2007年12月にトップに就いた小出伸一社長は、就任直後から大胆な構造改革を進めてきた。予想外の世界的大不況のなかでも、改革を停止するつもりはなく、むしろ加速させた。そして、2010年。「構造改革は完了し、準備は整った」と断言する。クラウドに大きなビジネスポテンシャルを感じ、この分野に一気にリソースを集中させるつもりだ。
不況は見直し進める良い機会
──2008年12月にインタビューした際、「就任直後から進めてきた構造改革の結果は1年後に出る」と話されていましたね。その1年が経過しました。
小出 はい、そうでしたね。09年は、構造改革の大きなポイントだったITサービス大手であるEDSとの統合を日本でも完了させました。これにより、グローバルでトップシェアをもつハードやソフト群に加えて、サービスでも強いケイパビリティ(能力)を備えることができました。「総合ITプレーヤー」の地位をますます強固にできたと思っています。
09年のIT市場はかなり厳しい状況でした。事業セグメント別でみれば、ハードウェアがマイナス成長になったりして不振だった分野はあります。点数を付ければ、75点のビジネスもあるし、60点もある。ただ、それはどのベンダーも同じでしょう。そんな厳しい環境で、組織改革やEDSとの統合、財務基盤の強化、新しい時代に適した製品・ソリューションをタイムリーに提供できたことに、一定の成果と満足感をおぼえています。
構造改革でやり残したことはありません。2010年のIT市場は、09年よりも伸びるという外部指標がいくつか出ています。飛躍に向けたスタートダッシュをかけられる準備は整った。そう思っています。
──もうすでにIT産業は回復基調に入ったという感触を得ているんですね。
小出 リーマン・ショックが起きて、誰もが「100年に一度の大不況」と騒ぎ、うろたえましたよね。確かに、09年はそれぐらいのインパクトがあったと私も感じました。回復するには相当の時間がかかるだろう、とも。ただ、予測以上に(回復時期は)早まる感触です。09年初にはなかった不安材料としてドバイ・ショックがあり、楽観視はできませんが、間違いなく上向き傾向です。
今回の経済不況を、私は良いインシデントだったと感じているんです。企業がムダや非効率なものを従来以上に見直そうとしているからです。
ユーザーさんは、ITでも既存システムの見直しを加速させるはずです。いわゆる、「ITの事業仕分け」ですね。そうなると、価格競争力があり、経営に高い効率をもたらす日本HPの製品・サービス群を選んでもらう機会もきっと増えます。
──IT市場でも“仕分けられる”分野が出てくるんですね。
小出 メインフレームなんて、その代表例ですよね。日本はとくにメインフレームのユーザーが他国に比べて多いですから。他国の社長が集まった会議では、「日本のメインフレームの多さは異常だ」なんてよく言われます。オープン系に移行するニーズは、より一層出てくる。先ほど話したEDSは、この分野でかなりの実績があり、多くのノウハウと洗練されたメソトロジーをもっていますから、戦略的に攻めるつもりですよ。
すべてのポートフォリオをクラウドに投じる。
[次のページ]