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<ストレージ特集>ハイブリッド化でボトルネックを解消 技術革新が急ピッチで進む

2013/08/26 15:49

週刊BCN 2013年07月22日vol.1490掲載

 ストレージの技術革新が急ピッチで進んでいる。フラッシュメモリやSSD(半導体ドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)などを統合的に組み合わせることでコストとスピードを両立。最小限の投資で高いパフォーマンスを引き出す複合型ストレージが注目を集めている。高速処理を求められる部分に処理速度が速いフラッシュアレイを使うとともに、それほどスピードを求められない部分にはHDDを使ってコストを抑える。さらに、これらの異なるストレージメディアを統合的に制御することで、大容量で高速処理が可能なハイブリッドストレージとして機能させる仕組みだ。

HDDやSSD、フラッシュアレイを複合化

 クラウドをはじめとする現代のコンピューティングで、ストレージの処理能力の限界は、ややもすればシステム全体の「ボトルネック」になっていた。端的な例は、HDDのようなスピンドル(可動軸)機構をもつディスク媒体のI/O(インプット/アウトプット)の遅さだ。物理的な機構が存在するために、I/Oの飛躍的な高速化は制約が大きい。これを補うために登場したのがHDDと互換性の高いSSDであり、HDDに比べて30倍近い処理速度を出せるフラッシュアレイである。

 現段階で最も処理速度が速いメモリはCPUと直接連動して動くDRAM系であるが、電源を切ると記憶を保持できない。だが、インメモリデータベース(インメモリDB)のように、小型化したDBをDRAM上で動かす技術も進展しており、高速なDB処理が必要な場合はインメモリDB方式を使うケースが増えている。DRAMの次に処理速度が速いのは、ストレージのマザーボード(主基盤)に直接接続して使うフラッシュアレイで、同じフラッシュメモリを使う方式ではあるが、HDDとの互換性を重視したSSDよりも処理速度が速い。フラッシュメモリなので、電源を切っても記憶が保持されるという大きな利点もある。

 記憶保持型のストレージで最も価格が高いのはフラッシュアレイで、その次にSSD、HDDという順番で続く。HDDのようにリアルタイムで読み書きできるわけではないが、磁気テープバックアップも低価格・大容量ストレージとして現役で使われている。


スピンドルの限界をなくす

 近年はHDDが大容量化し、価格も下がっていることから、テープバックアップの代替としてHDDストレージを活用するケースが増えている。大容量・低価格のHDDストレージは、構造上、高速処理は難しいものの、オフラインメディアであるテープに限りなく近い使い方が可能であることから、オフラインに近いオンラインメディアという意味で「ニア(近い)ライン」ストレージと呼ばれている。一方、メインのストレージは高性能HDDとSSDを組み合わせた「そこそこの処理速度があって、価格も手頃」なタイプで、さらに高速処理が必要な場合は、フラッシュアレイを部分的に使うことで、ストレージのボトルネックを解消する手法だ。主要メーカーでは、こうした異なる特性と役割をもつストレージを、あたかも一つのストレージであるかのように統合化するハイブリッド制御技術の開発が急ピッチで進んでいる。

 将来、量産効果によってフラッシュアレイやDRAMの価格が一段と下がれば、ボトルネックとなるHDDのようなディスク媒体をなくす「スピンドルレス」(図参照)へ移行していくものと予測されている。次世代のMRAMのような半導体が量産されるようになれば、従来のスピンドル機構をベースとするストレージは大きく変化し、メーカーやSIerに新しいビジネスチャンスをもたらすことが予想される。

 次の記事では、ストレージ製品の中核部品であるHDDやSSD、NANDフラッシュメモリのすべてを自製する東芝グループの取り組みをレポートする。

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