前回まで、2回にわたって自治体の情報システムが抱えている課題と、それを解決するNutanixソリューションを紹介してきた。今回は、デジタルワークスペース環境の実現に最適な基盤といわれ、導入例が増加しているCitrixとNutanixの組み合わせ「Citrix on Nutanix」を取り上げる。なぜ両者の組み合わせが高く評価されているのか。そして、自治体の情報システムにどのようなメリットを提供し、住民サービスの向上に貢献できるのか。シトリックス・システムズ・ジャパンとニュータニックス・ジャパンの担当者に解説してもらった。

ハードの陳腐化を背景に
システムリプレースが進む

 15年6月に日本年金機構が公表した情報流出事件を大きなきっかけとして、総務省は全国の自治体に「自治体情報システム強靭性向上モデル」への対応を促した。17年夏に全国で対応が完了し、地方自治体のセキュリティ対策は強化された。現在、当時整備された情報システムのリプレース時期にさしかかっているが、実際のところ、自治体のIT投資が大きく伸びる要因になっているとは言い難い。

 シトリックス・システムズ・ジャパンのセールスエンジニアリング本部パートナーSE部リードシステムズエンジニアの越川達也氏は次のように説明する。「5年前と状況が違うのは補正予算が付かないことで、全ての自治体がリプレースできるわけではない。しかし、老朽化したシステムを使い続けることも難しい。できる範囲で入れ替えるという判断をされるケースが多い」と自治体市場の動向を説明する。
 
シトリックス・システムズ・ジャパン
セールスエンジニアリング本部パートナーSE部
リードシステムズエンジニア
越川 達也 氏

 こうした状況を踏まえ、シトリックス・システムズ・ジャパンは以前からの主力製品である仮想アプリケーション、仮想Webブラウザー、VDIに限らず、リモートPCや物理PCにCitrixのプロトコルで接続できるソリューションなど、多様なソリューションラインアップから自治体の予算に応じた提案をしているという。

 自治体が情報システムのリプレースを急ぐケースでは、ハードウェアの陳腐化(スペック不足)でパフォーマンスへの影響が顕著になっていることが多い。

 「Windowsやブラウザーのアップデートに必要なリソースも大きくなり、パフォーマンスへの影響も増している。今や自治体でも生産性向上が問われる中で、住民サービスを向上させるために予算をとってリプレースしようという動きが目立つ」と越川氏は話す。

ストレージの性能問題を解消するCitrix on Nutanix

 シトリックスではアプリケーション仮想化製品「Citrix Virtual Apps」の旧名称であるMetaFrameの時代から、いち早く自治体向けソリューションを展開してきた。その後、VMwareとの競争関係が続くことになったが、現在、強みを発揮しているのが Nutanix Cloud Platformを基盤とする「Citrix on Nutanix」だ。

 「Citrix Virtual Apps and Desktopsにおける仮想化の展開方式には、大きくMCS(Machine Creation Services)とPVS(Provisioning Services)の二つの方法がある。MCSはマスターイメージを各デスクトップの分だけ複製するもので、ストレージ性能に依存するが、Nutanixの優れたストレージ機能との相性が生きる。また、リソースに対する柔軟性も発揮できる」と越川氏は説明する。

 仮想化の展開では、ハイパーバイザーと共有ストレージを使用する従来の3層構造の制限が大きかったが、Nutanixはボトルネックになるストレージのパフォーマンスを解消する仕組みを備えている。ニュータニックス・ジャパンのシニアシステムズエンジニアである水田裕介氏は次のように解説する。

 「NutanixはMCS、PVSの双方に対応している。Nutanixの独自技術であるデータローカリティにより、特定のストレージ領域やノードにのみ負荷が掛かるボトルネックを回避できる。これにより小規模な環境向けとされていたMCSをより大規模な環境にも適応できるようになり、従来の定番である3層構造の仮想化基盤+PVS構成とは異なる高速かつシンプルな提案も可能になる」
 

 仮想デスクトップ環境でよく問題となる、多数のユーザーのログオン集中により仮想デスクトップの起動が遅くなるログオンストーム問題に対しても、Nutanixは明確な回答を持っている。「従来、ストレージのサイジングは難しい課題の一つだった。5年前のインターネット分離でも見られたことだが、設計時は机上の空論になりがちで、実環境での運用でパフォーマンス不足が判明したケースも少なくない。Nutanixなら前述の仕組み上、そのリスクを最小化できる。また、わざわざ別のNAS製品を買わずに『Nutanix Files』を利用してこの基盤に統合することで、高速なストレージ上にユーザープロファイルを置くことができ、課題を解消できる」と水田氏はアピールする。
 
ニュータニックス・ジャパン
シニアシステムズエンジニア
水田 裕介 氏

 ログオンストーム問題について、自治体によっては「VDIとはこうしたシステムだ」と諦められていることもあるという。毎日、ログオンが完了までに1分以上を要してもそのまま使い続けているケースは現実に存在する。だが、その積み重ねが大きな生産性低下を招くなど、業務への影響は大きい。

 「民間では以前から製造業を中心に生産性が大きく問われてきたが、自治体ではそこまで意識されていなかったのが実情。しかし今は、生産性向上を住民サービスの向上につなげていくという自治体が増えている。当社の提案の中でも、パフォーマンスの低いシステム環境を放置することは住民サービスを阻害することになる、という話をさせていただいている」と越川氏は語る。

 比較対象がなければシステムの処理の遅さに気付く機会は少ないが、テレワークが増えたことで、職員が自宅用に購入した最新PCとの立ち上がりの差に驚くこともあるという。「快適な自宅のPCを業務に使えないだろうかというBYODの相談を受けることも増えてきた」と越川氏は指摘する。

