東日本大震災以降、災害時のシステム保護や計画停電への対応で大きな注目を集めることとなったUPS(無停電電源装置)。企業のコンピュータ機器やネットワーク機器など、わずかな電圧低下・停電も許されない重要なシステムには必須の装置だが、大震災を機に改めてその存在が見直され、用途が広がるとともに需要が拡大している。そこで、主要メーカー3社のキーパーソンにお集まりいただき、昨年の実績、市場ニーズの変化、そして今年度の販売・製品戦略、新たな市場開拓に向けたソリューションなどを語ってもらった。(司会・進行/「週刊BCN」編集長 谷畑 良胤  写真/大星直輝)

(左より)オムロン 電子機器事業本部長 筒井 哲志 氏、サイバーパワー・ジャパン 代表取締役 葉 一徳 氏、ユタカ電機製作所 第二営業部 UPSマーケティンググループ グループリーダー 西海 寛 氏

オムロン
電子機器事業本部長 筒井 哲志 氏

サイバーパワー・ジャパン
代表取締役 葉 一徳 氏

ユタカ電機製作所
第二営業部 UPSマーケティンググループ グループリーダー 西海 寛 氏



震災を機に認知度向上 ビジネスチャンスが拡大

──まずは、前年を振り返って、販売実績と市場の状況を聞かせてください。

筒井(オムロン) 一年を通してみると、30%程度の成長を果たしました。ニーズが伸長した最大の理由は震災復興とシステム保護の見直し、電力不足や計画停電への対応で、ピークは大震災後の4-6月でした。また、復興需要でサーバーの出荷が増えたことに伴い、UPSがセットで伸びました。

オムロン
電子機器事業本部長
筒井 哲志 氏
UPSと20年以上にわたって関わってきたスペシャリスト。所属事業部では、UPSのほか、組込み用PCとEMS受託サービスも手がけている。

http://www.omron.co.jp/ese/index.html

葉(サイバーパワー) 当社は日本での事業開始は2009年のことで、ようやくビジネスを本格的に展開しはじめた時に大震災が発生しました。元々、売り上げが小さかったこともあって、やはり震災直後は非常に大きな伸びを示しました。

西海(ユタカ電機) 昨年の3月と4月は異常なほどのニーズの高まりがあり、前年比で倍以上に伸びました。ただ、夏の停電などに備えてのニーズは思ったほどではなく、一年を通してみると20%増ほどでした。

──震災前後で市場やニーズ自体に変化はみられますか。

西海(ユタカ電機) 当社のユーザーは公共関係が中心でしたが、震災をきっかけに、分野が拡大しました。また、以前からUPSを導入していたユーザーのなかにはリプレイスに加え二重化、三重化したケースもあります。新しいニーズと共に、UPS自体の知名度が上がったことが大きいですね。認知度が上がり、メーカーにとってのチャンスが広がったと感じています。

葉(サイバーパワー) UPSの用途は計画停電対応が中心を占めますが、介護とか、(テレビなど)情報源の確保、変わったところでは冷蔵庫を動かすためという導入例が意外に多くありました。日本は年間の累積停電時間が9分と世界で最少です。だからこそ、長時間の停電はかなりショックが大きく、UPSの導入につながったようです。また、UPSを取り扱いたいという販売店の問い合わせも増え、テレビ通販からの問い合わせがありました。

 一方、販売側、ユーザー側も蓄電池とUPSの区別がつかず、私どもメーカーへ問い合わせてくる人もいました。震災後しばらくすると落ち着きましたが、今年に入って首都圏で4年以内に大震災が発生する確率が70%との報道があって、また問い合わせが増えました。なお、企業が求めているのは安価な製品が中心です。

──日本のユーザー企業は、UPSは高額だとみているのですか。

葉(サイバーパワー) 米国と比べた場合、同水準のスペックの製品で3割程度は高いと思います。

筒井(オムロン) UPS単体でみた場合、高いという指摘は少ないですが、サーバーなどとのシステムで導入するケースでは、どうしても割高に感じてしまうようです。従来に比べればUPSも安くなってはいるのですが、PCやサーバーの急速な価格下落と比べると、変化は緩やかですから。

──製品面での変化はどうでしょうか。

西海(ユタカ電機) ユーザーニーズは、安く、軽く、コンパクトです。また、電力問題がクローズアップされるにつれ、UPS自体の消費電力も問題にされています。そのため当社では2008年を境にアナログからデジタルへと製品の機構を大きく見直し、小型化、コスト減を図り、バッテリ寿命も延ばしました。当社製品のラインアップは常時インバータ給電方式が9割ですが、エコモードを備え、待機時の消費電力を大幅に抑えています。

筒井(オムロン) 市場のニーズはなるべく安くという声がある一方で、多少高くても構わないので特定用途に対応して欲しいというニーズもあるなど、二極化しています。そのため、当社では低価格製品のニーズに対しては、常時商用給電方式で正弦波出力の機種への注力を4、5年前から進めていて、これがかなり売れ筋になっています。特定用途向けとしては、対環境性能を高めた機種を継続的に投入することで、これらのニーズに応えています。

葉(サイバーパワー) 当社の約半数は個人やSOHOのユーザーですが、最近、一つのキーワードになっているのが正弦波です。正弦波出力でコストの安いものというニーズがかなり高くなっています。一方、低消費電力へのニーズに対しては、当社の特徴であるエコ機能が支持されています。

サイバーパワー・ジャパン
代表取締役
葉 一徳 氏
1988年のエイサーの日本法人の設立、エイサーから分社したPCパーツの製造・販売会社 エーオープンジャパン社長を経て、2009年より現職。

http://www.cpsww.co.jp/index.html

──売り方の工夫・具体的なソリューションについて教えてください。

西海(ユタカ電機) 以前は個人ニーズは皆無でしたが、HDDレコーダーなどの録画機の停電対策用やWi-Fiなどネットワーク機器用に求めるユーザーが考えていた以上に増えました。こうした用途ではリビングや書斎などに設置するするため、ファンの音対策が求められますね。また、販売店からもより手のかからない製品を求める声があるので、サポート面で選びやすいメニューづくりを検討しています。

葉(サイバーパワー) 販売店の悩みは売り方がわからないということです。だからこそ、人の育成が必要だと感じます。小売業者のなかには、一度は扱ってみたものの一過性の売れ行きで、その後は在庫になっているところもあります。したがって、いかに売り方を提案するかが、今後の市場拡大に向けた大きなテーマと感じています。

筒井(オムロン) 市場や販売側のニーズは手離れがいいものですが、当社はあえて、逆をいっています。UPSの販売には手間がかかるものという認識のもと、機能だけでなく、UPS導入の意義やメリットなどを丁寧に説明して、理解を得るようにしています。見逃せないのは、当社が想定する以上の上手な活用をしているユーザーも少なくないことです。こうした特殊な例を社内で多く共有・蓄積して横展開を図っていきたいと考えています。

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