「ハード」より「ソフト」——。NECの矢野薫社長は2009年度中間決算で、こう明言した。これは、半導体事業の切り離しを決断した内部事情や、クラウド・コンピューティング時代が到来しつつある市場環境などから出た言葉といえるが、国産大手の総合ITメーカーとしてのあるべき姿が問われる言葉とも受け取れる。
総合ITメーカーとしてのあるべき姿は?
このほどNECが発表した09年度(10年3月期)連結中間決算は、売上高が1兆6537億円(前年同期比22.3%減)と大幅に減収、営業損益は377億円の赤字(前年同期は134億円の黒字)、経常損益は499億円の赤字(70億円の黒字)、最終損益436億円の赤字(18億円の黒字)を計上することとなった。

09年度中間決算発表会で、矢野薫社長はクラウドサービス事業に重きを置くと語った
業績悪化は、世界不況が影響しているが、その市場環境のなかで半導体事業の不振をカバーできなかったことが大きい。半導体事業は、営業損益が426億円の赤字(前年同期は6億円の赤字)。不振が続いていることから、同事業の柱である子会社のNECエレクトロニクスをルネサステクノロジと2010年4月に統合し、来年度から実質的に事業から撤退することを発表している。
ハードの“心臓”である半導体を切り離すことを決断していたため、「クラウド・コンピューティング時代では、ハードよりも結果的にソフトが重要になってくる」(矢野社長)と口にしたのだろう。確かにクラウド時代では、どのようなサービスを提供できるかがポイントで、アプリケーションやプラットフォームの開発が重要になってくる。しかも、ハードの価格は下落が続いていることから、ビジネスの旨味を見出すのであればソフトやサービスに重きを置くのは当然といえば当然なのかもしれない。また、通期の連結業績予想については減収で黒字に転換するものの、「固定費で200億円を上乗せした2900億円のコスト削減を目指す」と、企業規模の圧縮が利益を確保する策の一つという。新しい事業を早急に立ち上げなければならないということだ。
ただ、かつては世界に通用するハードの開発をアピールしていたし、IAサーバーで国内市場トップシェアを維持しているという状況下、販売代理店を視野に入れたビジネスモデルの構築が気になるところだ。グループ再編については、NECネクサソリューションズに中堅規模の法人市場を任せる戦略を打ち出したが、販売代理店の思惑と整合性が取れていないのが実際のところだ。加えて、「ハードよりソフト」と明言している以上、これまでの商流をどのように改革していくかが、業績回復を含めて成長路線のカギを握りそうだ。(佐相彰彦)