通信機器の商社である石渡電気株式会社(石渡電気)は、「UNIVERGE Aspire UX連携・スマホ徹底活用サーバー」の販売を開始した。日本電気株式会社(NEC)のPCサーバー「Express5800」上にエス・アンド・アイ株式会社(S&I)のFMCシステム「uniConnect 3」を組み込んで、さらにNECのオフィスコミュニケーションゲートウェイ「UNIVERGE Aspire UX」と連携したこの独自パッケージシステムは、ユーザー企業が簡単にスマートフォンを内線電話として活用できる。一方で、ITに不慣れな通信系ディーラーでもストレスなく扱うことができるのは、あらかじめサーバーにOSやアプリケーションまでをプリインストールして出荷するという仕組みを活用したことが大きい。どのような背景があったのだろうか。開発の裏側に迫りたい。

Partner Business Case Study Vol.2 ビジネスホン/FMCソリューションとの融合――石渡電気株式会社/エス・アンド・アイ株式会社

●133年の歴史をもつ通信機器商社
新たな付加価値の提供を模索


石渡電気株式会社
石渡 秀明
取締役
営業本部長
 石渡電気は、1882年創業と通信機器の商社として133年の長い歴史をもつ。さまざまなメーカーの通信機器を取り扱い、多くの通信系ディーラーを確保している。とくに、NEC製ビジネスホンの販売では定評があり、UNIVERGE Aspire UXを絡めたビジネスを多く手がけている。

 ただ、ビジネスホンのリプレース期間というのは非常に長い。最近では、7~10年は使うというユーザー企業が出てきており、ときには10年以上も活用するケースがある。石渡秀明・取締役営業本部長は、「ビジネスホンのリプレースを促すには、価値を付加することがポイントになる」と説明する。そこで、10年ほど前から注力しているのが、携帯電話を社内のビジネスホンの内線電話として使えるFMCだ。

 これまで、複数のFMCシステムを取り扱って堅調に販売してきたが、最近はスマートフォンを社内のビジネスホンの内線電話として使いたいというニーズが増えている。石渡取締役は、「FMCシステムを提供するうえで重要なのは、『通話の品質』『操作性』『セキュリティ』の三つだが、これらをすべて満たすシステムというと、実際そう多くはなかった。また、ほとんどのお客様はすでにビジネスホンを使われているので、既存の資産を生かしつつ、シームレスに連携させられるものが求められた」と振り返る。そんななか、ユーザー企業に最適なシステムを提供するために目を付けたのがS&IのuniConnect 3だった。


●スマートフォンを内線化する「uniConnect 3」
実際は“黒子”としての提供がメイン


 一方、S&IではuniConnect 3をスマートフォンに最適化されたFMCシステムとして提供していた。操作性に優れ、オフィスでも外出先からでも、さらにはIP通話でも通常の携帯回線通話でも会社の内線電話番号で発着信が可能。保留や転送、共有電話帳利用、端末紛失時のリモートワイプなども簡単に行える点が特長だ。既存のビジネスホンと連携させることで、併用しながらスマートフォンの内線化を始められる利点もあわせもつ。しかし、事業の成長に伴い課題となったのは、販路拡大についてだった。村田良成・執行役員第2ソリューション事業部事業部長は、「これまでは直販を中心にユーザー企業を獲得していたが、中小企業への導入など、さらにユーザー企業のすそ野を広げていくという点で直販だけでは限界があった。実際はOEM提供という“黒子”のようなビジネスが多く、販売パートナー開拓について新たな策を講じていたところだった」と打ち明ける。

エス・アンド・アイ株式会社
村田 良成
執行役員
第2ソリューション事業部事業部長
 田崎信三・サービス本部システム開発部シニアマネージャーも、「既存のビジネスホンにuniConnect 3を連携させる際、新たにゲートウェイを設ける必要が出てくるため、コストや手間がかかり、中小企業への導入障壁になっていた」と続ける。そのため、それぞれの課題を解決すべく、通信系ディーラーを販売パートナーにもつ石渡電気と、S&Iがパートナーとして組むことになったのは自然な流れだった。

