「クラウド案件を取りたいが、自社主導で提案できる自信がない」「人材や実績が不足し、大手SIerの下請けにとどまってしまう」こうした悩みを抱える地方・中小のSIerは少なくない。AI活用の加速によりクラウド需要は拡大している一方で、案件の主導権は依然として一部の大手企業に集中しているのが現実だ。では、中小SIerが“主体的にクラウドビジネスを伸ばす”には、何が必要なのか。そのヒントとなるのが、提案支援や案件推進を通じて、自社でクラウド案件を進められる体制づくりを後押しするパートナーネットワーク「Cloud Chorus Partner Network(CCPN)」だ。このプログラムによって、全国の中小SIerがどうクラウド案件を広げていけるのか、CCPNアライアンスチームのマネージャーである佐々木厚司氏に聞いた。
なぜ中小SIerはクラウド案件を主導できないのか
クラウドビジネスはこれまで、大手SIerとクラウドベンダーを中心とした構造で発展してきた。特に大規模案件や先端領域は、首都圏の大手企業が主導するケースが多い。その結果、中小SIerは部分的な役割にとどまり、自社主導での実績やノウハウを蓄積しにくい状況が続いてきた。
AI活用の広がりにより、オンプレミス中心だった企業でもクラウド移行の検討が進む一方、「提案したいが構成に自信が持てない」「案件を主導できる体制が整っていない」といった理由から、提案に踏み出せないケースも多い。佐々木氏は「各社が単独で抱え込むのではなく、互いの強みを活かして補完し合えるパートナー同士のネットワークが重要になる」と話す。
マーケティング本部
CCPNアライアンスチーム
マネージャー
佐々木 厚司氏
クラウド案件を“自社で広げていく”仕組みとは
こうした課題に対する一つの解が、パートナーネットワーク「Cloud Chorus Partner Network(CCPN)」だ。CCPNは単なる販売代理制度ではなく、営業支援・技術支援・案件推進までを含めて、「クラウドビジネスを一緒に作る」ことを目的とした仕組みである。不足しているクラウドの知見や実行体制をCCPNのスキームで補うことで、パートナーは自社で提案から実行まで可能となる。また複数のパートナー企業が連携することで、従来は大手SIerが担っていた規模や難易度の案件にも対応しやすくなる。
CCPNは2022年に個別商材毎の販売委託契約を包括する形でスタートした。登録費や年会費などの諸費用が不要で、案件紹介ノルマやペナルティもない。Webフォームで手続きが完結し、最短即日からクラウド商材を扱うことが可能だ。パートナーは、案件毎に「取次」か「再販」を選択できる。クラウド提案に慣れていない企業は、まず取次として参画し、商談同席や設計支援を通じてノウハウを蓄積。体制が整えば再販へ移行し、自社主導で案件を展開できる。この“段階的に成長できる仕組み”が、CCPNの大きな特徴だ。
技術支援を柔軟な契約形態で提供し、営業支援やマーケティング支援などの取り組みを進めてきた。勉強会や交流会を毎月実施するなかで、単なる商材提供の枠を超えたパートナー同士のシナジーを生み出す”協奏型”のネットワークに進化した。現在では全国45都道府県、800社以上が参加するコミュニティとなっている。
NHN テコラスはピラミッド構造の頂点に君臨するのではなく、多様なパートナーを協奏させる指揮者の役割を担う。同社はAWSパートナーでは最上位となるプレミアティア認定に加え、セキュリティ領域ではAWSセキュリティコンピテンシーとAWS レベル1 MSSPコンピテンシーの双方を獲得し、また2026年2月にはAnthropic社とのリセラー契約を締結している。こうした支援基盤があることで、パートナーにとっては、自社だけでは提案しにくい案件にも取り組みやすくなる。
CCPNのこうした設計は、NHN テコラスという社名そのものに込められた理念と重なる。「テコラス」は「テクノロジー」と「コーラス」を組み合わせた造語であり、「異なる技術領域や文化が共鳴し合ってより高い価値を創造する」というビジョンを表している。
1社では難しい案件にも、パートナー連携で向き合える
CCPNではパートナー同士の連携・コミュニティも充実している。東京での月次勉強会に加え、2025年は札幌・福岡で地方開催、2026年は年間4回の地方イベントを計画中だ。「どう売るか」「どう提案するか」といった実践的なノウハウ共有の場であり、パートナー同士の交流から実際の案件獲得につながった事例も生まれている。
佐々木氏は「地域ごとに課題は異なり、1社だけでは解決できないことも多い。だからこそ全国のパートナーとつながりながら、それぞれの強みを活かして案件に向き合える仕組みが重要になる。クラウドビジネスに挑戦したいが、一歩踏み出せていない企業にこそ参加してほしい」と語る。クラウド需要が拡大する今、外部と連携しながら提案力を高めていくCCPNは、その最初の一歩を踏み出すための現実的な選択肢だ。