ITと設備のインフラ融合を
──「クラウド」の流れやエネルギー問題への対応を進めるなかで、課題はありますか。
内藤 消費電力に関する意識が欧米に比べて低いことですね。2年ぐらいは遅れているのではないかとみています。
──なぜですか。
内藤 ユーザー側が気にしていなかったのが原因です。しかし、最近はコスト削減から意識が高まっていますので、これについては解決できるでしょう。
最も大きな課題は、ITインフラと設備インフラを提供するベンダーがそれぞれ異なっていることです。ITインフラがSIer、設備インフラが建設業者などといった具合です。これは、メーカー側の業界が異なっているからです。しかし、今後はインフラという点でITと設備ともに提供していかなければなりません。業界全体とまではいきませんが、インフラの融合が重要なカギを握ります。
これまでITインフラが情報システム部門、設備が総務部門とユーザー側の窓口が異なっていたので、インフラが融合していなくても問題はなかった。しかし、コスト削減の観点から、ユーザー企業の経営者がインフラについて数字を気にするようになってきました。そんななか、ベンダーサイドもITと設備を融合したソリューションを提供していかなければならない。そうした“場”作りを当社が担えると判断しています。
──具体的に取り組んでいることはありますか。
内藤 製品面では、ITベンダー各社が提供するIT資産管理ソフトと当社の設備に関するマネジメントソフトを連動させています。NECさんや日本IBMさん、日立製作所さんなど主要なメーカーの製品と実現しています。
販売面では、当社は設備関連の業者、SIerなどをパートナーとして確保しています。これらパートナーの連携を視野に入れています。例えば、あるSIerと、ある建設業者、そして当社の3社で戦略的にアライアンスを組むなどです。大型案件の獲得やSMB(中堅・中小企業)に広げるための策などを模索していきます。当社だけで行うのではなく、インフラ全体を考えた提案を複数のベンダーで行うことが重要と考えています。
──ただ、単に「製品を売ってくれ」と訴えるだけでは、連携が生まれるとは思えません。何か仕掛けはあるのですか。
内藤 DCのインフラを診断するコンサルティングが決め手になります。「アセスメントサービス」と呼んでいるのですが、インフラを診断し、DCが求める製品やノウハウを持っている販売パートナーに依頼する。DCが求めるのであれば、販売パートナー経由で当社製品も提供してもらいます。コンサルティングは、専門組織を設置して本格化を図っています。あくまでも、製品を売るのは販売パートナーです。ただ、当社が前面に立ってDCのインフラ改善を積極的に提案していくことも必要だと判断しています。
また、IT業界を中心に広がっている環境問題の解決を目的に設立された「グリーン・グリッド」も、複数の業界をつなげるきっかけになるのではないかとみています。これにより、サーバーをはじめとして多くのITベンダーが「エコ」を意識した製品を相次いで出すようになりました。しかも、各社のショールームでは「エコ」に関するデモを実施しており、当社も少なからず協力しています。「グリーン・グリッド」は、現段階で手弁当になるケースが多いですが、ITの省電力化を訴え続けていけば、かならず浸透すると確信しています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
ソニーから始まり、アカマイ・テクノロジーズ、NTTコミュニケーションズ、日本キャンドルなど、IT業界を長く渡り歩いただけに、ノウハウが豊富。海外や新規の事業立ち上げにも多く携わった。しかも、複数のベンダーで経営者を務めていたことから人脈は広い。今はAPCジャパンの社長として、IT業界と設備関連業界の融合に奔走している。
今年9月で、社長に就任してから3年を迎える。「これまでは地道に行ってきた」。クラウド・コンピューティングなど、徐々に市場環境が同社の描くビジネスにマッチしてきていることから、「今がチャンス」と捉える。世界同時不況の影響で、コスト削減を中心に「エコノミー」「エコロジー」を意識する企業が増えている。そのため、「大きく成長する」と意欲を燃やす。同社が掲げる「エナジーマネジメント」を「国内に普及させる」信念に揺るぎはない。(郁)
プロフィール
内藤 眞
(ないとう まこと)1956年9月11日生まれ。東京都出身。78年、慶應義塾大学工学部卒業後、ソニー入社。同社で欧米など海外やデータストレージ、次世代ゲーム機などの事業に携わる。01年、アカマイ・テクノロジーズ・ジャパンに入社。02年に代表取締役社長に就任する。その後、NTTコミュニケーションズや日本キャンドルなどを経て、06年9月にエーピーシー・ジャパンの代表取締役社長に就任。現在に至る。
会社紹介
APCジャパンは、米APCの日本法人として1996年4月に設立された。UPSや冷却装置などサーバーシステムの設備に関する製品を提供。07年2月に仏シュナイダーの傘下に収まったことで、エネルギー対策のソリューションを視野に入れた「エナジーマネジメント」をコンセプトに掲げて事業を手がけている。売上高は明らかにしていないものの、昨年度は前年度の2倍程度に成長した。