週刊BCNは6月26日、関西地方でIT製品・サービスの販売に携わるベンダー各社に向けたセミナー「週刊BCN 全国キャラバン2026 in 大阪」を大阪市内で開催した。業務プロセスにAIを組み込むことが前提となった時代におけるSIerの開発・運用のあり方について識者が講演したほか、セキュリティー対策やAIを活用した業務改革、システム開発を支援するソリューションベンダー3社が自社の商材を紹介した。
関西エリアのIT企業が参加した
週刊BCN全国キャラバン
基調講演では「AI時代のソリューション提案のあり方」と題して、企業のデジタル変革を支援しているINDUSTRIAL-Xの八子知礼・代表取締役CEOが、AI変革の重要性と、それを実現するためのシステムの姿とITベンダーの役割の変化について話した。
INDUSTRIAL-X
八子知礼
代表取締役CEO
八子CEOは企業による生成AIの活用の現状について「パブリックに公開されているデータからさまざまなものを生成することは比較的簡単になった。しかし重要なのは、組織の中に存在している固有のデータを使って、現場で培ってきた経験を形式化すること」と述べるとともに、多くの企業ではAIが活用可能な形にデータが整備されていないことを指摘。ITベンダーはAI技術の導入だけでなく、その前段階となるデータ基盤の整備や、AIエージェントによる業務改革を実現するための新たな意思決定ルールの策定や、AI前提の業務設計などを支援することが新たな事業機会になると説明した。また冒頭に、ソリューション提案のプロセスを可視化するダッシュボードアプリを開発するよう生成AIに指示し、講演が終了する40分後にはそれが完成する様子をデモンストレーションした。
持ち出しPCからの漏えいリスクの実態は深刻
協賛企業によるセッションでは、最初にアイキューブドシステムズ CLOMO事業本部営業部営業2課の梁信紀・アカウントエグゼクティブが「Windows PC『社外持ち出し』に潜むガバナンスの限界 ― 既存の資産管理ツールでは防げない情報漏洩の実態と対策」と題し、PCを社外に持ち出す際に潜むセキュリティーリスクと対策について解説した。
アイキューブドシステムズ
梁 信紀
アカウントエグゼクティブ
梁アカウントエグゼクティブは、一般的に情報漏えいの原因としてはマルウェア感染や不正アクセスなどが挙げられるものの、端末の置き忘れといった人的ミスについては報告・公表が適切に行われておらず、実態としてはこれも主要な要因である可能性が高いとの考えを示した。持ち出しPCからの情報漏えいリスクを抑え込むには、「持ち出しを例外扱いしないこと」「紛失したPCがオフラインになることの想定」「紛失したPCでも復元不可能な状態でデータ消去を実行すること」を網羅すべきであり、これを実現したのが同社の製品「Trust Delete」であると紹介した。
業務属人化を解決する資料をAIが自動作成
スタディスト 営業本部アライアンス営業部ビジネス開発グループの阿部弘迪・グループマネージャーは「AI×マニュアルで属人化を解消!」と題し、AIを活用した同社のマニュアル自動作成ツール「Teachme Biz」を紹介した。阿部グループマネージャーは、人口減少下の日本では生産性向上が避けて通れない課題である一方、多くの企業では「技術の断絶や業務のブラックボックス化が発生し、現場の“空洞化”が進んでいる」ことが課題だとした。
スタディスト
阿部弘迪
グループマネージャー
Teachme Bizは現場で行う作業内容のマニュアルを簡単に作成し、従業員の間での業務プロセスの共有や品質の向上を支援するツール。AIがマニュアル作成を全面的に支援するのが特徴で、画像や動画をアップロードするだけで作業ステップが分割され、字幕なども自動的に生成される。講演の中では、工場内でベテラン従業員が行う食肉の加工作業をマニュアル化するデモンストレーションが行われ、プロンプト形式で指示を送るとAIが自動的にマニュアルを作成・修正・改善する様子が披露された。同社では業務属人化が多くの企業で問題になっているとし、需要の高まりから販売パートナーの募集を本格化しているという。
AI駆動開発の最新事例を紹介
続いて、オフショア開発で企業のシステム構築を支援しているカオピーズの佐々井文吉CSO(最高戦略責任者)が、「ベトナムオフショアの限界を突破する ― AIで実現する“超高速・超効率”開発モデル」と題し、AIを全面的に活用した最新のシステム開発モデルを紹介した。ベトナムに本社を置く同社は2014年創業で、日本国内の250社以上の企業のシステムを開発してきた。現在はAIを活用し、工数とバグの大幅な削減を実現している。
カオピーズ
佐々井文吉
CSO
同社はAI-SDLC(AI駆動開発ライフサイクル)を推進しており、単にエンジニアの個別の作業をAIが補助するのではなく、プロジェクト管理、アーキテクト、デベロッパー、品質保証、セキュリティー、運用といった複数の専門エージェントが協働するアプローチにより、要件定義から運用までを包括的にAIが担う体制を整えた。これにより、全工程の工数の約30%、本番環境におけるバグの約30%をそれぞれ削減することに成功したという。佐々井CSOによると、試験段階では同社の全プロジェクトの約25%にAI-SDLCを適用していたが、現在は半分近くにまで引き上げた。日本のSIerとの連携を強化し、AIを活用した開発効率化のメリットを国内でさらに提供していくことを目指している。
次回の「週刊BCN 全国キャラバン」は8月7日に札幌で開催する。