「最適なストレージを最適なサイズで提供する」。誰もがそう思うはずだが、最適なストレージを選ぶだけでも容易ではない。数あるストレージを比較するには、コストの問題に加え、技術力も求められるからだ。とはいえ、ユーザー企業は最適な製品の提案を待っている。このギャップをどう埋めるべきか。バリューアディッドディストリビュータであるネットワールドの出した答えが、「PIC de POC」だ。

納品現場での作業は「もう1回つなぐだけ」

 データセンターやマシンルームなどに導入する大型の機器は、現地で組み立てることが多い。SIerやリセラーが、事前に組み立てるためのスペースを確保できないためだ。

 ところが、現地でいきなり本番の作業となれば、さまざまな課題が出てくることになる。例えば、作業時間の問題。事前に練習ができないため、組み立てに想定以上の時間がかかってしまう可能性がある。現地での作業時間には制約があるうえ、スムーズに作業が進むとは限らないため、可能であれば事前に組み立ててから納品したいところだ。

 
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三好哲生
マーケティング本部
インフラマーケティング部
データセンタソリューション課
課長代理
 また、組み立て前の製品をデータセンターやマシンルームなどに送ることになるため、運送料がかさむうえ、現場で多くの廃材が出ることになる。事前に組み立てておけば、これらの課題も解消できる。

 そこでネットワールドは、事前にキッティング作業ができる場として「プリ・インテグレーションセンター(PIC)」をパートナーに提供している。ここではネットワールドのSEからサポートが得られるため、よりスムーズにキッティング作業を進めることができる。動作検証までしておけば、納品時に慌てることがない。

 「PICをつくったのは、2013年。バリューアディッドディストリビュータには必須の設備だと考えたため。実際、パートナーから引き合いは多く、直近の1年間で50以上の実績がある」(高田悟・ストラテジックプロダクツ営業部SP1課課長)とニーズを実感している。PICでは、ラック内に組み立てて、ケーブリングの作業なども含めて、ほぼ完成の状態にして動作検証を行うため、初期不良の検出にも役立っている。納品の現場では、「もう1回つなぐだけ」(三好哲生・インフラマーケティング部データセンタソリューション課課長代理)の状態にすることを目指している。

 PICでは、外部からのアクセス環境を提供しており、SSL-VPNでセキュアにリモートアクセスができるようになっている。PICに出向かなくても、動作検証などが可能。PIC内には、16ラックが用意されていて、複数パートナーが同時に利用できるマルチテナントスペースになっている。現在は、予約でいっぱいの状態だという。

ここにしかない!?VDIのため検証環境

 総務省の主導のもと、地方自治体はセキュリティ対策のため、庁内のネットワークを大きく三つに分断するといった「自治体情報システム強靱性向上モデル」に取り組んでいる。単純にネットワークを分離するだけであれば、ネットワーク機器で対応できるが、部署によっては端末の数が増えるという問題が出てくる。しかし、新たなPCを購入しようにも机上のスペースは限られている。

 そこで注目されたのが、デスクトップ仮想化(VDI)だ。クライアント側のPCは物理的に1台だが、VDIによって複数のPCを活用する環境が構築できるからだ。また、一般企業においても、セキュリティ対策や運用効率化の一環として、ユーザー環境をサーバー側で一元的に管理できるVDIの採用が増えている。自治体でVDIの導入が進んだことが実績となり、今後は一般企業でも注目されることになりそうだ。

 ただ、VDIで難しいのは、サーバー側の設計である。例えば、1000ユーザーが快適に利用できるようにするには、どのようなサーバー環境が最適なのかを説明できる汎用的なデータはない。机上で計算できるとしても、利用するアプリケーションによって必要な環境が変わってくるからだ。ユーザーの環境を再現するのも簡単ではない。

 そこでネットワールドは、PICに検証センターを用意した。名づけて、「PIC de POC」である。

 「専用ラックを用意して、ハイスペックなサーバーを16台とストレージ、10Gbpsのファイバーチャネルなどで検証用環境を構築。このような環境を常設しているところは、ほかにないのではないか。VDI環境は評価してみないとわからない点が多い。また、負荷の度合いなど、利用環境によって選ぶべきストレージも変わってくるため、SIerやリセラーが判断するのは容易ではない。当社のパートナーであればPIC de POCを無償で利用可能なため、常に最適なVDI環境をユーザーに提供することができる」と、高田課長はアピールする。
 
