IBMのIaaS「SoftLayer」に続き、日本IBMは昨年6月、SoftLayer上で提供するPaaSの「IBM Bluemix(Bluemix)」も正式にリリースした。既存のITベンダーがクラウド時代の市場で生き残るうえでは、クラウドアプリケーションの開発能力が大きな武器になる。そして、これを支えるのがPaaSだ。有力なPaaSとして市場をリードするBluemixのポテンシャルを探った。

IBMのソフト/ミドルウェアを手軽に使える魅力

 昨年6月のリリース以降、Bluemixは順調にユーザー数を拡大している。しかし、ここにきて、使われ方に変化がみられるという。江木典之・クラウド事業統括クラウド・ソフトウェア事業部第二テクニカル・ソフトウェア部長は、「これまでは、ちょっと“お試し”で使ってみようというユーザーが多かったが、ここ1~2か月の動きとして、業務アプリを開発して、本番環境として運用するケースが増えている。昨年12月にシングルテナントのサービス『Bluemix Dedicated』の提供を開始するなど、エンタープライズITのプラットフォームとして使ってもらうための具体的なサービスが揃ってきたことが、ユーザーのすそ野を広げている」と手応えを話す。

 Bluemixは、実行環境としてオープンソースのPaaSソフトウェア「Cloud Foundry」を採用している。先行するセールスフォース・ドットコムの「Sales force1」やグーグルの「Google App Engine」などのプロプライエタリな仕様のPaaSと比べると、そのオープン性によりロックインのリスクを回避できるのがメリットといえる。ただし、Cloud Foundryを含むOSSベースのPaaSは、近年、複数のベンダーからリリースされており、そうしたPaaSとの差異化ポイントはどんな点にあるのだろうか。同事業部の木村桂氏は、「やはりSoftLayerという柔軟性と堅牢性を兼ね備え、エンタープライズITに最適なIaaSで提供しているPaaSであるというのが大きなポイント。さらに、DB2やWebSphere、それからWatsonも含め、IBMがもっているミドルウェア、ソフトウェアの資産をクラウドで非常に価格的にも手軽に使えるのも大きな魅力だと考えている」と話す。

(上段左から)クラウド事業統括クラウド・ソフトウェア事業部 第二テクニカル・ソフトウェア 部長 江木典之 氏
クラウド事業統括クラウド・ソフトウェア事業部 エコシステム・デベロップメント 主任ITスペシャリスト 関根賢一 氏
(下段左から)クラウド事業統括クラウド・ソフトウェア事業部 第二テクニカル・ソフトウェア 木村桂 氏
クラウド事業統括クラウド・ソフトウェア事業部 エコシステム・デベロップメント マーケティング 坂井彰 氏

従来型のIBMパートナーもまずは触ってみてほしい

 Bluemixは、スタートアップや学生など、小規模なユニット、もしくは個人で活動しているようなユーザーも多い。IBMにとっては、従来のように企業向けITのビジネスに特化したパートナーとは異なる属性のデベロッパーをエコシステムに組み入れることに成功しつつある。一方で、従来型の販売パートナーにとっても、Bluemixは大きなメリットをもたらすポテンシャルがある。同事業部エコシステム・デベロップメントマーケティングの坂井彰氏は、「顧客が必要とするアプリケーションをBluemix上でスピーディーに構築し、Bluemixの付加価値サービスとして提供したいというニーズは高まっていて、実際に既存のIBMパートナーからも問い合わせが増えている。Bluemixは開発も簡単なので、既存のパートナーにもまずはとにかく触ってみてほしい」という。ただし、Bluemixの再販制度はまだ準備中。再販制度が整えば、さまざまな業務システム構築案件への活用が一気に進む可能性もある。

 また、Bluemix上では、IBMのソフトウェア・サービスのほかに、サードパーティの製品も提供している。SIerなどが業種別のシステム構築ノウハウなどを生かして、Bluemix上のサービスとしてパッケージ化して、そうしたサードパーティ製品としてのラインアップを図る動きも盛り上がりつつある。「既存のIBMパートナーが、これまで培ってきた専門性を武器に、独自商材をBluemixで手軽に構築し、グローバルビジネスの世界に打って出ることもできるはず」(江木部長)と、IBM側は幅広いITベンダーにBluemixの活用を促す考えだ。

 Bluemixを日本のIT市場にさらに浸透させるために、3月末にはユーザー会を立ち上げた。同事業部の関根賢一・エコシステム・デベロップメント主任ITスペシャリストは、「クラウドの世界は、デベロッパーが中心になってきていて、そのコミュニティをどう育てるかがキーになる。昨年盛り上がった開発コンテストを今年もやる予定だし、ユーザー会を受け皿にしてハッカソンをやったり、従来型のパートナーから新興ベンダーまで、ネットワークをどんどん広げていくための取り組みを進めていきたい」と話している。