Special Issue

日本事務器、SIerならではのプラットフォームを提案、SDNとクラウド運用支援に力を注ぐ

2013/06/27 19:55

週刊BCN 2013年07月15日vol.1489掲載

 日本事務器(NJC、田中啓一社長)は、情報システムの基盤(プラットフォーム)事業で、SDN(ソフトウェア・ディファインド・ネットワーク)構築とクラウド型の運用支援サービスの提案に力を入れている。どちらのサービスも、複雑になったシステムを簡単に、しかも安全で安定して運用するためのサービスで、これからユーザーの関心が高まる分野だ。総合SIerが力を入れるプラットフォームビジネスについてたずねた。

SDN構築ビジネスを本格展開

 NJCは、総合SIerとしてさまざまな業種のユーザーに対して、基幹系、情報系を問わず、数多くのITソリューションを提供している。なかでも、プラットフォームの構築・運用事業は、NJCの基幹ビジネスだ。NJCは、自社がもつプラットフォーム系ITサービスを、(1)ITシステム基盤(2)セキュリティ対策(3)運用管理(4)ネットワーク/通信(5)クラウドサービスの5カテゴリに分けて、ユーザーに提案している。NJCが今力を入れているのが、次世代ネットワークとして注目されるSDNの構築サービスと、クラウド型運用支援サービス「Ezharness(イージーハーネス)」だ。

 SDNは、情報システム管理者がソフトウェアの操作だけでネットワークの構成を容易に変更できる仕組みのことで、管理業務を削減することができる。仮想化技術を導入したシステムでは、ネットワークの変更作業が頻繁で、管理者にとっては大きな負担。SDNはその課題を解決する仕組みとして注目を集めている。

 事業推進本部プラットフォームソリューション事業推進部の高井俊彦部長は、「仮想化は、サーバーに始まり、ストレージとデスクトップ(端末)に広がっている。次の(仮想化の)対象はネットワークになる」と言う。

 「SDNは、対応機器が高価で導入するユーザーは、超大手企業や学術機関に限られている。だが、最近では中堅クラスの企業・団体でもいくつか導入事例をみかける。これから本格的な商戦期だとみている。当社のお客様からも引き合いが出ており、とくに病院からの問い合わせが多い」とビジネスチャンスを実感している。まずは、病院にターゲットを絞って提案活動を強化する戦略を立てた。病院のネットワークは、電子カルテなどの大容量データを適切なネットワークを選んで流す必要があり、SDNのニーズは他業種よりも旺盛だ。「今年度(14年3月期)中に、必ず導入事例をつくる」と高井部長は意気込む。

 NJCは、ユーザーに提案する前に自社導入し、利点と問題点を見つけて提案力を強化することをポリシーとしている。すでにSDNを社内導入するプロジェクトが始まっており、今年7~9月には実装する予定だ。そこで培ったノウハウを提案に生かしていく。

SIerだからこそできるクラウド

 SDN構築と同様に、NJCが強化しているプラットフォーム事業が「Ezharness」というクラウド型運用支援サービスだ。

 「Ezharness」のコンセプトは、「必要な時に必要な分だけ、安価で簡単に利用できるクラウド」というもの。低価格で迅速にITリソースをユーザーに届けることができることを強みとしている。アマゾンウェブサービス(AWS)のクラウドと、NJCのサービスを組み合わせたもので、昨年10月に第一弾として、遠隔地にユーザーのデータをバックアップする「Ezharness StoragePlus」を発売した。

 「Ezharness StoragePlus」は、ユーザーのデータをAWSのクラウドにバックアップするサービスである。事業推進本部プラットフォームソリューション事業推進部の黒田昌明シニアエキスパートは、「クラウド設備を貸し出すサービスはたくさんあるが、『Ezharness』はすぐに使える状態にして提供し、運用も支援する。例えば、データが正常にバックアップされているかどうかの確認作業は、ユーザーが行うのが一般的だが、『Ezharness』では私たちが代行する。こうしたきめ細かい部分を付加して提供しているのが、単なる“箱貸し”ではない特徴」と語る。

黒田昌明シニアエキスパート

 月々3900円(10GB)からという低価格と、バックアップ時間の短さもユーザーから高い評価を得ているポイントだ。「新規ユーザーからは安さが好評で、他社からの乗り換えユーザーからは、バックアップ時間の短さを認めてもらっている。あるユーザーの例では、バックアップ時間を4分の1に短縮することができた」(黒田シニアエキスパート)。

 「Ezharness StoragePlus」が順調にユーザーを伸ばしていることから、今夏にはデータだけでなく、システムの実行環境を含めてバックアップするディザスタリカバリ(災害対策)サービス「Ezharness DRReady(仮称)」と、IaaSでユーザーのシステムを実行・運用する「Ezharness HostingPlus(仮称)」を発売する。高井部長は「当社民間企業のお客様の30%には『Ezharness』を導入したい」と強調し、拡販に向けて意欲的だ。

「Ezharness」全体のイメージ図

 NJCが今年度新たに力を入れる次世代ネットワーク構築事業とクラウド。どちらのサービスも先進のIT技術とNJCがこれまで培ったSIノウハウが詰まったものだけに、他社ではなかなか真似できないだろう。NJCの総合SIerとしてのポジションをますます強固にする武器になりそうだ。

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外部リンク

日本事務器=http://www.njc.co.jp/

「Ezharness」