Special Issue

<UPSメーカー特集 vol.1> 【UPSメーカー座談会】認知度向上で市場が拡大 新市場の開拓を狙って需要を喚起

2012/06/28 19:56

週刊BCN 2012年06月25日vol.1437掲載

特定市場に向けた製品・ソリューションを展開

──市場拡大に向けた中長期的な視点での施策を聞かせてください。

西海(ユタカ電機) 今後、10KVAクラスの中容量の製品が伸びると考えていますので、そこに注力します。この重点施策により、10KVA以下の小型モデルの集約を図るとともに、二重化対策の需要も喚起したいですね。中型機が伸びる背景には大切なシステムを守るというユーザーの意識の高まりがあります。また、これまでの鉛バッテリから、リチウムイオンへの転換が必要と思いますが、課題はやはりコストですね。

葉(サイバーパワー) 小型製品には革新的な製品の登場が必須で、これにはバッテリが深く関係しますが、リチウムイオンは確保が難しい。バッテリメーカーはEV(電気自動車)など、より需要の旺盛な分野に供給を注力しています。

 日本の市場は海外と比べてUPSのニーズは全般に低いと思います。あえていえば、安定した電力や勤勉な国民性など、ドイツに市場環境が似ています。ただ、ドイツはコストと機能のバランス重視でブランドにこだわらないのに対し、日本はブランドを重視し、アフターケアも重要と考えます。その意味でとてもやりがいのある難しい市場です。そのため当社は、得意分野に自社ブランド、そうでない分野にブランド力のある企業と組んでのOBM/OEMダブル展開を中心とする施策を打っています。

筒井(オムロン) 今後市場は、伸びるというシナリオと、伸びないというシナリオの両方を考えています。伸びるとすれば、BCP、電力対策、サーバー需要の増加。ただ、これは外的要因で、われわれがどうにかできることではありません。

 一方、伸びないというシナリオに対しては、二つの方策を考えています。一つは、PCベースの専用機向け市場の強化。例を挙げれば、POSに組み込むなどのやり方です。二つめは海外展開です。海外生産する装置メーカーに対して、日本でスペックインしたUPSを海外でも調達できるスキームを提供していきたいと考えています。

西海(ユタカ電機) 特定市場に向けては、できるだけ既存の製品をベースに対応するセミオーダーの拡大を考えています。そのため製品の設計時点からフレキシブル対応が可能な製品づくりを目指しています。

──新しいホーム市場の可能性はどうでしょうか。

西海(ユタカ電機) 前述したように、録画機やネットワーク機器の停電対策などの新しいニーズが出てきたので、今後の検討課題にはなると思います。ただ実際は、蓄電池と混同されているケースも少なくありません。

ユタカ電機製作所
第二営業部
UPSマーケティンググループ
グループリーダー
西海 寛 氏
オートバックスでカーナビなどの電装品を扱っていた経験を買われて1997年に入社。市場リサーチや販売企画などを担当している。

http://www.yutakadenki.jp/index.html

葉(サイバーパワー) 計画停電時に冷蔵庫や扇風機を動かしたいという理由での採用例もありましたが、多くは一過性のものでした。まだ、明確な市場とは考えにくいと思います。

筒井(オムロン) ニーズはあるものの、市場として考えるには極めて少ないので、限られたリソースを掛けてまで専用製品を開発するだけの価値があるのか慎重に検討しなければならないと考えています。

クラウドの拡大は脅威 新しい需要の喚起が必要

──クラウド時代に向けて、何か対応を考えていますか。

筒井(オムロン) われわれの参入領域から見たら、クラウドの拡大は大ピンチです。サーバーなどの機器が集約されると、データセンター(DC)を除けば、市場の縮小は避けられません。そこで前述した専用機市場に特化した戦略の強化が重要と考えます。専用機市場は、われわれが想定しなかったような使い方をユーザーが教えてくれますし、奥の深さと潜在市場の可能性を感じます。

西海(ユタカ電機) 当社も小型機中心なので、クラウドの拡大は一大事です。そのため製品開発は要の戦略でもありますが、新製品を投入しても、その結果が現れるには早くて1年、普通は2~3年かかります。それだけに市場の反応を見極めながら、対応していかざるを得ないと考えます。

葉(サイバーパワー) 当社は国内市場での経験が少ないので、基本はOEMパートナーとともにマーケットを研究して、ノウハウを蓄積していくことです。特定市場はまだわからない点が多いですし、日本のユーザーの要望はとても細かく、要望を拾っていてはコスト高になってしまいますから。

──今後の市場のキーワード、展開をどう考えますか。

筒井(オムロン) 一つは中容量機を中心としたラインアップの強化です。現状の1~3KVA中心から、10KVAまでのラインアップを増やしていきます。二つめは、専用機市場と海外強化です。オムロングループは売り上げの50%以上を海外で占め、事業を展開するインフラも充実しています。海外市場でもニーズがあれば、すぐにも展開は可能です。

葉(サイバーパワー) 基本は一般ユーザーへの需要喚起です。製品面では、より小型化の追求でニーズにフィットする製品づくり、そしてコスト削減です。自分たちでは対応しきれない大型製品などはOEMで対応します。基本的にはコンシューマーや中小企業向けなどは自社で、それ以外はOEMと考えています。

西海(ユタカ電機) やはり世の中に露出する機会をできるだけ増やしたい。これは市場全体での取り組みが必要と思います。常時商用給電については新製品を投入し、将来的には10KVA以上の製品についても投入を検討します。そして前述のように、既存製品の拡張性を高めていきたいと考えています。

──最後に、製品のラインアップと特徴を教えてください。

西海(ユタカ電機) ラックマウント型の常時インバータ給電方式「Super Powerシリーズ」は、薄型・コンパクトな筐体に省エネ運転の機能を搭載。据え置き型の「Super Towerシリーズ」は、同じく省エネ運転に加え、停電保持時間10分を達成しています。このほか、マイナス10℃~プラス55℃の使用環境温度に耐え、長寿命バッテリを搭載したHyper Fシリーズがあります。UPS監視ソフトやネットワークボードによる管理ソリューションにも注力しています。

葉(サイバーパワー) 煉瓦型機2種とタワー型5種の合計7機種を展開しています。煉瓦型機以外はLCD診断ディスプレイを標準装備しています。70以上の特許を取得していて、とくに「GreenPower UPS」のエネルギー消耗量を抑える省エネ機能が特徴です。また、独自開発されたPowerPanel UPS監視、管理ソフトはパーソナル版PPPE及びビジネス版PPBE二種類の無料提供となっています。

筒井(オムロン) さまざまなニーズにお応えできるよう、常時商用給電、ラインインタラクティブ、常時インバータ給電というそれぞれの各給電方式に対応した豊富な製品をラインアップしています。中でも常時商用正弦波出力タイプのBYシリーズと、対環境性能を高めたBU-REシリーズを特徴としています。

──本日は、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。


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外部リンク

オムロン=http://www.omron.co.jp/ese/index.html

サイバーパワー・ジャパン=http://www.cpsww.co.jp/

ユタカ電機製作所=http://www.yutakadenki.jp/