 しかし、まだ大きな問題があった。それは、石渡電気の販売パートナーである通信系ディーラーがスムーズに販売することができるかという点だった。石渡電気の石渡取締役は、「当社の販売パートナーは、サーバーの環境構築経験に乏しいケースも多く、uniConnect 3をサーバーに搭載し、さらにUNIVERGE Aspire UXとつなげるインテグレーションは、販売パートナーにとって想像以上に高いハードル。このままでは扱っていただけないと考えた」と打ち明ける。そこで、石渡電気はサーバーも扱うNECに相談。NECが提供する「Application Platform for Partners(AP for Partners)」という仕組みを活用することになった。

●大手メーカーの高信頼性で実現
簡単構築で売りやすい環境へ


 「Application Platform for Partners」は、NECがあらかじめx86サーバーのExpress5800に仮想化基盤、OS、そしてuniConnect 3、UNIVERGE Aspire UXとの接続パラメーターまでをインストールし、工場から出荷する仕組みだ。石渡電気で販売パートナーの支援を担当する飯島一嘉・営業本部営業支援部係長は、「通信の世界では、電源を入れたらすべて立ち上がるのが常識で、手順書に沿って設定するITの考え方とは大きく違う。しかし今回のように大手メーカーのNECが工場でインストールして出荷するのであれば、性能や品質面を含めて、サーバーを扱ったことのない販売パートナーでも安心して販売できる」という。このような経緯を経て、3社協業の賜物である独自パッケージシステム「UNIVERGE Aspire UX連携・スマホ徹底活用サーバー」を発売することになった。


 実際には、どのようなところで利用されるのだろうか。例えば、営業部員の多い企業や社内での内線が多い企業などでは、スマートフォンを所有して簡単に通話やスムーズな業務連絡を実現できる。また、中小企業をユーザーターゲットの中心に据えているだけでなく大企業も対象にしているため、一般オフィスに加えて施設などでも使い勝手がいい。石渡電気の石渡取締役は、「新たにアンテナを立てる必要もなく、アルバイトの方のスマートフォンを内線化するといった柔軟な対応も可能なため、映画館など商業施設での引き合いも出ている」とアピールする。

●まずは1000ユーザーライセンスを目標に
販売パートナーの広がりにも期待


 3社協業で開発した独自パッケージシステムは、一般オフィスへの導入も進んでおり、「老朽化した構内PHSのリプレース検討時に、すでに導入されているスマートフォンの活用として採用されるケースも多い」と、石渡電気の石渡取締役は満足そうに語る。販売目標は、提供開始後1年間で「1000ユーザーライセンスは堅い」と自信をみせている。

 現に販売パートナーも順調に増え始めている。石渡取締役は、「これまで140社以上の販売パートナーに対して説明会を開いていて感触もいい。数年前までFMCといえば情報収集目的が大半であったが、現在は具体的な案件相談につながっており、導入実績は確実に増えていくだろう」としている。

 今回の協業によって、石渡電気にとってAP for Partnersの採用が、ビジネスホンの付加価値を高めて販売パートナーが売りやすい環境を構築することになったことに加えて、S&Iにとっては、通信系ディーラーを経由したuniConnect 3の販路拡大につながった。NECを含めて、まさに3社の強みを生かした独自パッケージシステムが今後の市場を牽引していくだろう。

石渡電気とS&Iが評価した「AP for Partners」の価値

 石渡電気がAP for Partnersを使って3社協業で実現した独自パッケージシステムを提供することになったのは、販売パートナーである通信系ディーラーの支援を強化することにほかならない。

 「最適なパッケージシステムとして完成させるため、NECと何度も話し合った。また実際に、生産拠点のNECプラットフォームズ甲府事業所を見学し、多品種偏量生産という難しい条件のなかで高い品質を維持している技術的な数々の工夫と、社員の高い意識レベルを確認できた。すべてインストール済みの状態で工場から出荷する仕組みも、品質を担保することがいかに販売パートナーの負荷軽減につながるか考えられている。そのようなところまで徹底的に付き合ってくれるという点も、NECと組んだ大きな理由の一つ」と石渡取締役は評価する。S&Iは、「販路拡大で石渡電気とパートナーシップを組めるようになったことに加え、ビジネスホンとの連携の部分で情報開示が難しいなか、NECには多大なるご協力をいただいたことを感謝している」(村田執行役員)としている。

 「まずは今回の独自パッケージシステムをベースとしたビジネスを成功させ、それに続く形で、今後も中小企業向けに協業モデルを検討していきたい」(石渡取締役)と、今後の期待も高まっている。