2009年度(10年3月期)、NECは大きな動きをみせた。上期早々に組織改革を断行し、下期早々にNECネクサソリューションズとの棲み分けを明確化したグループ戦略を発表。半導体や携帯電話など事業見直しも決断した。先を見据えた「選択と集中」を行ったわけだが、そのなかで2010年のキーワードとして据えたのが「クラウド」だ。サービス型モデルの確立を目指す矢野薫社長に戦略を聞いた。
大きな動きをみせた09年
──組織再編やグループ会社のビジネスを明確化したほか、半導体事業や携帯電話事業の見直しなど、2009年は大きな動きをみせましたね。市場環境を踏まえてのことですか。
矢野 ある方面からは「遅い!」との批判もあったんですが(苦笑)、たまたま09年だっただけなんです。最も重要なのは、大企業的ではいけないということ。ここ数年、日本では多くの企業が“サラリーマン化”し、この不況を持ち堪えられなくて疲弊してしまっている。そういった状況にならないよう、実は社長就任当時から先を見据えて慎重に取り組んでいたんです。
──どういうことでしょうか。
矢野 これまで当社が実施してきたことを振り返っていただければ、理解してもらえると思いますが、社長就任当時は、まずは社員の意識改革を徹底的に行った。次にビジョンの策定に取りかかりました。このようなことを行わなければ、大きく組織を変えても、ただの“箱”に終わってしまう。それぞれの段階で結果を出してからでないと、効果が出てきませんからね。08年度で社員のマインドが高まった。そこで、09年度に大きく方向性を変えたんです。
──組織再編では、製品単位の事業部制を横串のアカウント制に変更しました。他社も同じようなことを行って、なかには失敗したケースもありますが…。
矢野 当社の場合は、「One NEC」というビジョンを標榜してきたので問題ありません。このビジョンのもとに、時代に合わせて組織変更を実施したわけですし、実際、各営業担当者が当社の全製品を把握しており、お客様が求めておられるものを提供することができています。
──事業の見直しについては?
矢野 携帯事業については、(カシオ計算機と日立製作所の合弁会社である)カシオ日立モバイルコミュニケーションズと事業統合することになったのですが、意外な組み合わせといわれています。その通りで、意外感がなければ新しいものが出てこない。それが狙いです。
半導体事業の撤退は、世界に通用する半導体会社を作らなければ日本の産業が発展しないという理由から、ルネサステクノロジと統合する契約を結びました。
──ただ、半導体は“心臓部”との見方もあります。
矢野 弱い“心臓”は必要ない。それに、ほかに核となる事業があります。われわれとしては、これまでの強みに集中する。事業の見直しは、そのような決断です。
──09年度通期は売上規模が3兆円まで下がってしまいますね。
矢野 半導体を切り離したわけですから、まずは4兆円規模を目標に据えています。しかも、利益が十分に確保できるビジネスを手がけていく。10年度に結果が出るとは思っていませんが、3年間といった中期的なスパンで考えれば、必ず成長すると確信しています。
コンピュータ関連機器だけでなくコミュニケーション関連機器を揃えているのが強み。
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