2001年、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)がグループ初の海外子会社として設立した京瓷信息系統(上海)有限公司(KCSS)は、中国に事業所を置く企業向けに開発した販売管理パッケージ「GROW-PBS」を提供している。経営管理の高度化を迫られる中国企業向けにこの製品を販売しながら、将来は必要なモジュールを追加していき、統合ERP製品へと進化させる計画だ。
中国における経営管理の高度化とユーザーニーズにも柔軟に対応

中井一夫
総経理 KCSSが中国市場に投入した販売管理パッケージ「GROW-PBS」は、中国に事業所を置く中小の販売会社向けに開発した製品だ。今年8月に提供を開始している。販売・在庫・購買のプロセスを管理する基本的な機能を搭載し、日中両方の言語・通貨に対応。中国の多くの企業が採用している用友ソフトや金蝶国際ソフトグループの中国製会計関連製品とも仕訳データの連携ができる。
KCSSの中井一夫総経理は、「中国のあるリサーチ企業の調査によれば、販売管理系ソフト市場は毎年15%以上伸びている。これは、中国で事業を展開する企業に、経営管理の高度化が求められている証拠だ。人件費の高騰から、事務系の管理業務で、人海戦術で乗り切る方策を採りづらくなったということでもある」と、市場環境の変化を語る。
中井総経理によれば、「GROW-PBS」の競合製品には、日本でも有名な製品が多数あるという。これらの製品と差異化するために、中国製ソフトとの連携や、個々のユーザー企業のニーズに合わせるカスタマイズの簡易性に力を注ぎ開発してきた。「結果として、『GROW-PBS』は多くのニーズに柔軟に対応できる製品になった。10年以上にわたる現地での経験が生きた」(中井総経理)という。
中小の販売会社をターゲットに導入しやすく使いやすい製品を
KCSSの岑康萱副総経理は、主に中小の販売会社をターゲットにする「GROW-PBS」の強みについて、「日本から進出してきた販売企業は、当初は小規模の事業所から始められることが多い。これは、地元のローカル企業も同じ。大企業向けの高価なパッケージよりも、価格が安く、導入がしやすい『GROW-PBS』のような製品が合っている」と語る。実際に「GROW-PBS」の価格は、代表的な販売管理パッケージの5~6割だという。
「GROW-PBS」の販売は、当面、日系企業を中心にアプローチする。「上海の日系人口が7000人減ったといわれるが、ビジネス人口は増えている。新たな工場の進出はさほど目立たなくなったが、販売企業は増加している。こうした企業のITシステムは、スモール & クイックスタートが必須。そのニーズに全面的に応える製品として、『GROW-PBS』を開発した」と、中井総経理は自信をみせる。
中国の現場を知る企業ならではの統合ERPパッケージへと進化
「GROW-PBS」のもう一つの強みとして、今後も機能が進化していくことが挙げられる。「販売管理系製品としての基本機能に加え、ハンディターミナル対応の在庫機能や人事管理、固定資産管理、CRM、簡易BIなどの機能を順次追加していく。新しく加わる機能をスマートデバイス対応にしていくことも計画している。これらが実現すれば、『GROW-PBS』は統合基幹業務パッケージと呼ばれる製品に進化する」と、岑副総経理は強調する。今後、中国人のスタッフが働く現場でのニーズを逐一汲み取りながら、生産管理モジュールなどの機能強化を進めていく方針だ。
中国の事業所のニーズを詳細に把握しながら製品を進化させていくことで、日系企業だけでなく、現地ローカル企業への販売も視野に入れる。「中国での十数年のシステム開発経験、システムサービス経験、日本レベルの品質を維持する開発・サポート体制を生かし、中国では比較的新しい販売管理パッケージの分野に進出することで、企業の業務効率化、コスト削減をサポートしていきたい。『GROW-PBS』を使っていただくことで企業の販売活動が最適化され、豊かな社会の構築に貢献することが我々の願いである」と、中井総経理は説明する。
今後、クラウドサービス市場が中国で活発になることも想定しながら、KCSSは周到に「スタンダードパッケージ」づくりに取り組んでいく。
「GROW-PBS」の名に込めた思い
「GROW-PBS」の「GROW」は、「Grow up」「Rapidly」「On-demand」「Widely」という四つのキーワードの頭文字を取ったもの。「迅速に成長するユーザー企業のニーズに合わせて貢献するシステムでありたい」という思いを込めている。また「PBS」は、「Prompt Business Start-Up」、つまり「ビジネス立ち上げ迅速化のための業務システム」の意味。