 また、Citrix on Nutanixのメリットはコスト面でも発揮されている。Nutanix上ではNutanixがKVMをベースとして開発しているハイパーバイザーのAHVが無償で提供されるため、前回と異なり国からの特別な予算が付かないシビアな状況におけるアドバンテージは大きい。「Nutanix基盤は導入後に様々なタイプのノードを必要に応じて柔軟に追加できる事も強みなので、インターネット分離だけでなく、従来型システムの置き換えにも応用できる。例えば前述のNutanix Filesを利用し、既存ファイルサーバーの統合なども視野に入れれば、先行投資を有効活用し、限られた予算を無駄なく活用できる」と水田氏は説明する。

Citrix Cloudが運用コストと管理者の負荷を軽減

 自治体のシステム管理者にとっても、Citrix on Nutanixには大きなメリットがある。

 従来はサーバー、仮想化基盤、ストレージをそれぞれ別のコンソールを使用して管理しなければならなかった。こうした負荷も、Nutanixの管理ツール「Prism」を使用することでファームウェアも含めてGUIにより一元的かつ直感的に管理できるようになることで解消される。

 水田氏は「Prismを使えば、仮想化環境の管理に慣れていない方でもパブリッククラウドのように簡単に利用できるようになる。また、Citrix製品についても、一度つなぐと基本的にCitrix Studio(管理コンソール)からNutanix基盤上で動作するVMを一元的に管理できる仕組みを提供しているので、異なるメーカーの組み合わせでも複雑にならない。運用の引き継ぎも最短1~2時間程度のレクチャーで完了できるため、業務を属人化させない」とアピールする。

 シトリックスでは、3年ほど前から提供を開始した「Citrix Cloud」の利用をユーザーに勧めているという。「クラウド環境に移行しても、オンプレミスの環境で提供しているCitrix Studioと同じ画面で管理ができるため、新たに操作などを覚えなくてもいい。しかも、クラウド化するとサーバー群の運用管理は全て当社側が担うため、お客様側の負担を減らすことができる」と越川氏は説明する。

 クラウド環境を選択するユーザー側の理由の一つがOSのアップデートだ。アップデートに適応させるには管理サーバー群のバージョンも更新する必要がある。5年程度の契約の中では2回ほどの大規模アップデートが発生するが、そのコストも含めて初めの契約に盛り込むことは難しい。その点、クラウドならランニングコストに含まれるというメリットがある。

Citrix+Nutanixをパッケージ化して提供

 CitrixとNutanix、両社のディストリビューターとして、ネットワールドではCitrix on Nutanixのソリューションをパートナーを通じて多くの自治体に提供してきた。

 ネットワールドのSI技術本部統合基盤技術部プラットフォームソリューション1課係長の染谷文昭氏は「われわれの強みは、2社の製品を統合して設計、構築も含めて自社のスタッフだけで提供できる体制を備えていることだ」と強調する。

 「NutanixのハイパーバイザーであるAHVの評価が高まるにつれて、全国でも数千ユーザー規模でAHV上でのCitrixの導入例が順調に増えている。Citrix on Nutanixのソリューションは短期間で仮想化基盤が構築できることに加えリピートがとても多く、一度入れたシステムを拡張していくというニーズが強い。それだけユーザーに支持されていることの証明といえる。規模も県庁クラスから町、村レベルまで幅広い」と染谷氏は話す。
 
ネットワールド
SI技術本部 統合基盤技術部
プラットフォームソリューション1課 係長
染谷 文昭 氏

 今後注力するテーマについて、シトリックス・システムズ・ジャパンでは「パフォーマンスと利便性、さらにセキュリティの全てを両立させ、システム管理者だけでなく、エンドユーザーの視点での使い勝手を高めていくことを目指す」(越川氏)としている。一方、ニュータニックス・ジャパンの水田氏は「クラウドの柔軟性とオンプレミスの確実性やパフォーマンスを両立する、誰でも最適に利用できるインフラを提供していく」という。

 ネットワールドは近く、CitrixとNutanixとの組み合わせをパッケージ化して提供していく方針。「自治体の規模、課題に合わせたパッケージのラインアップを揃えて、パートナーの方々が提案しやすいよう価格体系を明確にしていきたい。合わせてパートナー支援にこれまで以上にしっかり取り組んでいく」と染谷氏は力を込める。

週刊BCN・本多編集長もココに注目!
変革の気運高まる自治体業務のニーズに応える

 新型コロナ禍により日本社会全体のデジタル化やDXへの取り組みの遅れが浮き彫りになったが、行政におけるデジタル活用の遅れは特に際立っていた。住民サービスの向上につなげていくという視点を持って、業務の生産性を上げるためのデジタルテクノロジーにしっかり投資するという貪欲さには欠けているケースが多かったのではないか。

 一方で、本文中でシトリックス・システムズ・ジャパンの越川氏が指摘しているように、課題がクローズアップされたことにより、与えられた環境を「仕方がない」「こんなものだろう」と受け入れがちだった自治体の業務の現場も意識が変わり始めている。

 変革の気運は大いに高まっている。これを実際に行政DXのムーブメントにつなげるには、ITベンダー側が果たすべき役割も大きい。DXの基盤となり得る、十分なパフォーマンス、利便性、セキュリティを備えたITプロダクトやサービスを現実的なコストで提供する必要があるのだ。「Citrix on Nutanix」が支持を集めているのは、まさにそうしたニーズに応えているからと言えそうだ。