Special Issue

<プリンタメーカー座談会 2013>2013年は本格的な回復を目指す年になる!

2013/02/28 19:56

週刊BCN 2013年02月25日vol.1470掲載

●他社の気になる技術やサービスとは?

──業界を代表する方々にお集まりいただいたせっかくの機会でもありますし、ここで少し話題を変えて、気になる他社の技術・機能やサービスについてお互いに質問する時間を設けたいと思います。

松本(日本HP) それでは、ビジネスインクジェットについて、ぜひ、エプソンさんにおうかがいしたいのですが、実際、ビジネスとして採算は取れているのでしょうか?

鈴村(エプソン販売) これまでインクジェット製品はコンシューマ向けブランドとみられていましたが、その意識が変わってきたという手応えを感じています。

 私からは、製品の5年保証をうたっておられる各社の方々にお聞きしますが、採算は取れるのでしょうか?

森(OKIデータ) 1台あたりでは難しいですが、想定以上の販売成果がでていますので全体としては計算が成り立っています。もちろん、個々には想定外のケースもありますが。また、単なる販売面だけでなく、モノづくりのメーカーとして、社内の品質意識の向上にもつながるという間接的な効果もあります。

大澤(ブラザー販売) 当社も5年保証を打ち出すことで、より上位のユーザー層を開拓することができました。その意味からもコストを超えるビジネスへの貢献があります。

──OKIデータの森さんは、何か他社の技術などで興味を引かれるものはありますか?

森(OKIデータ) 日本HPさんのハードウェアに依存せずに新機能を追加したり、機能拡張できるという「Future Smart ファームウェア」は素晴らしいと思いますし、気になりますね。

松本(日本HP) お褒めいただき、ありがとうございます。「Future Smart ファームウェア」はクラウド・ウェブとの連携を念頭において開発されたプリンタOSです。このOSを搭載するプリンタであれば、ワークフロー改善など、新製品に搭載した機能を旧機種でも使うことができます。これによって、お客様のプリンタ資産を将来にわたって有効に活用いただくと同時に、大規模ユーザー様のプリンタ管理工数を低減できます。

──キヤノンMJの石渡さんは、何か気になることはありますか?

石渡(キヤノンMJ) ビジネスインクジェットをビジネスにしておられる各社さんにお聞きしますが、自社のレーザー製品の市場への影響をどのように考えていらっしゃいますか?

山根(リコージャパン) 当社の「ジェルジェットプリンタ」は業種に特化した販売を中心としているのですが、レーザー製品とビジネスインクジェットでそれぞれの特徴にあわせた用途提案をしており、レーザー製品と市場を奪い合うという感覚はないですね。

鈴村(エプソン販売) 確かに、SOHOのレベルでは市場を食うという面もありますが、意外に変わらない部分もあります。

大澤(ブラザー販売) 当社もA4製品は多少の影響があるものの、A3のインクジェットについては明らかにシフトしたということはありません。

松本(日本HP) 当社は現在までレーザープリンタはエンタープライズ、ハイエンドを中心にご提案してきた傾向にあり、ビジネスインクジェットの市場と重複してくるということはあまり感じません。

──特定用途ではなく、本筋の一般オフィス市場でのプリンタ販売については、どう感じられておられますか?

鈴村(エプソン販売) これからは、クラウド化、BYODの流れがオフィス市場を変えていくと考えています。お客様にとって使いやすさを提供することで、大きな市場が新たに創出されると考えています。

森(OKIデータ) 私は、コスト削減といったマイナス思考ではなく、業務改善としてのアプローチを採っていくべきだと考えます。

石渡(キヤノンMJ) 私はケース・バイ・ケースで、一般のオフィス市場といっても一概にひとくくりにはできないですね。

われわれにとってSOHO以上の層の市場は未知のもの。
パートナーの方々と協力して、チャレンジャーの立場で市場開拓に取り組む。

ブラザー販売
マーケティング推進部長 兼
戦略事業推進プロジェクト
プロジェクトマネージャー
大澤 敏明 氏


ビジネス向け複合機、インクジェットプリンタ、レーザープリンタなど国内向け商品の企画と広報宣伝を担当する。


【Strategic Model】
「JUSTIO」ブランドで、インクジェット21機種、レーザー20機種をラインアップ。2012年8月にインクジェットプリンタの新ブランド「PRIVIO(プリビオ)」を立ち上げた。11月には最高100枚/分のA4モノクロプリントを実現した「HL-S7000DN」を発売し、高速インクジェットプリンタ分野に新参入した。

MFC-J6710CDW
(A3インクジェット複合機)

モノクロ:12枚/分
カラー:10枚/分
用紙サイズ:A3
参考価格(税込):59,980円

MFC-8520DN
(A4モノクロ複合機)

モノクロ:最高36枚/分
用紙サイズ:A4
参考価格(税込):55,000円


松本(日本HP) 当社では、前述したIITO(Ink In The Office)を打ち出していますし、レーザーでなくてもよいと考えるユーザーさんも実際におられます。われわれがどうこう言うのではなく、性能とコストのバランスを考えてユーザーが選択すべきものと思います。

大澤(ブラザー販売) コストパフォーマンスだけをアピールしても、なかなか難しいですね。そこで、ウェブ会議やスキャナなどとの連携ソリューションで、業務改善効果をアピールする提案を行っています。

森(OKIデータ) 皆さんにお聞きしますが、A3とA4の製品をどのように売り分けておられますか?

