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<プリンタメーカー座談会 2013>2013年は本格的な回復を目指す年になる!

2013/02/28 19:56

週刊BCN 2013年02月25日vol.1470掲載

大澤(ブラザー販売) 大きなトピックは、ビジネスインクジェットの新製品です。もう一つは、モバイルプリンタとの接続性でiOSに対応したことです。当社ではサーマルのモバイルプリンタを出していますが、これをWi-Fiに対応させたところ、iOS対応のプリント案件が多くあり、その勢いが現在も進行形で続いています。

 昨年12月には最高100枚/分のA4モノクロプリントを実現した「HL-S7000DN」を発売しました。当社で初となる高速インクジェットプリンタ分野への参入で、発売間もないですが、すでに帳票やチラシの出力などの用途で引き合いがあります。また、レーザープリンタの上位機種「JUSTIO PRO(ジャスティオ プロ)」は5年間無償保証としていますが、それがパートナー様からも好評です。

松本(日本HP) 2012年11月にコピーやスキャン機能を備えた世界初のモバイル複合機「HP Officejet 150 Mobile AiO」を発売しました。この製品を含んだ、モバイルプリンタがとても好調で、大きく伸びたことが一番のトピックですね。

 また、当社では、2009年から「HP ePrint」という、プリンタドライバが不要で、モバイルデバイスから簡単に出力できるソリューションを提供しています。その当時は、一般のオフィス系のプリントが中心でしたが、最近ではPDFなどが中心となり、ノートPCだけでなく、スマートフォンやタブレットからでもプリントできることから、活用シーンがかなり増えています。これからもこの分野の開拓は積極的に進めていきます。

石渡(キヤノンMJ) 「Satera(サテラ)」シリーズでは、カラーレーザー製品が堅調で、モノクロ製品が横ばいからやや減少という状況です。そのなかにあって、モノクロ製品では、A4の「LBP6710i」を今年1月に発売しました。この製品はカラー機と同様にJavaプラットフォーム「MEAP ADVANCE(LBP版)」を標準搭載しました。これにより、MEAPアプリケーションを使用して認証印刷システムや出力管理ソリューションの導入など、ニーズに合わせたプリント環境を柔軟に拡張することが可能になります。さらに、MEAP ADVANCEを搭載する複合機「imageRUNNER」とも緊密に連携することができます。

 これまで個々に設置していたプリンタをMFPに集約するという流れが出ていますが、「MEAP ADVANCE」を活用し、MFPと単体プリンタとを使い分けて、適正に配置するという提案を推進しています。その提案がかなり好評ですが、さらにソリューションとして拡販していくためにも、パートナー様との連携、販売チャネルを通じた横展開を進めています。今後はさらにラインアップを強化していきます。

森(OKIデータ) 二つあります。一つは「COREFIDO2」の商品・サービスでの差異化です。5年保証+メンテナンス品無償提供でTCOの明瞭化とユーザーセルフメンテナンス性の高さによる業務効率向上の両立を図ることができます。もう一つは、モバイル・クラウド化の流れに乗るソリューション開発です。マネージドサービスの強化も含め、親会社のOKI(沖電気工業)との連携を進めています。

 日本市場は厳しい状況にありますが、このような時こそ進取果敢にパートナー様と新たな価値創造し、ビジネスを拡大していきます。コンピューティングの変化をチャンスと捉え、“売る”ことに対してより強いこだわりをもちたい。当社の国内営業本部員は170人程度なので、自分たちでできることには限りがあります。当社でできることと、販売パートナーの力を借りるべきところを明確に意識して、消耗品も絡めたビジネス拡大の施策を考えています。その甲斐があって取扱パートナー様が1次、2次合わせて約800社に、量販店は300店にまで拡大しました。

鈴村(エプソン販売) ビジネスインクジェットの導入で「プリントコスト1/2」になることを、お客様にしっかりとお伝えすることです。それが第一に取り組むべき施策と位置づけて取り組んでいます。昨年、ビジネスインクジェットの販売で一番の課題に感じたのは、われわれが思った以上にビジネスインクジェットのメリットが知られていないことでした。今でも、ビジネスでインクジェットを利用するのは無理だと考えておられる方々も少なくないので、繰り返しインクジェットのメリットをアピールしていきます。

 もう一つは、われわれが得意とする業種をターゲットに、システムインテグレータ(SIer)さんと販売に取り組んできました。とくに、インクジェットで攻めることができたことが成果でした。

──具体的に好調だった機種、伸びた分野を教えてください。

鈴村(エプソン販売) インクジェットが全般に好調でした。伸びた分野は小売業向けで、前年比で数倍の実績を残すことができました。一方、レーザー製品では、昨年11月に発売した「LP-S230DW」が、当社のページプリンタで初めて無線LANに対応しました。出足は非常に好調です。

