ネットワークセキュリティ製品のディストリビュータであるジェイズ・コミュニケーションは、2010年4月で設立15周年を迎えることになる。節目の年に先立ち、昨年度(2008年12月期)には5か年の事業計画を策定。今まさにその計画を遂行している段階だ。「第二創業期と捉えて突き進む」と宣言する愛須康之社長に、具体的な戦略を聞いた。
4分野での拡大戦略を策定
──来年4月で設立15周年ですが、節目の年を迎えるにあたって経営の方向性を変えるといった動きはあるのですか。
愛須 節目の年だからといって、とくに方針を転換するようなことはありませんが、昨年1月に5か年の事業計画を策定しまして、その達成に向けて突き進んでいるところです。来年はその計画の折り返し点ということになります。その事業計画は、「チャレンジJ100」と称しています。事業規模をより大きくジャンプアップさせるための計画です。私どものグループは100人規模の組織となり、新たなスタートを切る決意で名づけました。いうなれば、第二創業期と捉えて計画を策定したのです。
──「チャレンジJ100」は、具体的にどのような内容なのですか。
愛須 いくつかあるのですが、総じていえば当社の強みをブラッシュアップしていくというものです。4種類のフォーカス分野があります。ジュニパーネットワークス製品関連や通信事業者関連のビジネス、サービス事業、そして新規事業です。
──これまでもジュニパーネットワークスのネットワークセキュリティ製品である「NetScreen」や「SSG」などを中心に販売してきましたが、この分野での強化策で考えていることは何ですか。
愛須 技術やサポートなどを徹底的に強化していくことです。人員を増強していくことはもちろん、さらにスキルアップを図っていきます。また、この分野では日商エレクトロニクスと業務提携していますので、これを生かしていきます。日商エレクトロニクスによるスイッチやルータの販売力、そして当社がもつネットワークセキュリティ製品のノウハウをコラボレーションして需要を掘り起こしていきます。
──通信事業者関連では?
愛須 この分野でもコラボレーションが重要になってきます。通信事業者は、ネットワークインフラの提供に力を注いでいる。そこで、当社が黒子になって製品提供からサポートまで一貫して行うのです。また、通信事業者はNGN(次世代ネットワーク網)で変革を遂げようとしている。NGNではセキュリティ制御が・売り・の一つになっていますので、当社の強みを発揮したい。当社ほどの小規模な会社が通信事業者とのコラボレーションが実現できるようになったのは、技術力やサポート力などを評価してもらえたからでしょう。こうした評価に応えていきます。
──サービス事業については、どうですか。
愛須 保守サービスやヘルプデスクをはじめ、子会社(イーサポート)でファイアウォールをリモートで監視するサービスを提供しており、需要が高まっている状況にあります。例えば、DC(データセンター)では多くのサービスを求めており、既存サービスに加えて今後も新サービスを創造していきます。サービス事業では、付加価値の提供に重きを置いており、利益を確保することに力を注いでいます。
──4つ目の新規事業については、何をポイントに着手していくのですか。
愛須 さまざまなことをポイントに据えています。例を挙げれば、SaaS型セキュリティを提供するゼットスケーラーと今年7月に契約を締結しました。これはクラウド・コンピューティング時代に対応するための布石です。また、今年1月にはエンジニアリソース事業を手がける組織を立ち上げました。今は、ジュニパーネットワークス製品を販売しているパートナーに対してエンジニアリソースを提供することが主要なビジネスですが、クラウド・コンピューティング時代を視野に入れたサービス拡充も図っていく予定です。
──このような戦略を打ち出した結果、すでに効果は出ているのですか。
愛須 昨年度は過去最高の業績を記録しました。今年度に入ってからは、ほぼ計画通りに推移しています。市場環境をみると、昨年秋からの大不況の影響で、機器販売やソリューションの提供は厳しい状況であることは否めないけれども、サービス事業が伸びている。予断を許しませんが、好ましい方向に進んでいることは間違いありません。
──数値目標は設定されていますか。
愛須 「チャレンジJ100」は、定性的な面が強いので、具体的には数値目標は掲げていません。ですが、計画終了後、できるだけ早い段階で100億円規模に成長させることを目指しています。
販売パートナーへの支援を徹底的に行ってきた。パートナーにそれを理解してもらえたからこそ、今がある。
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