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主要6社のストレージを検証できる「PIC de POC」。
シスコシステムズの「Cisco UCS」サーバーと各種ストレージ製品でコンバージドインフラ基盤を構築している

 PIC de POCでは、2000ユーザーまでのVDI環境に対応できる環境を構築。Login VSIというIOシミュレーションソフトを活用し、パフォーマンスを検証する。

 「Login VSI は、VDI環境に対して実際にワークロード(負荷)をかけて、そのレスポンスタイムなどを解析・評価する業界標準のベンチマークツール。VDIの台数分を設定して、ブートする試験を行うケースは多いが、それだけでは実環境での稼働が保証できない。PIC de POCでは、本当に台数分のログインを実行して、アプリケーションを動かすのと同様の負荷をかけて検証している」(高田課長)。アプリケーションも一つではなく、Officeアプリケーションが中心なのか、CADを使うのかなど、ユーザーの利用環境を想定して検証を進めている。三好課長代理によると、「日々の利用によって、ユーザープロファイルのデータ量が増える。このデータ量も考慮する。また、ウイルススキャンを同時に起動したらどのようになるのかなども検証する。これらによって、ようやく網羅的な検証となる」のだという。
 

そのストレージの設定は根拠があってのものなのか

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高田 悟
ストラテジックプロダクツ営業部
SP1課
課長
 「VDI環境の構築で最も難しいのは、ストレージの選択。ユーザー環境によって要件が大きく変わるので、単純には選択できない。また、ストレージの特性も考慮することが求められる。重要なのは、同じカテゴリのストレージでも、製品によって特性が大きく変わるということ。それを把握していなければ、最適なストレージは提案できない」と高田課長。主要6社のストレージを取り扱っているからこそ、その言葉には説得力がある。

 ストレージの設定についても同様で、検証環境をもっていることで「根拠のある設定内容で説明できる」(三好課長代理)体制にある。最適なストレージを選択し、最適な設定ができるというわけだ。ネットワールドはもともと、各社のストレージの特徴をSEがしっかり把握することで最適な提案ができる体制を整えている。SIerやリセラーがそれぞれの違いをしっかり評価するのは難しいため、ネットワールドはバリューアディッドディストリビュータの役割として、体制強化に努めてきたのである。

 また、最適なストレージの提案は、VDIに限った話ではない。ニーズに応じて、最適なストレージを検証することが可能だ。「ネットワールドのチャレンジとして、さまざまなソリューションを検証していきたい。新たなビジネス展開のきっかけとなることを期待している」と語る高田課長は、検証データをパートナーと共有することで、案件獲得につながるようなシナリオも描いている。
 
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ずらりと並ぶストレージ評価は3か月ほどで完了

 PIC de POCでは、ネットワールドが扱っている主要6社のストレージがずらりと並んでいる。各ストレージについて網羅性のある評価は、3か月ほどで完了できる体制になっている。三好課長代理によると、「PIC de POCでは、ストレージを使い始めて5年が経過しても快適に運用でき、クレームが出ない環境を用意する」ことにも注力しているという。

 PIC de POCは、前述したとおり、ネットワールドのパートナーであれば無償で利用できる。「PIC de POCの利用には特別な条件はない。あえて挙げるとすれば、ニーズが多いので予約が必要になるということくらい」と高田課長。まずは、VDIを戦略的に展開するパートナーに積極的に提供していく考えだ。
 

編集長の眼 トレージごとに特性があるのは本当か

 ネットワールドは、PIC de POCで得た検証データをメーカーやパートナーに公開している。検証したデータを共有することで、各社のビジネスに役立ててもらうのが狙いだ。

 ということは、検証データを確認すれば、ある程度は最適なストレージを提案できるようになるのだろうか。検証データからは、カタログや製品コンセプトだけでは把握できない特性が浮かび上がってくるのだろうか。各社のストレージには、どのような特性があるのかも気になるところ。次回以降では、PIC de POCで検証した結果から、カタログや製品コンセプトだけでは把握できない各社のストレージの特性を紹介していく。