ソフトバンクBBは、iPhoneやiPadなどのスマートデバイスを活用してワークスタイルを変革することに力を注いでいる。同社の溝口泰雄取締役常務執行役員は「BCN Conference 2012」で、「モバイルインターネット活用による生産性向上」と題して講演。iPhoneやiPadによって営業部門の業務効率化やコスト削減を実現した自社の導入事例を交えながら、スマートデバイスをフルに活用する方法について具体的に説明し、システム部門主導ではなく、利用者が使いやすいと感じるようなソリューションを提供する重要性を訴えた。
<2012年10月18日開催「BCN Conference 2012 東京」レポート> キーワードは「とことん使い倒せ!」

取締役常務執行役員
溝口泰雄 氏 ソフトバンクBBは、昨年開催の「BCN Conference 2011」でも講演し、iPhoneやiPadの活用によって実現したワークスタイルの変革、営業業務の効率化やコスト削減などの自社事例を紹介している。今回の講演でも、自社のオフィスを移転する際に発生したコストを削減するため、また在宅勤務などBCP(事業継続計画)対策のために、「いつでも、どこでもオフィス」を実現してワークスタイルを変革したことを説明した。溝口常務は、「DaaS端末を社員の自席や会議室に設置することで、どこでも仕事ができるようになった。デジタルサイネージによる情報共有、フリーロケーションオフィスの実施など、新しいワークスタイルを実現した」と述べた。
また、「書類での業務処理をデジタル化して生産性の向上を実現した」こともアピール。生産性の向上だけでなく、コスト削減にもつながったようだ。ペーパーファイルのデジタル化によってキャビネットスペースが移転前の約3分の1に縮小できたという。営業面では、クラウド環境で資料を共有化したことを紹介した。動画販促データも保存し、取引先でこの動画販促データを用いて分かりやすくプレゼンできる環境を整え、営業力の底上げを実現した。これらの取り組みによって、移転前と比べて移転後は2倍に膨らむと踏んでいたコストが削減でき、今年9月の時点で人員が増えたにもかかわらず、移転前と同程度のコスト水準まで下がっているという。
移転後のワークスタイルの変革で、社員全員がiPhoneやiPadを業務で有効活用している。この状況を踏まえて、溝口常務は「昨年は、キーワードとして『もう戻れない』ということを伝えた」と振り返ったうえで、「今年は一歩進んで、『とことん使い倒せ!』というキーワードを掲げる」と述べた。
スマートデバイス時代を切り開く
スマートデバイスを使い倒す具体的な例として、ソフトバンクBBが実際に社内に導入している事例を説明。まず、iPadを使って採用関連業務の効率化を実現する「採用レボリューション」を導入したことを挙げた。このソリューションは、応募者資料の運用・保管や面接結果のDB(データベース)化など人事部門の課題、面接資料の参照が煩雑という面接官の課題を解決するものだ。導入したことによって、採用コストを1年間で約1000万円削減することに成功したという。
また、iPadとBIツールを連携させる「取引分析ソリューション(開発中)」を披露。このソリューションは、取引先ごとに手集計していた情報を、BIでリアルタイム集計してiPadで閲覧できるというものだ。これを導入することによって、ソフトバンクBBは、取引先の分析にかかっていたコストを2000万円削除できると試算している。
「モバイルタスク」という、店舗ビジネス向け営業管理システムも紹介。店舗担当者がモバイル端末によって、作業報告や外出先からの作業指示を確認できることに加えて、管理者が、リアルタイムに作業進捗を把握したり、手軽に現場の画像を管理したり、作業報告を自動集計したりできる。溝口常務は、「これらのソリューションをお客様に提供するケースもある」としており、自社のワークスタイル変革のために独自開発したソリューションがビジネスにつながっていくという考えを示した。
また、溝口常務は「今後はアプリケーションの仮想化が重要になる」と話す。そして、SaaSアプリケーションを統合管理するVMware社の「Horizon Application Manager」を紹介。アプリケーションをカタログ化した「Application Catalog」の機能で必要な時に即時利用が可能になり面倒なインストール作業から解放されるメリットを説明した。
さらに、オンプレミス型のシステムからプライベートクラウドへの移行を解説。クラウドでサービスを提供するデータセンター内では、OSまでセットアップされた「バーチャルアプライアンス」で、ユーザーが必要な時、迅速・簡単にソフトウェアの機能を追加できる環境が当たり前になることを説明し、「新しい通信とモバイルデバイスによって、次のビジネスオポチュニティが生まれている。パートナー企業と一緒にビジネスを拡げてていきたい」との意向を示した。最後に、「エンドユーザーコンピューティング」のあるべき姿について説明。サーバーのアプリケーション集中によってクライアントや場所を選ばない環境を構築することに加え、利用者側に立ったシステムの活用やワークスタイルの変革を進める重要性を説き、「エンドユーザーが使いやすいソリューションを提供することが重要」と訴えた。
コンシューマ市場で普及したスマートデバイスの需要が、法人市場でも急速に増えつつある。クラウドの普及によってオンプレミスの領域でも、「仮想化」へと進んでいる環境の変化にあわせて、従来のデスクトップ環境だけでなく、スマートデバイスをはじめとしたマルチクライアント環境での付加価値サービスを提供することが求められている。そのような状況にあって、ソフトバンクBBではスマートデバイスを中核として通信回線や企業に必要な商品・サービスを提供し、ユーザー企業に対して新しいビジネススタイルを提供することを追求。スマートデバイス時代を切り開いていくことを目指している。