小・中・高校、大学などの教育機関で、ITシステムの導入が進んでいる。2009年度補正予算で「スクールニューディール構想」が提唱されて以来、多くの学校施設でパソコンや校内LAN環境が整備され始めた。また、文部科学省が2020年中の実現を目指す「教育の情報化ビジョン」の重点政策として、タブレット端末を使った電子教科書の導入が掲げられるなど、文教市場への注目度はますます高まるばかりだ。
文教市場の盛り上がりをみて、新たな商機を見出そうとするベンダーは多いが、留意しておくべき点がある。学校施設のICT化を提案する際、念頭に置かなければならないのはセキュリティ対策だ。とくに、大学などのキャンパスでは、学内の共用施設に無線LAN環境を構築するケースが増えており、学生の持ち込みパソコンやスマートフォンを通じた情報漏えいを防がなければならない。
このような文教市場のニーズに応えるため、ベンダー各社はさまざまな提案を進めている。例えば、世界的なネットワーク機器メーカーの日本法人であるディーリンクジャパンでは、高速ギガビット対応のスイッチ/ルータを提供し、文教市場での導入実績を重ねている。これまでは、教職員と児童・生徒のネットワークを物理的に分ける方法もあったが、導入コストや管理・運用の手間という点から課題もあった。しかし同社製品の場合、利便性を損なわずに、マルチSSIDやVLANで教職員と児童・生徒のネットワークを分離できるなど、確実なセキュリティと高い運用性を兼ね備えている。
一方、ITセキュリティベンダーの動きも活発だ。長年にわたって文教市場にフォーカスした営業施策を展開するエフセキュアでは、これまで提供してきたスイートパックの製品構成やライセンス体系などを変更し、導入への敷居をより一層下げている。とくにライセンス体系については、小中高校向けライセンスが無制限のインストールに対応しているほか、キャンパス向けライセンスが100ユーザー単位で導入できるなど、「売りやすい商材」としての訴求力がさらに高まっている。
政府が学校施設のICT化に本腰を入れていることから、国内文教市場は今後も着実に拡大していくとみられる。文教市場を攻略するためには、「セキュリティ」や「売りやすさ」などがカギになりそうだ。