新型コロナ対策の一つとして、多くの施設が入館者の体温をチェックするようになった。しかし、自宅測定では不確実。入り口での検温では、検温担当者の感染リスクが高まってしまうという問題がある。そこで、日本コンピュータビジョンはタブレット内蔵のカメラとサーモグラフィーカメラを併用するAI温度検知ソリューション「SenseThunder」を開発。独自のAIアルゴリズムで、顔認証と温度測定を0.5秒以内で実現している。

SenseThunder

新型コロナの検温ニーズに応えて顔認証+温度測定の装置を開発

 新型コロナウイルス感染症の大流行に伴って、訪問客や従業員の体温をチェックするニーズが急速に高まっている。

 「ただ、普通の体温計では複数の人を効率良く検温できない。自宅で測ってきてもらうやり方でも不確実だ。一方、非接触型のガンタイプ体温計は複数の人を効率良く検温できるが、誰かが入り口で操作しなければならず、その人の感染リスクが高まってしまう」。こう語るのは、日本コンピュータビジョン(JCV)の田端章人・営業&マーケティング本部マーケティング部部長だ。
 
田端章人
営業&マーケティング本部
マーケティング部部長

 JCVは、AIによる画像認識に特化したIT企業として2019年5月に事業をスタート。設立当初から、ソフトバンクの100%出資子会社となっている。20年3月には、顔認証と温度測定の二つの機能を持つ装置を開発し、急きょマーケットに投入した。

 この装置の最大の特徴は、温度の測定を高精度・短時間に無人で実施できることだ。顔認証の結果に基づいて、ドアの錠を自動的に開けたり入室ログを作成したりすることもできるので、一般的な入退室管理装置としても十分な役割を果たす。

11万点の温度を0.5秒以下で測定、同時に顔画像を照合して認証

 AI温度検知ソリューションのSenseThunderには、「SenseThunder-E」と「SenseThunder-mini」の2モデルがある。SenseThunder-Eが最上位モデルという位置付けだが、両モデルの間に機能や能力の違いはほとんどない。

 SenseThunder-Eは、8型タブレット端末の上にサーモグラフィーカメラを取り付けた構造。タブレット端末に内蔵されたカメラで人の顔を撮影し、サーモグラフィーカメラで体表温を測定して、顔認証と温度測定の両方の結果を画面に表示する仕組みだ。

 表示されるのは、顔のリアルタイム画像、登録されている氏名、現在の温度、アラート(正常/異常/マスク未着用)などの情報。HDMIケーブルを使って外部接続すると、結果を大型モニターで確認することもできる。

 温度の精度は、プラスマイナス0.3度。医療機器としての承認は受けていないが、スクリーニング用として十分すぎるほどの性能がある。「精度が高いのは、最大11万点で測定しているため」と説明するのは、営業&マーケティング本部マーケティング部の中島宏幸課長。独自のAIアルゴリズムを使っているため、額に髪がかかっている場合も、その部分を避けて温度を推定できるという。
 
中島宏幸
営業&マーケティング本部
マーケティング部課長

 また、測定に要する時間は0.5秒以下。人との距離は約1.5mまでとることができる。入り口で、人の渋滞が起きることはないだろう。

 実際には、温度測定に先立って、タブレット端末に内蔵しているカメラを使った顔認識処理が行われる。顔や額の位置が分からなければ、温度測定点を決めることもできないからだ。オプションの顔認証は、個人ごとにあらかじめ登録しておいた基準画像(最大5万人)とリアルタイムの画像を独自のAIアルゴリズムで比較する。

 最大200の特徴点を設けて比較するので、基準画像が「マスクなし」、リアルタイム画像が「マスクあり」でも正確な判定が可能。マスクなしで入場しようとする人もチェックできる。なお、不特定多数が訪れるような施設では、温度測定だけの運用をしているところも多い。

 従業員の基準画像とソフトウェア(顔認証/温度測定)は、管理サーバーに格納しておく。クラウドなどの外部サーバーに個人のデータが送られてしまうことはなく、コンプライアンスやセキュリティについての心配は不要だ。「管理サーバーはUbuntuベースのもの。お客様が用意するのが基本だが、販売業者を紹介することもできる」と中島課長は話す。

 この管理サーバーは、その企業が使っている他の業務システムとも連携できる。例えば、顔認証の結果と温度を記録したログデータを勤怠管理システムに送る仕組みを作っておけば、感染事案が発生したときも調査対象者の絞り込みと追跡を容易に行うことができるだろう。

 なお、SenseThunder-miniは、きょう体サイズが5.5型と少し小さい。体表温は1万点で測定が可能。距離が約1.2mまで、精度がプラスマイナス0.4度となっている。登録できる基準画像は最大2万人。最上位モデルのSenseThunder-Eと比べる抽出温度点数の差はあるものの、非常に高いスペックをコンパクトで提供することをコンセプトに開発されたモデルとなり、多くの企業で採用されている。非常にスタイリッシュなデザインとなっており、既存環境へ影響を与えず、導入が可能だ。

官民問わず多くの施設に納入済み、代理店向け訓練プログラムもある

 販売を開始してからまだ間がないが、SenseThunderはすでに官公庁、医療機関、飲食店、工場、オフィスなどの多くの施設に納入されている。「20年4月以来、毎日60件以上の引き合いがある状況」と田端部長。「AIアルゴリズムを使って11万点で温度検知する仕組みが市場に評価されているのではないか」と捉えている。

 製品の供給は、ソフトバンクおよびソフトバンク系列のディストリビューターを通じた間接販売となる。代理店向けの訓練プログラムも用意されており、画像認識システムの経験が少ない代理店でも取り扱いは難しくないはずだ。

 人手をかけることなく訪問者や従業員の温度を迅速・正確に測定できるSenseThunder。健康と経済を両立させる新しい生活様式のためのソリューションに、市場は熱い期待を寄せている。

 なお、JCVではSenseThunderのようなパッケージ製品のみならず、高精度の顔認証機能をソフトウェア開発キット(SDK)として提供している。SDKを利用することで、一からの開発ではなく、自社アプリケーションに顔認証機能を容易に組み込みすることができ、構築を短期間で実施することができる。
 
JCV顔認証SDK

 「Withコロナ」社会において、非接触やソーシャルディスタンスの担保が必然的に求められる。例えば、来客受付を顔認証で自動化するなどだ。JCVの顔認証SDKを利用すれば、実現が可能だ。

 JCVは、既存システムやアプリケーションに新たな付加価値を創出し、パートナーと新たな顔認識ソリューションの協創を推進し、コンピュータビジョンやAI技術の分野で市場を牽引していく。