「ちょっともの足りない」。着実な成長を続けるも、大塚裕司社長は常にもの足りなさを口にする。2015年は特需の反動で落ち込んだ時期があったものの、その後売り上げは回復基調で推移している。今後についても、大塚社長は東京五輪の開催に向けて、上昇トレンドが続くとみている。ただし、日本企業が海外動向に敏感になっていることから、IT投資に慎重な姿勢がみられるという。大塚商会は、そこをどう切り崩していくのだろうか。

材料的には伸びる年

──15年は日本経済が好調ということもあって、IT関連の企業の多くが好調な業績を残しています。大塚商会も4月以降業績を伸ばしていますが、この1年を振り返ってみて、どのような感想をもっておられますか。

大塚裕司 社長

ソリューションのインフラはいずれマイナンバーが担う
大塚 ちょっともの足りない。悪くはないし、伸びていますが、もっとくると思っていましたから。当社の期待値が高いのかもしれませんが、もっと上向く雰囲気が年初にはあった気がします。8月の上海株暴落で日本の株式市場も影響を受けたので、投資に慎重になる部分があるのでしょうね。最近は戻りつつありますが、9月や10月は様子見の状態が続きました。

──米国で利上げが行われましたが、その影響をどうみますか。

大塚 利上げは、2年くらい前だったらもっと市場が動いたのでしょうね。利上げが話題になってからの期間が長すぎました。この2年間で市場そのものが先読みして、動いているんじゃないですか。利上げで新興国が破たんするともいわれましたが、そこまではいかないとみています。

 思えばリーマン・ショック時には日経平均株価が7000円を切ったでしょう。今は2万円を割ったといってもその頃の3倍に近い。しかも、原油が安くなっていますから、もっと積極的にIT投資を行う時期にきているのではないかと思います。

──今年は期待できそうですか。

大塚 波風がなければ、材料的には伸びる年でしょうね。マイナンバー制度が動き出しますし、電力の自由化もある。NTTの光回線が自由化されて、本格的な需要へと結びついてくるなど、IT投資を牽引する環境がじわじわと整ってきています。

 また、日本は東京五輪を控えていますし、今年は伊勢志摩サミットもある。企業のIT投資はエンジンが止まっているわけではないですが、もっと進んでもいいという感覚があります。元気なうちにIT投資をして、生産性を上げることに取り組んでほしいと思っています。

マイナンバーでLEDを販売

──このところ注力されてきたクロスセルやセット提案では、どのような成果がありましたか。

大塚 成果という意味ではまだまだですが、最近ではマイナンバーの提案でLED照明が入ったというのがありました。マイナンバー関連では、セキュリティやシステム導入に加え、シュレッダーやパーティション、金庫など、いろいろな商品が売れています。ただ、マイナンバーは、企業にとって経費ですよね。マイナンバー対応の資金を捻出しなければいけないので、コスト削減が必要になります。LED照明に切り替えて、コストを下げようというわけです。

 マイナンバーが本格的に活用されるようになれば、マイナンバー向けのインフラが、ソリューションのインフラになります。攻めのIT投資のソリューションをそこにのせれば、経費が投資に変わる。いずれは、そこまでいくと期待しています。

──その意味では、今年もマイナンバー関連が動きそうですね。

大塚 多くの企業がまだ給与計算のところだけをみています。しばらく運用すると意識が変わってくると思います。活用範囲が広がるほど、マイナンバーの扱いが難しくなる。いずれ、担当者がマイナンバーのファイルにタッチすることなく運用できる仕組みが必要になります。当社は、そのための仕組みを提供していて、特許も取得しました。

 ただ、当社はシンプルですから、マイナンバーっていうと、マイナンバーばかり売るようになってしまいます。あまりに傾注するので“一週間禁止”としたくらいです(笑)。クロスセルよりも前に、このシンプルさを改善しなければならない。クロスセル自体も浸透してはいるものの、もっと可能性があると思っています。

