基調講演には、INDUSTRIAL-Xの八子知礼・代表取締役CEOが登壇、「製造現場のノウハウをフル活用するDX」をテーマに講演した。同社は、独自の「境目課題フレームワーク」を用い、プロセスと人、データとモノの間など物事の境目に必ず課題がある、という経験則から見えない課題を可視化し、解決に向けたDXアプローチを提供している。
INDUSTRIAL-X
代表取締役CEO 八子 知礼 氏
製造業は現在、資材コストの高騰、人材採用の難航、設備の老朽化に伴う稼働率低下、ベテランの退職による技能承継など、多くの課題に直面している。加えて、業務の属人化や紙帳票の多用、レガシーシステムのブラックボックス化など、デジタル化の遅れが顕著だと指摘する。
そこでDXで目指すべき姿として、八子氏は「デジタルツイン」の実現を強調する。これは、何が起こるか分からない現実の現場(アナログ環境)をデータ化して、デジタル空間で再現。デジタル上でシミュレーションや将来予測を行い、導き出した最適解を現場の新たな価値としてフィードバックしていくもの。これにより、「日本の製造業が頼ってきた勘・コツ・経験・気合い・根性といったノウハウを数値化し、確実に継承していくことが可能になる」という。
さらに、スマートファクトリーのロードマップとして「Smart Factory of the Future(SFoF)」モデルを提示。IoTデータの収集・蓄積から始まり、可視化、遠隔化、自律化、そして最終的には工場全体でオンデマンド製造、さらに業界、社会とのエコシステム化に至る7段階のステップを中長期的に見据える必要性を説いた。
次いで八子氏は生成AIの普及を挙げて、2027年頃にはさまざまな用途に使える「AGI(汎用人工知能)」時代の到来を予測。「早晩このAGIがビジネスに対して非常に大きなインパクトを及ぼす」と語り、AIが人間の代理人として自律的に業務を遂行する「AIエージェント」へのシフトが起こると指摘した。製造業では、リアルタイムな設備データや稼働データと、手順書などの静的(スタティック)なデータを連携させ、「AI工場長」といったエージェントの構築が重要になる。そのためには、過去20年間放置されてきた紙帳票のデジタル化など終わっていない宿題を速やかに片付け、AIによるデータドリブンな経営を整備していくことが急務になる。
最後に八子氏は、AI活用が前提となる今後の働き方に言及した。AIを使えば経験が浅くても一定水準(80点)の成果を出せる「スキルレスAIワーク」が可能になる。今後は時間をかけてスキルを習得するのではなく、AIを道具として使いこなし、自身の感性やこんな製品をつくりたい、という構想を即座にかたちにする「センスワーク」が求められる。「センスで働くような工場のオペレーションへと進めていってほしい」と語り、ノウハウをフル活用した次世代の製造業DXの重要性を訴えた。