山根(リコージャパン) A4出力と比べ、A3出力が圧倒的に少ないのは事実ですが、A3のドキュメントは必ずあるので、現状はA3機を導入していただくケースが多くなっています。

大澤(ブラザー販売) 当社はこれまでA4だけをラインアップしていましたが、ようやくインクジェットでA3製品を投入したところです。やはりビジネス分野では根強い需要があると思います。

鈴村(エプソン販売) 当社はかつてはA3中心のラインアップでした。しかし、現在の市況を考えるとその根拠も希薄になっています。ユーザー意識の変化で、むしろA4の高耐久製品を求める志向が強くなっていると感じます。

石渡(キヤノンMJ) 日本の業務市場では、まだA3機が必要という認識が根強く残っていると感じます。ただ、実際にどれだけA3を出力しているかということとは別ですが。

松本(日本HP) 大は小を兼ねる、という意識が日本ではあると思います。当社は外資のお客様が多いこともあって、A4が中心です。

鈴村(エプソン販売) 製品として複合機をもっているとA3を意識しますが、そうでなければA4でもよいのではないかと思います。

●理想のパートナーは
お客様視点で考えて提案できる販社


──最後に、求めるパートナーの理想像について聞かせてください。

鈴村(エプソン販売) プリンティングの価値をどれだけうまくお客様に伝えていただけるかという点ですね。コスト削減やモバイルデバイスの普及で、プリントは減っていくという見方もあるようですが、決してそんなことはありません。業務改善あるいは業務効率を高める効果があることをしっかりとお伝えし、具体的な提案につなげていくことができる。そんなアイデアをもつ方々と一緒になって、ビジネスを盛り上げていきたいですね。

山根(リコージャパン) ドキュメント出力の用途はまだまだ広がっていくものと思っています。出力用途に応じてソリューション提供の領域をさらに拡大していくために、お互いにノウハウを持ち寄り、協力してソリューションを創造していけるパートナー様が理想です。

森(OKIデータ) これだけはどこにも負けない、という強みをもっているパートナー様です。また、われわれと一緒になって、根気よくお客様の課題解決に取り組んでいただける方々を強く求めています。

石渡(キヤノンMJ) やはり、エンドユーザーをしっかりと見据えているパートナー様です。マーケティング活動を通じてそのニーズを的確に吸い上げて、われわれにもフィードバックしていただくとともに、しっかりと販売に結びつけていくことができる。そんなパートナー様を理想としています。

松本(日本HP) われわれとWin-Winの関係を築いていくことができるパートナー様ですね。そして新たなビジネスモデルを構築していくことができる販社の方々を理想としています。

大澤(ブラザー販売) きちんとコミュニケーションを取ることができ、お互いに協力し合えるパートナー様です。ユーザー様のニーズをしっかりとらえ、われわれとともに解決策を探していけるパートナー様と積極的に関係強化を図りたいと考えています。

──本日は長時間、ありがとうございました。

【Ricoh】
新製品を商材に新しいソリューションを展開する。
得意とする医療、流通など、業種に特化した機能とソリューションを提供していく。

リコージャパン
MFP・プリンター事業センター
プリンター事業推進室 室長
山根 浩一 氏


レーザー、ジェルジェットなどプリンタ製品を専業にマーケティングを担当する。


【Strategic Model】
レーザープリンタ27機種、ジェルジェットプリンタ7機種に加え、マルチファンクションモデルやプロダクションプリンタなどをフルラインアップ。昨年10月には主力のレーザー製品を一新し、A3カラーレーザー「IPSiO SP 830/831シリーズ」や「IPSiO SP 730/731シリーズ」、A3モノクロレーザー「IPSiO SP 8300Nシリーズ」などを展開している。

IPSiO SP C731
(A3カラープリンタ)

モノクロ:32枚/分
カラー:32枚/分
用紙サイズ:A3
参考価格(税別):208,000円

IPSiO SP C831
(A3カラーレーザープリンタ)

モノクロ:50枚/分
カラー:50枚/分
用紙サイズ:A3
参考価格(税別):468,000円

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外部リンク

エプソン販売=http://www.epson.jp/

OKIデータ=http://www.okidata.co.jp/

キヤノンマーケティングジャパン=http://canon.jp/

日本ヒューレット・パッカード=http://www8.hp.com/jp/ja/home.html

ブラザー販売=http://www.brother.co.jp/