福岡情報ビジネスセンターの武藤元美代表取締役は、「絶滅危惧種“SIer”の反撃~もう業者扱いはさせない!!DXを好機と捉え、不本意な現実をエコシステムで好転させる~」と題した特別講演で、「人間関係がプロジェクトの成否を決めるカギになる」と指摘。デジタル変革を行うためのプロジェクトで、SIerやユーザー企業がまず重視すべきは、参加メンバーの人間関係が機能しているか、という点だと話した。

 DX推進の流れの中、老朽化、ブラックボックス化した基幹業務システムを刷新するDXプロジェクトが注目を集める。ところが、同社のもとに「失敗寸前のプロジェクト」「末期状態のプロジェクト」が持ち込まれることも少なくない。
 
武藤元美
代表取締役

 失敗、末期のプロジェクトの典型例は、ユーザー企業の担当者が「自分の任期中は現行システムに大きな手を加えたくない」と消極的になった、そもそもユーザー企業の経営者がITに関して勉強不足で、ただ「デジタル変革をしろ」と中身の薄い指示を出しているケースもある。問題はユーザー企業側だけではない。SIerもプロジェクト遂行の責任ある立場になることをリスクと捉え、自ら進んで二次請け、三次請けになる姿も見られる。「これでは本来うまくいくはずのDXも、ダメになってしまう」とした。

 そこで、福岡情報ビジネスセンターが着目するのは、人間関係の再構築である。具体的には、ITに疎い経営者であれば、情報担当役員を置いてもらう。プロジェクトに消極的なメンバーには担当をほかに代わってもらう。そして、ベンダー側の立場でプロジェクトを引き継いだSIerが責任を全うすること。武藤代表取締役が引き継いだあるプロジェクトでは、朝から晩まで現場に張りつき、ユーザーの役員やスタッフ、情報システム担当者に粘り強く働きかけて、必要な協力を取り付ける。「関係する誰もが武藤からは逃げられないと思うまで語りかけていく」ことで、プロジェクトを再び軌道に乗せた経験を持つ。

 別のプロジェクトでは、ユーザー企業の役員会で情報担当役員が「ライバルがあるERPを稼働させたので、当社も採用してDXを推進する」と言ったのを聞いて、「今から同じERPを入れても本格的に稼働するのは早くて3年後。そのライバルがERPの導入を決めたのは今から3年前。都合6年も遅れてどうやって競争に勝つのですか」と、競争に勝つという一点に絞ってプロジェクトを見直す方向に持っていった。

 SI業界の関係者が多く集まる会場では、武藤代表取締役の失敗寸前のプロジェクトを好転させる手法に強い共感が得られたようで、特別講演後、名刺交換を求める長い列ができた。