ITに対する意識が変わる

──中小規模の企業では、まだIT化が進んでいないと言われています。今年は変化がありそうでしょうか。

企業におけるマイナンバーの取り扱いに必要な基本方針・取扱規程策定、取扱規程にもとづく組織の見直しや、マイナンバーに関する業務の見直しのアドバイス、社員教育用教材の提供・教育の実施、物理的・技術的セキュリティ対策、マイナンバーシステムの導入・運用をシームレスにサポート

大塚 軽減税率が導入されたら、システム化しないと対応できない。どういう例外が用意されるのかにもよりますが、しっかり運用するには、かなりの数の会社でシステム化する必要が出てくるでしょうね。

 それから、10年先にはマイナンバー制度と企業ナンバー制度の運用が確立するでしょう。イメージとしては、資金の動きなどがすべてみえるという感じです。みせたくないこともあるかもしれませんが、そうなってくると透明性を高くしたほうが対応が楽になります。ごまかすのは、無駄な作業になりますから。

 同様に、中小企業の生産性向上においては、ITの活用によって透明性を高くして、無駄をなくしたほうが、結果として多くのメリットが出ると理解される時代になるでしょう。マイナンバーのシステムは、そういうことも連想させます。

──少しずつそうなってきていると実感されているのでしょうか。

大塚 今はわかりません。10年後です。たぶん、意識が変わってくるでしょうね。ITを活用しないでなんとかするよりも、ITを利用して普通にやったほうがいいというように意識が変わるでしょう。

ビジネス系の端末は手堅い

──昨年は、Windows 10がリリースされました。ノートPCやタブレット端末の市場が活性化していると思います。

大塚 企業への導入は検証が必要なため、導入の本格化はこれからでしょう。ただ、Windows 8のときとは環境が大きく変わってきました。純粋なタブレット端末に加え、ノートPCとタブレット端末の間の役割を担うマイクロソフト製「Surface」など、多様な環境を用意できるようになりました。Windows 10自体も、Windows 7のユーザーが違和感なく使えるということで評判がいい。

──Windows 10の登場でタブレット端末が本格導入されていくという期待はありますか。

大塚 ありますね。多くの企業ではIAサーバー上でWindows系のアプリケーションが動いていますから、検証が進めばWindows 10は導入しやすい。Windows 8のときよりも、Windows 10のほうが引き合いが強いと感じています。

 直近ではPCも昨年より伸びていますが、タブレット端末はもともとの数が少ないので、伸び率が高い。とはいえ、PCも必要とされています。ビジネス系の端末は手堅いですね。


──セキュリティ関連はどうですか。

大塚 マイナンバーのほか、情報漏えい事件が相次いだこともあって、関心度が上がっています。ソリューションとしては、入り口を固めるだけでなく、入ってきたものに悪意のある行動をさせないという対応もしています。

 悪意のあるプログラムが存在しているかどうかではなく、存在しているものとしてセキュリティを考えていく。それが以前からの大きな変化でしょう。

──今年の事業戦略や目標について教えてください。

大塚 それは昨年と一緒。やることも、体制も変えません。変える必要がないからです。丸いケーキを三角に切っても丸く切っても、味は変わらない。ショートケーキなら、メインはイチゴでしょ。イチゴの味は、どのように切っても変わらない。会社も同様です。体制をどう変えても、社員は一緒ですから。継続は力です。

 中期経営計画も立てていない。ITの世界は変化が激しいし、当社はメーカーではないので。先を読んでも当たらない。先を読む時間があるなら売りに行ったほうがいい。

 ただし、増収増益にはトライします。それは企業の宿命。企業は坂道を自転車で登るしかないんですよ。成長を止めたら、会社は停滞する。リーマン・ショックのようなときもありますが、基本的に会社は伸び続けないといけません。

──最後に実践ソリューションフェアについてうかがいます。今年のテーマは「つながると見える!ひろがるビジネス。」で、昨年から「ひろがる」の部分が加わりました。

大塚 つながったら、広がるでしょ。そこが大事なんです。広がることでソリューションがより便利になっていく。そこをしっかりご紹介します。

 東京は2月3日から5日、大阪が2月17日から18日、名古屋が3月3日から4日で開催します。4月以降は、全国各地での開催を予定しています。ぜひ、ご来場ください。