Special Issue
週刊BCN DXとセキュリティーの両輪で進むデジタル変革 仕事の流れを変え、生成AIをうまく活用せよ
2025/08/28 09:00
週刊BCN 2025年08月25日vol.2072掲載

編集長 日高 彰
デジタル変革(DX)が提唱されてから、すでに10年以上。これに取り組む企業は増えているが、その一方で、「仕事が楽になった気がしない」「売り上げ・利益が向上しない」「運用管理対象が増えてIT担当者は疲弊している」などの不満も語られるようになった。そうした幻滅が生まれる理由を、日高編集長は「IT導入がデジタイゼーションの段階で止まっているため」と説明。全体を見据えたIT投資をしなければ効果は出ないと述べた。
「そもそも仕事は、作業や判断の“ハコ”と、それらをつなぐ流れの“矢印”でできている」と語る日高編集長。「受注」「原材料手配」「生産」といった個々の作業はITで高速化できるが、流れの部分を従来のままにしていたのでは限界を突破できない、と指摘する。
もちろん、限界を突破している企業はある。その例として日高編集長はファストフード店を挙げ、「モバイルオーダーの仕組みを導入することによって『注文』と『精算』のハコをなくし、来店前に製造を始める“矢印の複線化”でリードタイム(納期)を短縮した」と解説した。スマホアプリの注文画面に「デリバリー」ボタンを付ければ、宅配サービスによって商圏も拡大できるのである。
「つまり、DXとは流れを変えること」(日高編集長)。DX提案をするITベンダーは、その提案が顧客の仕事の流れを変えるかどうかをよく確かめるべきだと強調した。
同じことは、セキュリティー運用についても言える。業務システムの数が増え、目的別に複数のセキュリティー対策ソリューションを導入していくと、セキュリティー運用に要する工数も掛け算で増加する。しかも、IT人材の不足は深刻だから、セキュリティー運用はいつ破綻してもおかしくはない。
その解決策として期待されるのが、セキュリティー運用への生成AIの導入だ。「情報の正確性を担保できない」「情報流出の恐れがある」「システムに危害を加える可能性がある」といった“できない理由”も当然に考えられるが、日高氏は「人間がやってもそのような心配は生じるものだ」と指摘。包丁や自動車と同じように、危険性を考慮しつつ便利に使えばよいと説いた。具体的な活用例としては、「問い合わせ対応」「対処のアドバイス」「脆弱性の調査」「ログの分析」「アラートの選別」「レポートの作成」などが考えられるという。
「ITベンダーも、仕事のやり方を変える余地がないか自ら考えてほしい」と日高編集長。それによってIT提案の価値も高まり、顧客への説得力も高まるだろうと述べて、3日間のBCN CONFERENCE 2025夏を締めくくった。
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