器は、昨年の年間3位からの“躍進”だが、「市場は縮小傾向。棚ぼたに過ぎない」と冷静だ。

上半期には震災もあったが、幸いなことに、エレコムの生産体制に大きな影響はなかった。震災直後には、充電池関係の製品在庫が一瞬でなくなるという現象も起きたという。電力事情に加え、スマートフォンやタブレットの普及により、充電池の需要は日増しに高まっている。福良室長は「充電式リチウムイオン電池は近年出し始めたところだが、着手してよかった」と述懐する。

販売パートナーの関係では、ユーザーの支持を得られる売り場の提案に力を入れているとのこと。こうした活動がトップシェアの維持に功を奏したといえそうだ。

下半期はデザインで魅了
新分野開拓も


下半期のエレコム製品は、デザインで弾みがつきそうだ。5月にデザインオフィス“nendo”とのコラボレーション企画「nendo×ELECOM」から、ユニークなデザインのデジタル周辺機器9シリーズを発表。第一弾として、5月下旬にクラゲのようなシルエットのカナルタイプヘッドフォン「otokurage(オトクラゲ)」を発売した。6月下旬には、ケーブルをデザインに生かした3ボタン光学式マウス「rinkak(リンカク)」と、尻尾がついたワイヤレス光学式マウス「oppopet(オッポペット)」を発売した。この後、メガネの形をしたスマートフォン用スタンド「megane(メガネ)」やクリップ型のUSBメモリ「DATA clip(データクリップ)」と続いていく。強みであるマウスに加え、昨年から急激に伸びているスマートフォン関連製品を選んだところに、エレコムの目指す方向がうかがえる。


(左から)oppopet02、TK-FBP018

昨年、同社がスマートフォンで使える折りたたみ式Bluetoothキーボードを発表し、ユーザーからの注目を集めたことは記憶に新しい。近年、ノンPC分野にも注力しているエレコムが、次に強みを発揮するのはデザインといえそうだ。福良室長は「長年、『もう機能ではない。デザインだ』といってきたが、ようやくその時代が来た」と話す。

PC、タブレット、スマートフォンと、デバイスが混在するなかで、エレコムはIT機器の次の動向を見極めながらバランスよく新しいものに挑戦していく。ノンPCの代表格であるスマートフォンに将来性を見出しつつも、PCについては「腐らせない。デザインで提案し、シェアを維持・拡大していく」と、PC周辺機器のトップメーカーとしての自負もみせる。

もち前の身軽さも強みの一つ。最近では、LED照明や体重計の販売も始めた。省エネ・節電という時代の要請もあって、とくに直管型LED照明の引き合いは予想以上という。「エレコムは家電量販店とともにある」と福良氏。「今後もユーザーに『なるほど』と思われるような面白い製品、納得いく製品を出していく。“周辺機器はエレコム”と思ってもらえるようにしていきたい」。新分野開拓への意欲は、枠にとらわれることなく旺盛だ。


Valuation

堅調に推移しているマウス・キーボード市場だが、変化の兆しがみえてきた。現在、マウスでは有線と無線の販売台数構成比がほぼ半々、キーボードでは有線が依然6割を占めているものの無線対応製品の台数構成比が着実に増えてきている。無線化の流れは、今後市場が拡大すると考えられるスレートやスマートフォンなどへの対応も視野に入れたもの。パソコン市場だけにとどまらず、情報機器全般が無線化していくのは確実とみられる。
(BCNアナリスト・森 英二)
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外部リンク

エレコム=http://www.elecom.co.jp/