森(OKIデータ) 新商品のA4カラーとA3のモノクロで数字を伸ばすことができました。業種としては文教分野が好調で、5年間無償保証+メンテナンス品無償提供などのサービスも支持され、約2倍の成長を果たしました。

石渡(キヤノンMJ) 売上金額・台数ともに対前年で業界全体とほぼ同水準でしたが、A3カラーが大手から中小まで、おかげさまで好調でした。

松本(日本HP) 先ほども申し上げたとおり、モバイルインクジェットが好調です。官公庁はじめ、製薬会社の医薬情報担当者(MR)など医療分野、それに生命保険からかなり多くの引き合いをいただきました。

大澤(ブラザー販売) 前述したビジネスインクジェットとサーマルのモバイルプリンタでかなり多くの案件を獲得しました。このほかでは、モノクロレーザーの下位機が好調でした。

山根(リコージャパン) われわれが得意とする医療や流通といった特定業種では、従来同様、高耐久性や用紙対応力が好評で、好調に推移しました。

●新たな需要を掘り起こし
2013年は本格回復の年にする


──今年の施策をうかがいたいと思いますが、まずは、販売戦略を聞かせてください。現在、どのような分野に売れているのか、今後、売り込みをかけるマーケットはどこなのかを教えてください。

山根(リコージャパン) 新製品が出揃ったところなので、その製品を商材に新しいソリューションを展開していきたいと考えています。近年、TCO削減を目的に、プリンタをMFPに統合する動きがあります。しかし、統合することがセキュリティ面や使い勝手の面からマイナスになるケースもあります。そこで、MFPへの集約に対して、プリンタとMFPを組み合わせて適切に使い分ける分散の最適配置を提案するなど、一般オフィス向けの提案をしっかり取り組んでいこうと考えています。

 昨年5月には企業向けクラウドプリンティングサービス「FlexRelease CX」を開始しました。これは、クラウド上にアップロードしたデータを、対応する複合機やプリンタからインターネット経由でプリントできるサービスです。出先の拠点などでもネットワーク環境に依存しないで印刷ができます。こうしたサービスを、モバイルやスマートデバイスを活用してワークスタイル変革に取り組むお客様に提案していきます。

 また、当社は「リコー カンタン私書箱プリント」というアプリケーションを提供しています。これは、パソコンから印刷指示したデータをプリント機器本体に蓄積。本体で確認してから印刷することで、プリント時のうっかりや放置プリントを防止するとともに、ロケーションフリーでの印刷が可能となり、業務の効率化とコスト削減に貢献しています。

大澤(ブラザー販売) 当社のお客様の多くは社員数5人程度までのSOHOの方々で、家電量販店での販売が比較的多めでした。一方、2011年6月に販売を開始した「JUSTIO PRO」シリーズは、特定販社に向けた製品で、発売を機に、販売パートナー様との関係強化に取り組んでいます。

 昨年、この場で目標は100社のパートナー獲得を宣言しましたが、すでに目標をクリアしており、現在は構築した協力関係をさらに強化していくために、さまざまな施策を進めています。とくに、今年は社員数5人以上のユーザー層を開拓していくことを課題の一つに掲げています。具体的には、もともと強みとしている建設、不動産などのユーザーをさらに開拓し、学校、塾などの文教分野をターゲットと考えています。われわれにとってSOHO以上の層の市場は未知のものであり、チャレンジャーの立場ですから、パートナーの方々の力を借りて、市場開拓に取り組みたいと考えています。

【OKI data】
モバイル・クラウド化というコンピューティングの変化は当社にとってチャンス。
このような時こそ進取果敢にパートナー様と新たな価値創造しビジネスを拡大していく。

OKIデータ
国内営業本部
マーケティング部 部長
森 孝廣 氏


商品企画、チャネル戦略、販売促進、SCM、さらにSE的な技術支援などを含む国内のマーケティングを担当する。


【Strategic Model】
カラー/モノクロLEDプリンタ、複合機を「COREFIDO(コアフィード)」ブランドで展開。これにページプリンタ「MICROLINE」ブランドとドットを合わせて全36機種をラインアップする。昨年は全機種に5年保証を付けた「COREFIDO」の4機種を発売した。シンプルかつメンテナンスの容易さを特長とする。

COREFIDO MC362dn
(A4カラーLED複合機)

モノクロ:24枚/分
カラー:22枚/分
用紙サイズ:A4
参考価格(税込):118,440円

COREFIDO C811dn
(A3カラーLEDプリンタ)

モノクロ:35枚/分
カラー:35枚/分
用紙サイズ:A3
参考価格(税込):144,900円

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外部リンク

エプソン販売=http://www.epson.jp/

OKIデータ=http://www.okidata.co.jp/

キヤノンマーケティングジャパン=http://canon.jp/

日本ヒューレット・パッカード=http://www8.hp.com/jp/ja/home.html

ブラザー販売=http://www.brother.co.jp/